著者
豊國 賢治 山本 貴和子 吉田 明生 宮地 裕美子 樺島 重憲 福家 辰樹 野村 伊知郎 大矢 幸弘
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.1383-1390, 2021 (Released:2021-12-14)
参考文献数
18

【背景・目的】アトピー性皮膚炎(AD)は低蛋白血症を伴う重症AD;severe protein-loss in atopic dermatitis(SPLAD)がしばしば問題となる.本研究では,SPLADの急性期治療と予後を明らかにする.【方法】国立成育医療研究センターアレルギーセンターで入院加療を行ったSPLAD患者61人を対象に,入院中と治療開始3年後までの経過について診療録情報を用いて後方視的に検討した.【結果】全例が入院中に外用剤治療にて寛解導入を行い低蛋白血症や電解質異常が改善した.全身性ステロイド薬・免疫抑制剤,生物学的製剤を含む全身療法を行った児は認めなかった.寛解維持のためにステロイド外用薬(TCS)の間欠塗布によるプロアクティブ療法を行い,3年後に95%がTCS使用頻度を週2日以下へ減量して寛解を維持した.入院時に1歳未満の乳児で,3年後に卵,牛乳,小麦いずれか1つ以上の食物を除去していた児は29%であった.【結語】アトピー性皮膚炎の最重症型であるSPLAD患者は急性期に外用剤治療を行うことで寛解導入可能であり,多くの患者が長期間ADの寛解維持が可能である.
著者
野村 伊知郎 赤澤 晃
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.62-66, 2000-02-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
26

黄色ブドウ球菌は, アトピー性皮膚炎の湿疹部に多く存在する. 1)スーパー抗原性の外毒素が, スーパー抗原として, また1型アレルギーの抗原として働く. 2)菌体の蛋白質が, 1型アレルギーの抗原となる. 3)α-toxinなどの, cytolytic toxinの直接細胞障害. 以上3つの方法で, アトピー性皮膚炎を悪化させる. そのため, ブドウ球菌を除去することが, 治療上非常に重要である. この分野の最新の報告を中心に増悪のメカニズムについて述べる.
著者
濱口 冴香 山本 貴和子 佐藤 未織 大海 なつき 隈元 麻里子 小川 えりか 野村 伊知郎 山本 康仁
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.132-137, 2023-06-20 (Released:2023-06-20)
参考文献数
13

急性食物蛋白誘発胃腸炎(acute FPIES)の経口食物負荷試験(OFC)における,OFC施行時期,過去の症状の重症度や負荷量と,OFCでの誘発症状の重症度の関係については明らかでない.今回,生後1か月まで混合栄養で症状がなかったが,生後3か月時の普通ミルク再導入により軽症のacute FPIESを疑う症状を呈し,確定診断のために国際コンセンサスガイドラインに準拠した通常負荷量でOFCを施行したところ,意識障害やアシドーシスを伴う重症な症状を呈したacute FPIESの乳児例を経験したため報告する.乳児期,また最終エピソードからOFCまでの期間が短い場合は,ガイドラインに準拠した負荷量でも重症の誘発症状を生じる可能性があり,負荷量設定,緊急時対応の事前準備が,安全なOFC実施に重要である.Acute FPIESに対するOFCの方法はまだ標準化されておらず,今後のエビデンスの蓄積が必要である.
著者
野村 伊知郎
出版者
高知大学黒潮圏研究所
雑誌
くろしお : 高知大学黒潮圏研究所所報 : report of the Institute of the Kuroshio Sphere, Kochi University (ISSN:09131302)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.30-33, 1997-02-19

公開シンポジウム「深層海水有効利用の現状」. 1996年11月22日. 高新文化ホール, 高知県.
著者
堀向 健太 津村 由紀 山本 貴和子 正田 哲雄 二村 昌樹 野村 伊知郎 成田 雅美 大矢 幸弘
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.1543-1549, 2011-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
5

【背景と目的】重症アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis;AD)の治療を行っている最中,特にステロイド外用剤(以下ス剤)の連日塗布から間欠塗布へと移行する寛解導入期の終わりから寛解維持期の始めに相当する時期に,全身の皮疹や掻痒は改善しているにも関わらず,患者の掌蹠に汗疱様の水疱・丘疹が出現することがある.我々はこの病態を「AD寛解前汗疱様発疹」と称している.AD寛解前汗疱様発疹はス剤抵抗性の皮疹やアトピー性皮膚炎の再燃と誤解し治療が頓挫する危険性がある.そこで,発症率や患者の特徴について,後方視的に検討し,重症患者の治療上留意すべき現象として本邦初の症例集積研究として報告する.【対象と方法】2007年4月から2009年3月までに当科にADの治療目的に入院した89例を対象とし,発症年齢,AD治療開始後の発症病日,治療後の寛解までの日数,季節性,治療経過,AD重症度との関連,検査所見との関連を後方視的に調査した.【結果】AD寛解前汗疱様発疹は13例(14.6%)に発症しており,治療後の発症病日は16.7±10.4日(4〜32日),平均年齢は6.2±6.1歳(3カ月〜23歳)だった.入院時のSCORADは平均50.8±17.9(16〜91)であり,1歳未満を除いてSCORADを検討すると発症者が無発症者に比べ有意に高値であり,重症患者がより発症しやすいと考えられた.ス剤の局所的な強化により全例が軽快したが,治療後の軽快まで18.5±12.0日(4〜50日)を要し,概して難治であった.なお,汗疱は一般に夏に悪化するといわれているが,季節性は認められなかった.【結論】AD寛解前汗疱様発疹の病態に関しては不明な点が多く,皮疹が改善してきている時期に発症するために,患者が不安に感じる.標準治療の普及の障害になりうるため,その周知と検討が必要と考えられた.
著者
渡部 達 福家 辰樹 田島 巌 野村 伊知郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.1541-1547, 2013-11-30 (Released:2017-02-10)

今回,我々は蛋白漏出性胃腸症を伴う消化管アレルギーを呈した乳児例を経験したので報告する.症例は5カ月の女児である.2320gの低出生体重児で,完全母乳栄養で育ち,成長発達に異常は認めなかった.生後55カ月頃に暇吐,下痢を主訴とした胃腸炎の診断で入院した.入院時に全身浮腫,胸腹水,血便を含む消化器症状を認め,低アルブミン血症,低ガンマグロブリン血症の状態でCRPも高値であった.消化管アレルギーが原因と考え,診断的治療として新生児乳幼児用成分栄養剤(エレンタール[○!R]P)の摂取を開始した.その後症状は改善したが3週間後に症状が再燃した為,国立成育医療研究センターに入院となった.消化管内視鏡検査では大腸に多発する輪状発赤斑を認め,生検組織検査では盲腸から直腸にかけて中等度の慢性炎症性病変を認めた.臨床経過とあわせてエレンタール[○!R]Pによる消化管アレルギーと診断された.アミノ酸調整乳(エレメンタルフォーミュラ[○!R]に変更して症状は改善し,成長・発達を含めた経過は順調である.近年注目されている本疾患について若干の考察を加えた.