著者
高橋 英之 伊豆原 潤星 改田 明子 山口 直孝 境 くりま 小山 虎 小川 浩平 石黒 浩
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.852-858, 2019-10-15 (Released:2019-10-15)
参考文献数
17

コミュニケーションを円滑に行う上で,相手に対する事前知識や信念を互い有し,それを振舞いや発言にトップダウンに利用することは重要である.その一方で,多くの人間とロボットのコミュニケーションにおいては,ロボットに関する事前知識や信念を人間側が持っていないことが多い.本論文では,事前知識や信念が人間とロボットのコミュニケーションに及ぼす影響を調べるために,著名な文豪である夏目漱石のアンドロイドを用いて,被験者が“夏目漱石”や“ロボット”,“人工知能”に対して有している事前知識や信念がどのように“漱石アンドロイドとのコミュニケーション”に対する印象に影響を与えるのかを調べた.その結果,“夏目漱石”に対する事前知識は緩く漱石アンドロイドとのコミュニケーションにおけるリアリティと関連する一方,それ以上に“人工知能”に対する畏怖の念が強く漱石アンドロイドのリアリティと関連していることが分かった.
著者
境 くりま 港 隆史 石井 カルロス寿憲 石黒 浩
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J100-D, no.3, pp.310-320, 2017-03-01

人間はわずかな感情や態度の変化を細かな動作の変化で表現することにより,対話相手に様々な感情や態度を伝達することができる.更にそれらが場の雰囲気を形成し,対話しやすさの促進などの効果をもたらす.人間に酷似したアンドロイドで人間同様に感情や態度を伝達するためには,感情の連続的な変化に対応するように動作特徴(動作の振幅や速度など)を変化させることができる動作生成手法が必要となる.人間では感情が身体の筋系に影響を及ぼして身体動作を変化させていることを踏まえると,筋系の振る舞いをモデル化した動作生成手法において,筋系のパラメータと感情状態を対応づけることで,上記のような動作生成手法が構築できると考えられる.本論文では,対話において常時現れる発話動作に着目し,著者らがこれまでに提案した音声駆動頭部動作生成システムのパラメータ空間と感情空間の対応関係を実験により明らかにした.このマッピングを用いて,感情の細かな変化を表現するように動作を変調することができる発話動作生成システムを提案する.
著者
小谷 尚輝 内田 貴久 亀尾 菜保子 境 くりま 船山 智 港 隆史 菊地 あかね 石黒 浩
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2022-HCI-199, no.14, pp.1-6, 2022-08-15

近年遠隔授業や遠隔講演会の社会的ニーズが高まり,登壇者及び聴講者の時間的,物理的制約を軽減することが期待される.アバターを用いることにより,本人が行う講演と同等またはそれ以上の質の遠隔講演が可能になると考えられる.特にアンドロイドアバターを用いれば,聴講者に対して人間が登壇するのと変わらない存在感を感じさせられると期待できる.本研究ではアンドロイドアバターが高校において数百人規模の講演会を行い,聴講者のアンドロイドアバターに対する印象を評価した.聴講者のアンドロイドに対する評価尺度として,擬人化,温かさ,能力,不快感を用い,さらに教育的観点から,ロボット講演に対するエンゲージメントと理解度の主観的評価を行った.これらから,現時点における遠隔操作アンドロイドアバターの効果とその発展性について議論する.