著者
大出 茂典 Shigenori Ode 獨協医科大学越谷病院耳鼻咽喉科 Department of Otolaryngology Dokkyo Medical University Koshigaya Hospital
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.69-76, 2010-07-25

突発性難聴は原因不明の疾患である.近年活性酸素はさまざまな疾患や老化と関係があることがわかってきている.活性酸素そのものは短い寿命と高い反応性のために生体内の状態を測定するのは極めて困難であったがFree Radical Analytical System 4は活性酸素より生じた血中ヒドロペルオキシド濃度(d-ROMstest)を簡便に測定することができ,同時に抗酸化力(活性酸素・フリーラジカル除去能,BAP test)も測定できる.突発性難聴患者群は対照群に比較して血清の酸化ストレス度が上昇または抗酸化力が低下しているか検索した.さらにステロイドとPGE1 点滴治療1週間後の値(d-ROMs 値,BAP値)から突発性難聴の予後が推測できるか検証した.初診時結果,突発性難聴群は対照群と比較してd-ROMs値が高値(p<0.05)でBAP 値が低値を示した(p< 0.01).d-ROMs値はステロイドとPGE1の点滴治療1週間後に初診時と比べ有意に低下した(p<0.01).治療1週間後の血液状態の改善は最終的な聴力治癒と有意な相関が認められた(p<0.05).突発性難聴患者は活性酸素と関連があり,ステロイドとPGE1の点滴治療1週間後のスコア改善度は予後推測に有用であると考えられた.
著者
松本 良 荻原 成騎 徳山 英一 芦 寿一郎 町山 栄章 沼波 秀樹 小池 義夫 大出 茂
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、海洋のガスハイドレートが地球環境へどのような影響を与えうるか、また現に与えつつあるかを、地質学、地球物理学、海洋生物学など異なるアプローチで総合的に解明することである。3年間の調査を通じて、以下を明らかにした。1. 日本海、直江津沖では「海鷹丸」による調査航海を3回、海洋機構の「なつしま」で2回、「かいよう」で1回の調査を行なった。2. 日本海の調査海域で強いメタンの湧出域を確認した。メタンはプルームとして海面近くまで立ち上がり、表層海水にメタンを供給していることが分かった。メタンプルームが立ち上がる日本海の底層水は温度が非常に低く、ガスハイドレートの安定領域に含まれる。従って、メタンバブルの表層にはガスハイドレートが形成されると予想され,この事が高さ600mものメタンプルームの発達要因である。3. 潜航艇による調査で、海底にガスハイドレートが露出していることを確認した。これは本邦周辺では始めての発見である。このことは、海底下からのメタンフラックスが高いことを示す。4. 水温が低いため海底の生物相は単純で、分布密度低は低いが、メタンプルーム付近ではバクテリアのコロニー、ハナシガイなどの化学合成生物、さらに食物連鎖の頂上にベニズワイガニが存在している。5.メタンプルームが発達する海脚上には直径約500mの凹地(ポックマーク)が発達する。当初、この凹地がメタン湧出源と予想したが、実際は、ポックマークは非活動的であり、堆積物で埋められている。この事は、過去に今よりも激しいメタン湧出があったことを示唆する。6. もう一つの調査海域、下北半島東方では、2年目に海洋機構の「淡青丸」による調査を行なった。ここでは、メタン湧出を確認することはできなかったが、海底下に強いBSR反射面が発達することが分かっており、ガスハイドレートが発達することは明らかである。