著者
多田 正大 清水 誠治 西村 伸治 鹿嶽 研 渡辺 能行 川井 啓市
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.1062-1067, 1984-07-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
20
被引用文献数
1

潰瘍性大腸炎の病態の一面を検討する目的で,32名の本症患者および健常者7名に対して内視鏡下に水素ガスクリアランス法による粘膜血流測定を行った.直腸S状部の粘膜血流は潰瘍性大腸炎・活動期において増加し,緩解期になると健常者と同等のレベルにまで低下した.また粘膜血流は潰瘍性大腸炎の重症度と比例したが,病変範囲やpatient yearとの比例はみられなかった.病理組織学的には潰瘍性大腸炎の重症例では粘膜の毛細血管に血管炎や血栓が起り,微小循環不全状態にあることが疑われているが,粘膜血流の面からみると重症例でも血流は増加しており,形態と機能の不一致に興味が持たれた.
著者
赤坂 裕三 林 恭平 佐々木 善二 木本 邦彦 山口 希 多田 正大 宮岡 孝幸 青池 晟 中島 正継 三崎 文夫 川井 啓市 島本 和彦 吉本 信次郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.429-436, 1978 (Released:2007-12-26)
参考文献数
53
被引用文献数
1

日本人, 在日朝鮮人, 西独人の3 Group に内視鏡検査を行い, 消化性潰瘍の局在ならびに疾患の背景にある胃粘膜の慢性変化, すなわち萎縮性胃炎の拡がりに各民族間で差があることを, 色素内視鏡 Congo Red法による機能的腺境界の位置から確認した. さらに各民族における慢性萎縮性胃炎の発現及び進展には年齢による差があり, 対象例の50%以上に慢性萎縮性胃炎をみる年齢は日本人で30歳台, 在日朝鮮人で40歳台, 西独人で60歳台であつた. この慢性萎縮性胃炎の発現と進展に関与する疫学的諸因子のうち, 特に食品や嗜好について疫学的検討を行い, 日本人と在日朝鮮人では高濃度塩分含有食品にのみ有意の差を認め, 在日朝鮮人では高濃度塩分摂取量が多かつた.
著者
多田 正大 橋本 京三 渡辺 能行 川井 啓市
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.24-29, 1984

潰瘍性大腸炎の病態生理の一面を知る日的で, ラジオカプセル法 (NationalTPH-101型) を用いて本症患者13名の各病期の直腸内圧を測定し, 直腸の運動量を内圧面積 (内圧曲線と基線で囲まれた面積) で表わした.その結果, 活動期において内圧面積は健常者よりも統計学的に有意の差で低下していた.特にpatient yearが4年以上と長くなり, 病変範囲も全大腸型の重症例ほど内圧面積は小さくなり, 緩解期でも健常者よりも低下していた.ネオスチグミンによる刺戟後の運動量の変化 (S/R) をみると, patient year4年以上, 全大腸型の活動期では健常者よりも高値を呈し, これらの症例では刺戟に対して過敏に反応すると考えられた.
著者
多田 正大
出版者
日経BP社
雑誌
日経ドラッグインフォメーションpremium
巻号頁・発行日
no.107, pp.PE9-12, 2006-09-10

■過敏性腸症候群は、ストレスや生活上の不摂生などを引き金に発症する「文明病」である■特徴的な症状は「腹痛を伴う便通異常」であり、便通異常は便秘型、下痢型、混合型に分類される■背景には心身症的な因子があることが多く、治療には薬物療法に加え生活指導が必要である 文明の進歩とともにわれわれの生活も便利になったが、その半面、社会構造も複雑になってきている。こ…
著者
清水 誠治 多田 正大 川本 一祚 趙 栄済 渡辺 能行 川井 啓市
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.27, no.8, pp.1663-1669, 1985

オリンパス光学K.Kにおいて開発されたOES内視鏡写真撮影システムはOESファイバースコープ,光源装置CLV-10,データ写し込み装置DS,内視鏡カメラSC16-10よりなるが,これらを臨床の場で試用する機会を得た.CLV-10は光量の増加,露光精度の向上とともに非常灯も装備されている.DSは患者データを入力・記憶・表示しフィルムに写し込むことができ,またSC16-10のファインダー内に日時,経過時間,撮影部位等の英数字データを表示し内視鏡写真に写し込むこともできる.SC16-10は軽量化が計られ,拡大率の異なる3種類のマウントアダプターが用意され大画面で撮影することが可能である.OESシステムを用いることにより検査中の操作が容易になり,観察ならびに読影上見やすい画像が得られる上,内視鏡写真にデータ記録としての客観性を導入することが可能となり,特に部位同定の指標に乏しい食道や下部消化管検査における有用性を確認した.
著者
多田 正大 下野 道広 本井 重博 須藤 洋昌 郡 大裕 川井 啓市
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.73-77,154, 1981 (Released:2009-06-05)
参考文献数
13
被引用文献数
1

大腸癌や腺腫の生体内における自然史に関して,明らかでない点が多い.殊に内視鏡検査の普及によって,大腸ポリープは発見され次第にポリペクトミーによって切除されるのが通例であるため,その長期経過観察例は稀である.著者らは大腸ポリープ7例について,経過観察することができたので,その自然史の一端について検討した.その結果,大腸癌のvolume doubling time(tD)は344.8日であった.腺腫では大きさにほとんど変化がないもの,急速に成長するもの,がみられた.成長する腺腫(腺管腺腫)のtDは213.4日であり,癌よりも短期間であった.腺腫の成長率の差は,その発生部位や個人の排便回数の差による細胞脱落因子によるものか,それとも宿主因子によるものか現時点では解明できないが,同様の数少い症例を集積して解明されるべき問題であると思われる.