著者
徳山 英一 本座 栄一 木村 政昭 倉本 真一 芦 寿一郎 岡村 行信 荒戸 裕之 伊藤 康人 除 垣 日野 亮太 野原 壮 阿部 寛信 坂井 眞一 向山 建二郎
出版者
海洋調査技術学会
雑誌
海洋調査技術 (ISSN:09152997)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.27-53, 2001-03-31
参考文献数
56
被引用文献数
6

We propose the guideline to identify fault in offshore region mainly based on MCS profiles, combining high resolution bathymetric maps and geological data such as bore hole results. Based on the guideline we distinguished total 776 faults developing around Japan since the latest Miocene and 753 faults out of total numbers of faults are interpreted to have been active by Quaternary. Together with distinguishment of fault we examined the attributes of each faults such as surface and vertical distribution, criteria of offset, age of movement, certainty of a fault and so on. <br>The results of the distinguishment and examination of the fault leads to the conclusion that the ongoing tectonic framework around Japan characterized by 1) oblique Subduction along the Nankai Trough, 2) rifting at the Okinawa Trough, 3) E-W compressionl regeme along the Japan Sea margin, 4) E-W compressionl regeme along southwestern margin of the Okhotsk Sea and off southern Hokkaido, 5) E-W compressionl regeme along the Japan Trench, 6) rifting in the central arc of the Izu-Ogasawara Arc has been established since 3 Ma, at the earliest 6 Ma. <br>We utilized high resolution data set which we enable to access. Tow big problems, however, still remain in terms of reliability of fault recognition. Those are 1) age of fault movement and 2) spatial distribution of fault. To solve the first one, new technique is required in order to obtain core samples which provide critical evidence to determine age of fault movement. As is second problem concerned, new intensive seismic survey is indispensable to make a precise fault distribution map, especially in the boundary area between land and sea.
著者
高下 裕章 芦 寿一郎 朴 進午 宮川 歩夢 矢部 優
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

浅部プレート境界断層領域は防災上重要な研究の新領域として注目されている。プレート沈み込み帯では、沈み込みに伴いプレート境界面が固着している領域で歪が蓄積され、それが一気にずれて歪を解放、境界面が滑ることで地震が発生する。そのため、固着が強い地震発生帯と呼ばれる深部領域が、沈み込み帯の中では主な研究対象であった。一方、固着が弱く非地震性の定常すべり領域と考えられてきた浅部領域は、歪を多く蓄積せず、巨大なすべりを一度に開放することがないとされてきたため、これまで注目される機会が少なかった。2011年の東北地方太平洋沖地震では、海溝軸付近で最大約60 mの巨大な変位が地震時に発生したことが明らかになり、浅部プレート境界断層の破壊に関する初の観測事例となった。この破壊によって、巨大な津波が東北地方沿岸部の広い地域に甚大な被害をもたらされた。科学掘削の結果から浅部領域における断層部は摩擦の低い物質で構成されていることが明らかになったが、それがその領域だけなのか、もしくは日本海溝全体が同様の特徴を持つのかはわかっていないそこで本研究では、浅部プレート境界断層の摩擦係数の詳細な分布を明らかにし、上記の課題を解決するために、まず既存の研究手法Critical taper model (CTM)を改善し、新たな解析手法を開発した。CTMは沈み込み帯のウェッジにおいて力学的な条件を説明するのに重要な手法であり、ウェッジ形状を示す斜面傾斜角αとデコルマ傾斜角βから、プレート境界断層の摩擦係数を計算することができる。ただし、摩擦係数分布を得て、沈み込み帯の力学条件を議論するには、βの値の取り扱いについて大きな注意が必要であった。ベータは基本的に反射法地震探査断面から得るものであるが、その深度処理がβの値に大きな影響を与えることから数kmのオーダーであればPSDMのように高精度な深度処理が行われたものを、より広範囲を対象とした場合は屈折法を組み合わせ正確な速度構造を得たものでなければ、比較という点で信頼性を保つことが難しかった。本研究では、CTMを精査したところ、βがプレート境界断層の摩擦係数の算出にほとんど影響を与えないことが明らかになった。つまり、摩擦は斜面傾斜角αのパラメータのみで計算できることが明らかになった。αはグローバルに存在する水深測量データからも得ることができる。本手法を改めて日本海溝で得られている水深測量データに適用し、浅部プレート境界断層における高密度な摩擦分布を適用したところ、2011年東北沖地震の地震時すべり分布が低摩擦セグメントに対応することを示した。つまり、地震時の滑りが浅部プレート境界断層の浅い部分に伝播した際に、低摩擦領域にそのすべりを拡大し、巨大な津波につながった可能性を考えた。また、現在グローバルに摩擦分布を算出する手法を開発しており、その一部を紹介する。
著者
高下 裕章 芦 寿一郎 朴 進午
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

沈み込み帯や造山帯のように側方からの圧縮により衝上断層が卓越し、短縮変形を受けた地質体を総称してFold-and-thrust beltと呼ぶ。Critical taper modelはfold-and-thrust beltの地形パラメータから断層の摩擦係数を知るために広く用いられてきた。沈み込み帯に対してこのCritical taper modelを適用した場合、単純な地形パラメータを用いてプレート境界断層における摩擦係数の推定が可能である。そのため、Critical taper modelは地震に関連する議論においても広く用いられてきた。ただし、Critical taper modelでは、計算に用いる地形データを取得する際、以下のような2つの問題点が指摘できる。1)反射法地震探査断面のデータが必要であるため、観測記録のある断面以外に Critical taper modelの適用ができない。2)反射法地震探査データを用いた深度断面処理において、プレート境界断層の深度が速度モデルに大きく依存し、プレート境界断層の傾斜角βの値に影響を与える。そのため正確な比較という点に関して信頼性が低い。そこで本研究は上述の問題点を改善するため、Critical taper modelに用いるパラメータを反射法地震探査断面ではなく、水深測量データからのみ得る新たな手法の開発を行った。反射法地震探査断面から得られるプレート境界断層の傾斜角βの代わりに、プレートが沈み込む前の海溝海側斜面の傾斜角β(bathymetry)を使用し、その計算結果から手法の妥当性の検証を行った。本研究では、南海トラフを対象領域として手法の妥当性の検証を行った。南海トラフでは海溝型巨大地震の基礎研究の重要性から反射法地震探査断面が多く取得されており、従来の Critical taper modelと本研究で新たに行う手法との比較が行い易いこと、地震波やGPSなど、様々な研究手法による観測が進んでいることから、その比較対象とするべき先行研究が豊富である。そのため、Critical taper modelでのデータ取得と、結果の解釈がほかの沈み込み帯より容易であることが期待される。本手法の妥当性の検証結果から、海底下の沈み込み帯にCritical taper modelを適用する場合、理論的に見過ごされてきた特徴があることが明らかになった。その性質とは、高い間隙水圧比がウェッジ全体で仮定される場合、有効摩擦係数の算出に際しβが結果に与える影響が非常に小さくなることである。そのため、水深測量データにおける海溝陸側斜面の傾斜αのみを用いて浅部プレート境界断層の摩擦分布を議論することが十分可能であることが示唆された。ただしその際、有効摩擦係数の算出誤差が20パーセント程度生じる点は注意が必要である。水深測量データは空間的に密に取得されたデータであるため、これにより海溝軸に沿った高密度な浅部プレート境界断層の摩擦分布を初めて算出することが可能となった。予察的な解釈として、本手法は地震活動によるセグメントが十分に検討されていない領域において、地震・津波防災に関して資する新たな手法だと考えられる。
著者
木村 学 木下 正高 金川 久一 金松 敏也 芦 寿一郎 斎藤 実篤 廣瀬 丈洋 山田 泰広 荒木 英一郎 江口 暢久 Sean Toczko
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.1, pp.47-65, 2018-01-15 (Released:2018-05-30)
参考文献数
98
被引用文献数
1

2007年開始の南海トラフ地震発生帯掘削計画は,プレート境界で起こる地震発生,断層メカニズムの理解を目的に実施,掘削の結果,これまで以下の主要な成果が得られた.1)南海前弧域は,~6Ma以降の沈み込み,特に2Ma以降の付加体の急成長によって形成され,プレート境界の上盤を形成することとなった.2)プレート境界と分岐断層に沿うすべりは,海底面まで高速ですべり抜けたことがある.3)粘土鉱物に富む断層ガウジは静的にも動的にも,絶対的に弱い.4)掘削によって応力測定に成功した.多くの地点で最大水平圧縮方向はプレートの収束方向とほぼ平行であり,次の南海地震に向けての応力蓄積の進行が示唆される.5)掘削孔設置の観測計が,2016年4月1日に南海プレート境界で72年ぶりに発生した地震による圧力変動を観測した.海底観測網による微小津波観測と同期しており,上盤内の地震時体積収縮を世界で初めて観測した.
著者
荒井 晃作 岡村 行信 池原 研 芦 寿一郎 徐 垣 木下 正高
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, no.12, pp.749-759, 2006-12-15
参考文献数
30
被引用文献数
2 8

フィリピン海プレートの沈み込み境界である南海トラフ東部の前弧斜面上部の音波探査を実施した結果,大陸棚および陸棚斜面に正断層帯が存在していることが明らかになった.これらの断層は,すべて北落ちで最大変位量は0.2秒(往復走時)に達する.音波探査断面の解釈から,これらの断層は中期更新世以降に活動的で,最終氷期以降も活動していると考えられる.断層の活動履歴を検討するために,断層の上盤および下盤側のピストンコア試料を採取した.調査を行った断層群は特に下盤側の堆積速度が小さいために,活動履歴は明らかにならなかったが,一連の研究でその平均変位量は数10cm/千年であることが分かった.断層の形成は前弧斜面上部の傾動隆起と同じ時期に活動を開始していること,傾動隆起量の大きい海域で断層変位量が大きいことから,断層群の形成は前弧斜面上部の傾動隆起を伴うテクトニクスと密接に関連していると考えられる.
著者
馬場 俊孝 岡田 泰樹 芦 寿一郎 金松 敏也
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

南海トラフなどの沈み込み帯では海溝型地震が繰り返し発生する.過去の事象の解明は将来の予測に直結するが,近代的な地震津波観測が始まったのはおよそ100年前であり,それよりも古い地震については史料や地質調査に頼らざるを得ない.徳島県には「震潮記」という史料が存在する.これには1512年永正地震,1605年慶長地震,1707年宝永地震,1854安政南海地震の徳島県宍喰地域の被災状況が記録されている.宍喰は四国の南東部にある海岸沿いの集落であり津波による被害が甚大である.特に1512年永正地震では津波により3700人あまりが死亡したと震潮記にあり,大津波の発生を推察させる.ところが1605年慶長地震,1707年宝永地震,1854安政南海地震の記録は震潮記以外にも多数の記録が存在し,それらの津波は西南日本の太平洋沿岸部を広く襲ったと解釈できるが,1512年永正地震に関する史料は震潮記を除いて存在せずこの地震の真偽は定かではない.本研究では1512年永正津波が局所的な津波であったと仮定してその波源について考察する.局所的な津波の例としては,たとえば1998年のパプアニューギニア地震津波のような海底地すべりによる津波が挙げられる.海底地形図を用いて海底地形を調査し,宍喰の南東約24km沖合の水深約800mの海底に幅約6km,高さ約400mの滑落崖を確認した.さらに学術研究船「白鳳丸」KH-16-5次航海において無人探査機NSSの深海曳航式サブボトムプロファイラを用いて調査したところ,比較的最近起こったとみられる地すべりの詳細な内部構造が捉えられ,それによる地層の垂直変位は約50mであった.これらの情報を基に海底地すべりをモデル化しWatts et al.(2005)の式を用いて津波の初期水位を求めた.ここで地すべり土塊の移動量は不明であるため,地すべり土塊の移動量を800mから3000mまで変更させて複数回計算を行った.津波シミュレーションでは非線形浅水波式を差分法で解いた.ネスティング手法を用いて宍喰地域の空間分解能を向上させた.宍喰地域の陸上地形データは現況の地形から堤防など人工構造物を取り除くとともに,古地形図などを用いて可能な限り当時の地形に近づけた.津波解析の結果,地すべり移動量1400m~2400mで震潮記に記載された宍喰の浸水状況を再現できることがわかった.この場合の宍喰での最大津波高は6m~9mで,一方対岸の紀伊半島沿岸では最大で津波高3mとなった.
著者
原 修一 角皆 潤 小松 大祐 中川 書子 芦 寿一郎 中村 光一 砂村 倫成 土岐 知弘
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2014年度日本地球化学会第61回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.44, 2014 (Released:2014-09-12)

高知県沖の足摺海丘(山頂水深543m)直上の海水中ではメタンの高濃度異常が観測されており、この海丘から海水中にメタンが放出されているものと考えられている。本研究では、この足摺海丘のメタン湧出フラックスや、大気へのメタン漏出の可能性の有無を検討することを目的として、2013年9月に足摺海丘およびその周辺において海水試料を採取し、海丘直上及び周辺海水中のメタン濃度分布を定量化した。更にメタンの炭素・水素安定同位体比も同時に分析し、その成因が微生物起源か、それとも熱分解起源であるのか、また海水中における微生物酸化分解の有無に関する考察を行った。分析の結果、足摺海丘直上の試料から高濃度のメタンが検出された(最高145 nmol/L)。また海水中のメタン濃度分布から、海丘から見て北東方向の水深450 m~660 mの範囲に、メタンプルームが広がっていることが明らかになった。
著者
廣野 哲朗 芦 寿一郎
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.50, pp.33-46, 1998-07-31
被引用文献数
1

一般に石化作用や続成作用が十分に進行していない堆積性の物質を意味する, 未固結堆積物の定量的な定義を試みた。さらに未固結堆積物の変形挙動とその構成則および変形の素過程に関する主に工学分野の理論的研究を紹介した。その剪断変形挙動は岩相によって大きく異なり, さらに泥質なものでは先行圧密履歴と排水・非排水条件に, 砂質なものでは初期間隙比と排水・非排水条件に大きく支配される。また, 未固結堆積物を主要構成物質とする現世の付加体前縁部の変形構造に関する研究, および深海底掘削試料や人工試料を用いた実験的な研究を簡単にまとめた。
著者
松本 良 荻原 成騎 徳山 英一 芦 寿一郎 町山 栄章 沼波 秀樹 小池 義夫 大出 茂
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、海洋のガスハイドレートが地球環境へどのような影響を与えうるか、また現に与えつつあるかを、地質学、地球物理学、海洋生物学など異なるアプローチで総合的に解明することである。3年間の調査を通じて、以下を明らかにした。1. 日本海、直江津沖では「海鷹丸」による調査航海を3回、海洋機構の「なつしま」で2回、「かいよう」で1回の調査を行なった。2. 日本海の調査海域で強いメタンの湧出域を確認した。メタンはプルームとして海面近くまで立ち上がり、表層海水にメタンを供給していることが分かった。メタンプルームが立ち上がる日本海の底層水は温度が非常に低く、ガスハイドレートの安定領域に含まれる。従って、メタンバブルの表層にはガスハイドレートが形成されると予想され,この事が高さ600mものメタンプルームの発達要因である。3. 潜航艇による調査で、海底にガスハイドレートが露出していることを確認した。これは本邦周辺では始めての発見である。このことは、海底下からのメタンフラックスが高いことを示す。4. 水温が低いため海底の生物相は単純で、分布密度低は低いが、メタンプルーム付近ではバクテリアのコロニー、ハナシガイなどの化学合成生物、さらに食物連鎖の頂上にベニズワイガニが存在している。5.メタンプルームが発達する海脚上には直径約500mの凹地(ポックマーク)が発達する。当初、この凹地がメタン湧出源と予想したが、実際は、ポックマークは非活動的であり、堆積物で埋められている。この事は、過去に今よりも激しいメタン湧出があったことを示唆する。6. もう一つの調査海域、下北半島東方では、2年目に海洋機構の「淡青丸」による調査を行なった。ここでは、メタン湧出を確認することはできなかったが、海底下に強いBSR反射面が発達することが分かっており、ガスハイドレートが発達することは明らかである。