著者
大井 一弥 三谷 宜靖 林 雅彦
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.248-252, 2011-06-01 (Released:2011-09-28)
参考文献数
19
被引用文献数
2

デキサメタゾン吉草酸エステル軟膏(ボアラ®軟膏)と油中水型ヘパリン類似物質含有保湿剤(ヒルドイド®ソフト軟膏)の適用順序によるステロイドの皮膚内移行性について,豚耳および健康ヒト皮膚により検討を行った。ステロイド軟膏単独適用はA群,ステロイド軟膏剤適用後,保湿剤適用はB群,保湿剤適用後,ステロイド軟膏剤適用はC群とし,豚耳における,ステロイドの皮膚内移行性をみるため,皮膚中のデキサメタゾン吉草酸エステル濃度を,HPLCを用いて測定した(n =8)。また,健康ヒト皮膚(n =2)により,ステロイドの皮膚内移行性を,共焦点ラマン分光光度計を用いて測定した。豚耳において皮膚移行したステロイド濃度について,A群,B群およびC群をそれぞれ比較したところA群が最も高く,次いでB群がC群に比べて有意に高かった(p <0.01 ; t-test)。豚耳における試験と健康ヒト皮膚による検討では,塗布順によるステロイド皮膚内移行が同様の傾向になることがわかった。しかしながら,その差はわずかであり,臨床的効果に差を認めることはないと考えられた。
著者
大井 一弥 横山 聡 阿波 勇樹 河井 亜希 平本 恵一
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.127-130, 2014-04-01 (Released:2014-07-17)
参考文献数
11

タクロリムス軟膏とヘパリン類似物質製剤の塗布順序によるタクロリムスの皮膚内移行性について,アトピー性皮膚炎モデル動物である NOA/Jcl マウスにより検討を行った。NOA/Jcl マウスの背部にタクロリムス軟膏を塗布し,タクロリムス軟膏 (プロトピック® 軟膏 0.1%) およびヘパリン類似物質製剤 (ヒルドイド® ソフト軟膏 0.3%,ヒルドイド® クリーム 0.3%,ヒルドイド® ローション 0.3%) 塗布後,3 時間の皮膚中タクロリムス濃度を LC-MS/MS を用いて測定した。タクロリムス軟膏塗布後,ヒルドイド® ソフト軟膏塗布は A 群,ヒルドイド® ソフト軟膏塗布後,タクロリムス軟膏塗布は B 群,タクロリムス軟膏塗布後,ヒルドイド® クリーム塗布は C 群,ヒルドイド® クリーム塗布後,タクロリムス軟膏塗布は D 群,タクロリムス軟膏塗布後,ヒルドイド® ローション塗布は E 群,ヒルドイド® ローション塗布後,タクロリムス軟膏塗布は F 群,タクロリムス軟膏とヒルドイド® ソフト軟膏混合塗布は G 群とした。この結果,タクロリムス軟膏とヘパリン類似物質製剤の塗布順序の違いによる皮膚中タクロリムス濃度に,有意な差はなかった ( P=0.8325)。また,タクロリムス軟膏と各剤形のヘパリン類似物質製剤の塗布順序による皮膚中タクロリムス濃度についても検討したところ,有意な差はなかった( P=0.0811)。さらに,タクロリムス軟膏とヘパリン類似物質製剤の混合塗布した場合とタクロリムス軟膏とヘパリン類似物質製剤の各々の塗布順序でも有意差は認められなかった (A 群との比較 : P=0.0958,B 群との比較 : P=0.1331)。これらのことから,タクロリムス軟膏とヘパリン類似物質製剤の塗布順序の違いが,皮膚中タクロリムス濃度に影響を与える可能性は低いと考えられる。従って,臨床ではどちらを先行塗布しても効果に差を認めるものではないことが推察される。
著者
大井 一弥
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.498-503, 2019-10-25 (Released:2019-11-22)
参考文献数
12
被引用文献数
3

目的:薬剤師は,患者の薬歴,症状,検査値を把握することで患者の服用支援に努め,医薬品適正使用を推進していく責務がある.本邦は,超高齢社会の最中にあり,65歳以上の高齢者の割合が総人口の4分の1を超えている.高齢者はさまざまな疾患に罹患しやすくなり,必然的に薬剤の服用数が増え,ポリファーマシーが問題となっている.今回我々は,薬剤師による疑義照会がもたらすポリファーマシー是正効果について検討を行った.方法:2018年9月から同年11月までの3カ月間,在宅または外来において疑義照会が行われた65歳以上の患者を対象とした.対象患者の性別,年齢,疑義照会による処方変更の有無,疑義照会前後の薬剤総数,処方変更があった場合には4週間以降の症状の変化について検討した.結果:疑義照会対象患者は361例で,年齢は80歳代が最も多かった.処方改変のあった患者数は,349例で全体の96.7%であった.疑義照会前の薬剤数は,7.2剤であったが疑義照会後は6.0剤となり,平均薬剤数1.2剤減少となった.また,6剤以上処方されているポリファーマシー患者が疑義照会前の67.3%から疑義照会後53.7%へと有意に減少した.高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015にある,特に慎重な投与を要する薬物に対する提案は,33.7%であった.疑義照会による処方提案後,4週間以降の症状の変化は,変化なしが84.5%であった.結論:本研究によって,薬局薬剤師は疑義照会により高齢者のポリファーマシーに積極的に介入し,処方提案による薬剤数の減少を明らかにした.さらに,減薬の提案の中で,フィジカルチェックや検査値に基づいて行ったものもあり,今後,薬局薬剤師が疑義照会の質を上げるためにも検査値の情報は,重要なツールになるものと考えられた.
著者
大井 一弥
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.139, no.12, pp.1553-1556, 2019-12-01 (Released:2019-12-01)
参考文献数
10

The skin is the largest human organ, comprising the epidermis that is composed of epithelial tissue, the dermis composed of connective tissue, and the innermost subcutaneous tissue. Generally, skin conditions are due to aging and the influence of the external environment, but empirically patients with gastrointestinal diseases are more prone to pruritus and inflammation caused by dry skin. A decrease in the skin barrier function, involving immunocompetent mast cells and oxidative stress, was noted in indomethacin-induced small intestine inflammation, dextran sodium sulfate (DSS)-induced ulcerative colitis, and azoxymethane+DSS-induced colorectal cancer. A possible correlation was found to exist between inflammatory gastrointestinal diseases and the skin, and this correlation was investigated using a rheumatoid arthritis model as representative of inflammatory diseases. Similar to previously reported results, deterioration of the skin barrier function was observed, and new information was obtained by analyzing changes in inflammatory markers in the blood and skin tissues. Understanding the underlying mechanism of decreased skin barrier function will help in establishing effective prophylaxis and treatment methods and clarify the importance of crosstalk between organs. It will also help accelerate drug development.