- 著者
-
大井 一弥
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年医学会
- 雑誌
- 日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.4, pp.498-503, 2019-10-25 (Released:2019-11-22)
- 参考文献数
- 12
- 被引用文献数
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3
目的:薬剤師は,患者の薬歴,症状,検査値を把握することで患者の服用支援に努め,医薬品適正使用を推進していく責務がある.本邦は,超高齢社会の最中にあり,65歳以上の高齢者の割合が総人口の4分の1を超えている.高齢者はさまざまな疾患に罹患しやすくなり,必然的に薬剤の服用数が増え,ポリファーマシーが問題となっている.今回我々は,薬剤師による疑義照会がもたらすポリファーマシー是正効果について検討を行った.方法:2018年9月から同年11月までの3カ月間,在宅または外来において疑義照会が行われた65歳以上の患者を対象とした.対象患者の性別,年齢,疑義照会による処方変更の有無,疑義照会前後の薬剤総数,処方変更があった場合には4週間以降の症状の変化について検討した.結果:疑義照会対象患者は361例で,年齢は80歳代が最も多かった.処方改変のあった患者数は,349例で全体の96.7%であった.疑義照会前の薬剤数は,7.2剤であったが疑義照会後は6.0剤となり,平均薬剤数1.2剤減少となった.また,6剤以上処方されているポリファーマシー患者が疑義照会前の67.3%から疑義照会後53.7%へと有意に減少した.高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015にある,特に慎重な投与を要する薬物に対する提案は,33.7%であった.疑義照会による処方提案後,4週間以降の症状の変化は,変化なしが84.5%であった.結論:本研究によって,薬局薬剤師は疑義照会により高齢者のポリファーマシーに積極的に介入し,処方提案による薬剤数の減少を明らかにした.さらに,減薬の提案の中で,フィジカルチェックや検査値に基づいて行ったものもあり,今後,薬局薬剤師が疑義照会の質を上げるためにも検査値の情報は,重要なツールになるものと考えられた.