著者
大和田 道雄
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.283-300, 1978

北海道平野部のうち6地域の卓越風向および風速の分布を偏形樹調査によって明らかにした.1973~74年にかけて十勝平野,サロベツ原野およびサロマ湖周辺地域を調査し,先に発表した石狩平野,斜網地域,根釧原野の調査資料も加えて考察した.<br> 十勝平野では,約140地点のカラマツの偏形樹を調査した結果,5つの風系すなわち狩勝峠から吹き出す西よりの風は (1) 石狩山地に沿って南西風として吹き上がるもの, (2) 十勝平野を西風として吹き抜けるもの, (3) 芽室付近から向きを変えて北あるいは北西風として吹いているものと,太平洋からの南東風が, (4) 十勝川の河川低地に沿って吹き上がるもの, (5) 日高山脈に沿って南風として吹き上がるもの,とに区分できた.なお, (1) の風道では風下波動の影響と思われる強風域が10~15kmの間隔で分布する.サロベツ原野では,約70地点について調査した.そこでは日本海からの西よりの風は, (1) 西風として吹いているもの, (2) 局地的な地形の影響によって南西風に変化しているもの, (3) 天塩川に沿う河川低地に沿って北西風に変化するもの,の3つの風系に分類できる.<br> さらに,平均風速と偏形度との関係は,W<sub>sp</sub>(m/s)=1.1+1.19G<sub>spl</sub>で表わされる.ここでW<sub>sp</sub>は,春(3・4・5月)の農業気象観測所の平均風速(m/S)であり, G<sub>sp1</sub>はカラマツの偏形度である.また夏季においては,W<sub>s</sub>(m/s)=0.86+1.07G<sub>sfa</sub>となる。同様にして付字sは夏季(5~9月)を示し,G<sub>sfa</sub>は石狩平野とサロベツ原野におけるヤチダモ・ハンノキの偏形度である。根釧原野における夏の平均風速とカラマツの偏形度:との関係式(大和田,1973)と,前記2式から,6地域における平均風速の分布図を作成した.平均風速4.0~5.0m/sの強風域は, (1) 石狩平野においては石狩川河口, (2) 斜網地域においては南側山地およびオホーツク海岸沿いの地域, (3) サロマ湖湖岸の周辺, (4) 根釧原野においては尻羽岬・浜中湾および昆布森の周辺, (5) 十勝平野においては新得町の周辺および瓜幕付近,および (6) サロベツ原野においては日本海に沿って約5~10kmの海岸地域,にみられる.一方,弱風域は,根釧原野の中央部,十勝平野における日高山脈に沿う風陰地域および石狩平野における札幌市の周辺地域に見出された.
著者
大和田 道雄
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.138-144, 1969-02-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
6
被引用文献数
5 2
著者
大和田 道雄 秋山 祐佳里 畔柳 洋子 中川 由雅 石川 由紀 櫻井 麻理
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.216, 2005

_I_ 研究目的<BR> 近年,我が国の大都市では,夏季の夏型気圧配置時において異常高温が出現する傾向がみられるようになってきた。これは,都市域の拡大や排熱量の増加,および地表面の透水層や緑地の減少等によるヒートアイランド強度が強まったことも考えられるが,夏型気圧配置のパターンや出現頻度が変わってきたことも事実である。特に,名古屋と大阪では,1990年以降,東京に比較して異常高温の出現率が高まる傾向にある。そこで,本研究はその要因を夏型気圧配置の出現傾向と大気大循環場から探ろうとするものである。<BR>_II_ 資料および解析方法<BR> まず,異常高温の出現頻度が増加傾向を示す1980年以降の夏型気圧配置分類を行った。夏型気圧配置は,北太平洋高気圧の張り出し方によって出現頻度が最も多い南高北低型と東高西低型,全面高気圧型,およびオホーツク海高気圧型に分類した。さらに,北太平洋高気圧の張り出しが亜熱帯ジェット気流の緯度的・経度的位置,およびトラフ・リッジに対応することから,チベット高原を中心にしたユーラシア大陸に形成される南アジア高気圧の関係を把握するため,NCEP/NCARの再解析データから200hPa面における南アジア高気圧の盛衰との関係を求めた。<BR>_III_ 結 果<BR> 名古屋・東京・大阪の過去約45年間における35℃以上の出現日数を時系列で表し,移動平均に直した結果,2000年以降は東京が4_から_5日であるのに対し,名古屋と大阪は15日以上出現するようになった。これは,1970年当時に比較して約3倍である。これらの異常高温日数は,年による変動が大きくほぼ6年周期で現れる。その原因は明らかではないが,1994年から1995年にかけての名古屋では37℃以上の異常高温が5日近くも現れた。この時の気圧配置は1994年が全面高気圧型,1995年は南港北低型が多く支配した年である。したがって,1994年は全国的に猛暑となったが,1995年に関しては名古屋特有の暑さであった。これは,名古屋が南高北低型の気圧配置時において北太平洋高気圧の西縁部にあたるため,南西の風が鈴鹿山脈を越えてフェーン現象をもたらすからである。南高北低型が現れる時の上層気圧場は,200hPa面における南アジア高気圧の中心がイランモードになっていて,東アジアがわずかに北東シフトしている。その結果,日本付近は亜熱帯ジェット気流がリッジを形成しており,西日本に高気圧が張り出しやすい状態になっていた。これに対し,全面高気圧が多く現れた1994年は,南アジア高気圧の中心がイランとチベットの両方にあって,日本列島が広く大陸からの高気圧に覆われている。このため,北太平洋高気圧の西への張り出しが容易となるだけであなく,上層は大陸からの高気圧に覆われて猛暑年となったものと思われる。したがって,名古屋の猛暑傾向は,イランを中心とする南アジア高気圧の盛衰に左右されていることが判明した。