- 著者
-
外川 健一
- 出版者
- 経済地理学会
- 雑誌
- 経済地理学年報 (ISSN:00045683)
- 巻号頁・発行日
- vol.39, no.3, pp.207-220, 1993-09-30 (Released:2017-05-19)
本論文ではまず, 環境経済学の確立に向けた代表的アプローチの1つである, 物質代謝論アプワーチについての考察を行なった. 人間の経済活動をも含む, 広い意味での生命活動が, 「人間と自然のあいだの物質代謝」を媒介として行なわれているという事実を重視・認識し, 環境経済学の理論を構築しようというのが, このアプワーチの本質である. そのうえで筆者は, 基本的に「人間と自然のあいだの物質代謝」を, 人間の経済活動を主とした生命活動が大きく作用している, エコーシステム内の物質及びエネルギーの代謝と捉えることとした, 次に, 経済学における環境問題・資源問題の文献としてマルサス, ジェヴォンズ, ジョージェスク=レーゲンの業績を, 特に「規制原理」と「増殖原理」という観点から考察した. そのうえで, 現在環境問題解決のため, 大きな期待がかけられている「リサイクル」について, その本来の意味と限界とを指摘した. さらに, コルビーによる地球環境管理をめぐる5つのパラダイムを紹介し, 現在発展途上にあるエコロジー経済学の形成と展望に関して, 若干のコメントを述べた. そのうえで, とくにマルサスに起源を持つ, 「規制原理」と「増殖原理」との相互作用を通じてみられる社会・経済の発展をみる視角に, 新古典派やマルクス経済学の業績を組みいれて考察するというパラダイムの模索も, 有益なものであると指摘した. 最後に, 人間と自然のあいだの物質代謝の攪乱は, 具体的には地域において展開されていることを考えれば, 物質代謝論アプローチには, 産業立地や地域構造の把握が不可欠であることを強調した.