著者
徳山 英一 村山 雅史 宮里 修 谷川 亘 山本 裕二
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

歴史南海地震の災害記録(沈降量・津波浸水域)が海底で保存されていると考えられている高知県沿岸部の3地域(大月町柏島・須崎市野見・土佐清水市爪白)について調査を実施した。大月町柏島では、サイドスキャンソナーによる詳細な海底地形調査、および試料採取を実施した。海底地形分析の結果、柏島北部の海底に海岸線と平行に伸びる3段の石堤構造物を確認することができた。これまで文献等により2段の存在は確認できていたが、今回初めて3段目の存在を確認できた。試料採取は3段の異なる石堤について実施することができた。また、水中カメラの科学的利用可能性を確認した。須崎市野見では、野見湾内で、海底の試料採取地点の正確な情報を取得するために購入したUSBL方式水中測位装置(Applied Acoustic Engineering社製EasyAlpha)のテストを実施した。その結果、地図をベースとした潜水士の位置情報をリアルタイムに把握することが不可欠であるとわかったため、新たにUSBL用のソフトウェアの改良を実施し、潜水士2人の位置情報を同時に地図上で確認できるシステムを構築した。土佐清水市爪白では、海底に沈んでいる人工石柱の起源を明らかにするため、岩石物理化学データと年代データを取得した。岩石物理化学データの結果から、石柱の起源は三崎層群竜串層の砂岩である可能性を強く示した。さらにpXRFによる元素分析データを用いた多変量解析を実施した結果、海底石柱は、三崎層群竜串層砂岩だけでなく、爪白地区にある比較的古い時代に作られたと考えられる石造物(石段・家の基礎)と同じ化学的特徴を示していることが明らかとなった。
著者
井尻 暁 谷川 亘 村山 雅史 徳山 英一
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

近年、画像解析処理の向上により、デジタルカメラ等で撮影した多視点画像からの対象物の三次元形状復元(Structure from Motion = SfM)が精度良くできるようになってきている。地理学や考古学分野ではこの手法を取り入れて、ドローン撮影による地形データの取得や考古遺構調査の記録に活用されている。水中の調査でも戦争遺跡や珊瑚の記録等で同技術が応用されつつあるが、まだ事例が多いとはいえず、問題点もあまり整理できていない。一方、高知大学と海洋研究開発機構は、684年の白鳳地震により一夜として沈んだとされる村「黒田郡」の謎を明らかにするために、高知県沿岸部海底の調査を実施している。その海底調査では、海底対象物の形状を精度よく計測・記録する必要があるが、これまで音響調査や潜水士による測定方法で実施してきた。しかし、対象物が非常に浅部にある場合や小さい場合、こうした調査手法では精度良いデータは得られない。一方、SfM写真測量技術を用いれば、上記問題を解決できる可能性がある。そこで本研究では、黒田郡の海底調査で得られた画像データを用いてSfMによる対象物の三次元形状復元を試みた。また、海底から採取した試料を簡易プールに移して、水中画像によるSfMの問題点を評価した。撮影カメラはオリンポスのTGシリーズを用いた。また、3Dモデルの構築はAgisoft社のmetashapeを用いた。野見湾の海底で撮影した約30枚の水中画像により、高解像度の3次元海底地形データを再構築することができた。一方、野見湾で見つかった蛸壺は、視界がわるく、精度の良い3次元形状の復元はできなかった。本研究では、爪白海底で見つかった石柱と野見湾の蛸壺を用いて水中と陸上で撮影した条件による3Dモデルを比較して違いを考察する。また、陸上においても撮影が難しい光に反射しやすい対象物の撮影方法についても検討する。本研究の一部は高銀地域経済振興財団の助成金により実施された。
著者
浅田 昭 山本 富士夫 徳山 英一 矢島 広樹
出版者
海洋調査技術学会
雑誌
海洋調査技術 (ISSN:09152997)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.37-77, 2003-03-31
参考文献数
28
被引用文献数
1
著者
中田 高 渡辺 満久 鈴木 康弘 後藤 秀昭 徳山 英一 佐竹 健治 隈元 崇
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

近い将来M8クラスの巨大地震が発生すると予測される南海トラフ沿いの海域を対象に、高い分解能の立体視画像を用いて地形解析を行ない、地震発生源となる活断層の位置・形状、連続性を詳細に解明した。これをもとに活断層と歴史地震との対応関係を検討し、これまで連動型・非連動型として概念的に把握されていたプレート境界型巨大地震像に対して、発生場所や地震規模の予測精度向上に資する基本的な資料を整備した。
著者
谷川 亘 村山 雅史 井尻 暁 廣瀬 丈洋 浦本 豪一郎 星野 辰彦 田中 幸記 山本 裕二 濱田 洋平 岡﨑 啓史 徳山 英一
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.21-31, 2021 (Released:2021-09-07)
参考文献数
34

高知県須崎市野見湾では,白鳳地震によって水没した村『黒田郡』の伝承が語り継がれているが,その証拠は見つかっ ていない.そこで本研究では,野見湾内で海底調査を行い『黒田郡』の痕跡を探索した.その結果,海底遺構の目撃情報 がある戸島北東部の海底浅部(水深6m~7m)に,面積約0.09km2の沖側に緩やかに傾斜する平坦な台地を確認した. 台地表層は主に薄い砂で覆われており,沿岸に近づくにつれて円礫が多くなった.また,砂層の下位は硬い基盤岩と考え られ,海底台地は旧海食台(波食棚)と推定される.海水準変動と地震性地殻変動を踏まえると南海地震により海食台は 約7m 沈降したと推定できる.本調査では黒田郡の痕跡は発見できなかったが,水中遺跡研究に対する多角的な調査手 法を検討することができた.特に,インターフェロメトリソナーの後方散乱強度分布による底質観察とStructure from Motion(SfM)技術を用いた海底微地形の構築は,今後浅海における水中遺跡調査に活用できる.
著者
徳山 英一 本座 栄一 木村 政昭 倉本 真一 芦 寿一郎 岡村 行信 荒戸 裕之 伊藤 康人 除 垣 日野 亮太 野原 壮 阿部 寛信 坂井 眞一 向山 建二郎
出版者
海洋調査技術学会
雑誌
海洋調査技術 (ISSN:09152997)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.27-53, 2001-03-31
参考文献数
56
被引用文献数
6

We propose the guideline to identify fault in offshore region mainly based on MCS profiles, combining high resolution bathymetric maps and geological data such as bore hole results. Based on the guideline we distinguished total 776 faults developing around Japan since the latest Miocene and 753 faults out of total numbers of faults are interpreted to have been active by Quaternary. Together with distinguishment of fault we examined the attributes of each faults such as surface and vertical distribution, criteria of offset, age of movement, certainty of a fault and so on. <br>The results of the distinguishment and examination of the fault leads to the conclusion that the ongoing tectonic framework around Japan characterized by 1) oblique Subduction along the Nankai Trough, 2) rifting at the Okinawa Trough, 3) E-W compressionl regeme along the Japan Sea margin, 4) E-W compressionl regeme along southwestern margin of the Okhotsk Sea and off southern Hokkaido, 5) E-W compressionl regeme along the Japan Trench, 6) rifting in the central arc of the Izu-Ogasawara Arc has been established since 3 Ma, at the earliest 6 Ma. <br>We utilized high resolution data set which we enable to access. Tow big problems, however, still remain in terms of reliability of fault recognition. Those are 1) age of fault movement and 2) spatial distribution of fault. To solve the first one, new technique is required in order to obtain core samples which provide critical evidence to determine age of fault movement. As is second problem concerned, new intensive seismic survey is indispensable to make a precise fault distribution map, especially in the boundary area between land and sea.
著者
濱田 洋平 谷川 亘 山本 裕二 浦本 豪一郎 村山 雅史 廣瀬 丈洋 多田井 修 田中 幸記 尾嵜 大真 米田 穣 徳山 英一
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

⾼知県⼟佐清⽔市⽖⽩海岸付近の海底(水深5-10m)には、数十基の大型の石柱(長さ1m)が横たわっている。しかし、石柱が人工的に作られたものなのか、自然の岩石ブロックなのか、そしてその起源ついては不明である。石柱が確認された爪白地区は、昔から南海トラフ地震による津波と台⾵・⼤⾬による⽔害に幾度も襲われているため、海底の石柱には自然災害の痕跡が残されている可能性がある。また、⾼知県各地の沿岸部には684年の⽩鳳地震で⼀夜にして沈んだとされる村(⿊田郡)の伝承が伝わっており、石柱と「黒田郡」との関係性にも期待がもたれる。そこで本研究では、石柱の幾何学的特性と岩石物理鉱物学的な特性を測定し、起源の推定につながる可能性の高い近傍の岩石および石造物についても同じ特性を測定した。各特性の類似性を評価し、海底石柱の起源の推定を行った。一連の分析の結果、海底の石柱は三崎層群竜串層(中新統)を起源とし、現在は閉鎖している三崎地区の採石場から採取、加工され、爪白地区で石段や家の基礎などの石造物として利用された可能性が高いことがわかった。さらに、爪白地区で利用されていた石柱は1707年の宝永地震による津波により海岸まで流された可能性が高いことがわかった。本研究は、破壊分析(間隙率・密度・XRD)と非破壊分析(X線CT・pXRF・帯磁率測定)の両手法を用いて実施している。将来における水中考古遺物の保存を念頭に置いた場合、水中における非破壊分析手法の確立が喫緊の課題となる。本研究ではX線CT画像解析による石柱の表面形状の特徴とpXRFによる元素濃度比の測定結果を用いたPCA解析が起源特定に大きな貢献をしたが、水中でも室内分析と同様の精度でデータを取得する必要がある。一方で、石柱が水中に水没したプロセスを知る上での重要な手がかりとなる年代評価については手法と精度に問題点があることがわかった。本研究の一部は高銀地域経済振興財団の助成金により実施された。
著者
村山 雅史 谷川 亘 井尻 暁 星野 辰彦 廣瀬 丈洋 富士原 敏也 北田 数也 捫垣 勝哉 徳山 英一 浦本 豪一郎 新井 和乃 近藤 康生 山本 裕二 黒田郡 調査隊チーム一同
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

黒田郡遺構調査の目的で,高知県浦ノ内湾の最奥部(水深10m)から採取した堆積物コアを解析した。当時の海洋環境や生物相の変遷履歴も復元することもおこなった。高知県土佐湾の中央部に位置する浦ノ内湾は,横浪半島の北側に面し,東西に細長く,12kmも湾入する沈降性の湾として知られている。高知大学調査船「ねぷちゅーん」を用いて、バイブロコアリングによって4mの堆積物コアが採取された。採取地点は,周囲からの河川の影響はないため,本コア試料は,湾内の詳細な環境変動を記録していると考えられる。採取されたコア試料は,X線CT撮影,MSCL解析後,半割をおこない肉眼記載や頻出する貝の採取,同定をおこなった。 堆積物の岩相は,olive色のsity clayであり,全体的に多くの貝殻片を含む。コア上部付近は,黒っぽい色を呈し強い硫化水素臭がした。また,コア下部に葉理の発達したイベント堆積物が認められ,その成因について今後検証する予定である。
著者
谷川 亘 徳山 英一 山本 裕二 村山 雅史 田中 幸記 井尻 暁 星野 辰彦
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

日本各地には巨大災害により沿岸部の集落や構造物が水没した記録や伝承が残されている。例えば1498年の明応東海地震による浜名湖南部集落の水没、天正13年の地震に伴う長浜市琵琶湖湖岸集落の水没、磐梯山の噴火に伴う檜原宿の水没が挙げられる。高知県内でも684年に発生した白鳳南海地震により集落が水没した伝承が残されており、その集落は「黒田郡」という名称で市民に知れ渡っている。この黒田郡伝承を明らかにするために、過去に幾度にもわたり調査が実施されてきた。しかし、調査記録が不明瞭な点が多く、黒田郡の謎にどこまで迫れたのかわからない。そこで2013年から高知大学と海洋研究開発機構が中心となって、黒田郡の調査が始まった。2019年までに高知県内沿岸部の6地点(南国市十市、野見湾、浦ノ内湾、興津、爪白、柏島)の調査を実施してきた。残念ながらこれまでのところ黒田郡の痕跡を示す証拠は得られていない。一方、本研究は海底の人工物と構造物を自然災害の記録を残す物証として見立てた地球科学的な分析アプローチであるため、これまでの発想にない発見が得られつつある。そこで本発表では、研究成果が出つつある3地点(野見湾・爪白・柏島)について調査概要を紹介する。須崎市野見湾の南部に位置する戸島は弥生時代の遺跡があり、島北東部海底で井戸を見たという報告が昔から寄せられている。そのため、野見湾は高知県内でも黒田郡の有力候補地として知られている。本研究では、海底地形調査により戸島北東部において縦横200m幅にわたる台地を確認することができた。海底台地は非常に平坦で、海食台の可能性をうかがわせることから、海食台の形成過程から地震性沈降史を評価できる可能性がある。一方、土佐清水市爪白海岸海底には人工的に加工された跡が残る石柱が多く横たわっている。本研究により、この石柱は近郊の爪白地区で石段や家の基礎として古くから使用されていた石造物であることがわかった。さらに、石柱が陸上から海底に運搬されたプロセスに南海地震津波と水害が関与している可能性があることがわかった。幡多郡柏島の北部に石堤を想定させる巨石が積まれた壁状構造物が海底にあることが知られている。野中兼山が整備した陸上の堤(兼山堤)とほぼ並行に位置しているため、兼山堤との関連性もうかがわせる。しかし、年代同定と鉱物分析からこの構造物は自然でできたビーチロックである可能性が高いことがわかった。ビーチロックは潮間帯で形成されるため、ビーチロックの年代分析から沈降履歴を評価できる可能性がある。本研究は、水中構造物と水中遺物を対象にした調査が、地震や水害などの歴史自然災害の履歴の評価につなげられる可能性を示唆している。本研究の一部は高銀地域経済振興財団の助成金により実施された。参考文献谷川亘ほか、2016、黒田郡水没伝承と海底遺構調査から歴史南海地震を紐解く:レビューと今後の展望、歴史地震、31、17-26
著者
廣野 哲朗 横山 友暉 金木 俊也 小笠原 宏 矢部 康男 松崎 琢也 山本 裕二 徳山 英一 Tullis C. Onstott Martin Ziegler Durrheim Ray Esterhuizen van Heerden Bennie Liebenberg The ICDP DSeis team
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

Drilling into seismogenic zones of M2.0-M5.5 earthquakes in deep South Africa gold mines (DSeis Project) was undertaken in 2017–2018 near Orkney, South Africa, to understand principal mechanism of earthquakes nucleate and propagate. Drilling at two main holes, Hole A (817 m) and Hole B (700 m), was completed at the Moab Khotsong mine, and the latter hole penetrated the fault zone that slipped at the 2014 M5.5 earthquake. Fault-related material and its surrounding host rocks were successfully recovered from the hole, and the samples were analyzed in the Center for Advanced Marine Core Research, Kochi University, Japan. The main damaged zone is characterized by highly fragmented fault breccia with high amount of talc and amorphous material, which is likely to related to recent earthquake event. Nondestructive continuous measurements of physical properties (X-ray CT image, density, magnetic susceptibility, and natural gamma ray) are in progress. We will show the preliminary results about the characteristics of the M5.5 fault zone and its implication for generation of the M5.5 earthquake.
著者
加賀美 英雄 徳山 英一 小玉 一人 満塩 博美
出版者
高知大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

南千島海溝と南海トラフの付加体を調べ、海洋地殼が破壊される深度に相違があることが分かった。それは10ー15kmの深度を境として、それより浅い脆性的変形領域とそれより深い準延性的変形領域に区別された。10ー15kmより浅いところで海洋地殼が破壊される南海型の付加体では、破断面に多数の微小クラックが非定向に集中して破壊されることから余震域の拡大率が大きな値を示す。また、海洋地殼がこのように浅いところで付加体に下付けされると、組み込まれた付加体の密度は比躍的に増加することになり、このことが南海マイクロプレート(前弧スリバー)が九州にむかって沈み込んでおり、豊後水道が形成されている一つの原因となっていると考えた。室戸岬西方の安芸海底谷断層は土佐沈降帯と室戸隆起帯を分ける構造線であることが明らかとなった。これより西側では更新世中期以降の竜王層群が堆積しているが、東側では基盤岩類が北東ー南西の高角逆断層によって変位している。室戸隆起帯の東側の野根海底谷断層から安芸海底谷断層までの35kmの間は一連の構造単位であり、繰り返し発生した歴史地震の境界が室戸隆起帯を形成したのだと考えると、西南日本にみられる波曲構造は地震断層の境界が原因であるとして理解できる。興津隆起帯も土佐湾を分割する地震断層の境界であることが明らかになった。この東の土佐沈降帯にある竜王層群の堆積盆の位置は下位の土佐湾層群のに比べて約10°も反時計回りに移動していた。興津隆起帯の隆起軸も時間変化に伴う移動がみられた。これは、更新世中期後にフィリピン海プレートの沈み込みが、北西へ転移したために南海トラフに対して斜め沈み込み運動をしたことに伴う諸々の変動;南海マイクロプレートの形成、西国山脈の隆起、モラッセ性堆積物の広範な分布、そして土佐湾では竜王層群の新しい堆積盆形成などの一つと考えられる。
著者
中田 高 徳山 英一 隈元 崇 室井 翔太 渡辺 満久 鈴木 康弘 後藤 秀昭 西澤 あずさ 松浦 律子
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.240, 2013 (Released:2013-09-04)

2011年東北地方太平洋沖地震以降,中央防災会議によって,南海トラフ沿いの巨大地震と津波の想定がなされているが,トラフ外れた海底活断層については詳しい検討は行われていない.縁者らは,詳細な数値標高モデルから作成した立体視可能な画像を判読し,南海トラフ東部の南方に位置する銭洲断層系活断層の位置・形状を明らかしたうえで.その特徴および歴史地震との関連を検討する.
著者
徳山 英一 西村 清和 末広 潔 平 朝彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

平成6年度に実施された調査により、極めて高解像のイザナギ海底音響画像記録とディープトウ・サイスミックス・プロファイルを取得することが出来た。イザナギ海底音響画像記録からは東京海底谷の河床で活断層と解釈される構造が発見された。また、この活断層を横切るディープトウ・サイスミックス・プロファイルから明瞭な″とう曲構造″が併せて発見された。この変動地形は1923年の関東地震の震源位置とほぼ一致することから、関東地震により引き起こしたものと推測される。平成7年度はディープトウ・サイスミックス探査、さらにピストンコアによる採泥を実施した。ピストンコアの採泥は9地点で行われた。その内4点が東京海底谷を横断する活断層を狭む地点で実施された。採取されたコアは即座に処理され、以下の測定が採取日に行われた。1)MST(間隙率、P波速度、磁気強度をコアを非破壊で計測する機器)計測。2)コアの記載。3)間隙水の化学分析。4)水銀注入式の間隙率の測定。5)帯磁率異方性の測定。その結果、東京海底谷から採取されたコアからはイベント堆積物が2つ確認された。上位のものは海底から35-40cm下の地点、下位のそれは150cmから下に存在する。この2つのイベント堆積物は巨大地震により誘発された可能性があり、上位のイベント堆積物が1923年の関東地震に関連するものであれば、堆積速度から判断して、下位のイベント堆積物は1923年から250年程度さかのぼるものと推定される。平成8年度はイザナギ画像と水深値を統合して3次元海底音響画像を作成した。この結果から、活構造の分布を3次元的に捉えることが可能になった。またコアサンプルに関しては、ソフトX線写真撮影、化学分析を実施した。断層近傍から採取された堆積物の主成分、さらに微量元素の測定結果からは、断層運動に伴う湧水現象を示す特徴的シグナルを今回は見いだすことが出来なかった。