著者
大塚 浩仁 田中 健作 斉藤 晃一 森田 泰弘 加藤 洋一 佐伯 孝尚 山本 高行 後藤 日当美 山本 一二三
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.148-154, 2015-05-05 (Released:2017-06-12)
被引用文献数
1

イプシロンロケットは2013年9月14日に惑星分光観測衛星「ひさき」の打上げに成功し,目標とした軌道投入精度を達成し,新規に開発した誘導制御系の性能を遺憾なく発揮した.イプシロン開発では,惑星探査機「はやぶさ」を投入したM-Vロケットの誘導制御系の性能を継承しつつ新たな技術革新にチャレンジし,M-Vの機能,性能をさらに向上させた誘導制御系を実現した.最終段には信頼性の高い低コストなスラスタを用いた液体推進系の小型ポストブースタ(PBS)を開発し,新たに導入した誘導則とともに軌道投入精度を飛躍的に向上させた.フライトソフトにはM-Vで蓄積した各種シーケンスや姿勢マヌーバ機能をユーティリティ化して搭載し,科学衛星ユーザ等の多様な要望に容易に対応できる機能を実現し運用性を高めた.
著者
森田 泰弘 井元 隆行 徳留 真一郎 大塚 浩仁
出版者
一般社団法人日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.59, no.695, pp.371-377, 2011-12-05
被引用文献数
1

イプシロンロケットの目的は,小型衛星に対して即応性豊かな打ち上げシステム,すなわち自在性と機動性に富みユーザーフレンドリな輸送手段を構築,宇宙への敷居を下げて宇宙科学や宇宙利用の裾野を拡大することにある.一方,これを輸送系の視点でみると,打ち上げシステムの革新というひと言に尽きる.すなわち,今後のロケット開発にあたっては,射場設備と運用はもとより,製造プロセスから搭載系に至るまで,およそロケットの打ち上げに必要な設備や運用をとことんコンパクトで身軽なものにしていこう,それが未来への扉を開く鍵であるという理念である.イプシロンロケットでは,このような壮大なビジョンを実現する第一歩として,ロケットのインテリジェント化やモバイル管制などの超革新技術を開拓,これを世界に先駆けて実証するために,初号機を2013年度に打ち上げる計画である.
著者
大塚 浩仁 佐野 成寿 羽生 宏人 山本 高行 伊藤 琢博 岩倉 定雄
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.32-37, 2020-02-05 (Released:2020-02-05)
参考文献数
4

本解説では,超小型衛星打上げ機(SS-520 4,5号機)の機体システム開発の概要を示す.本ロケットの開発意義は,搭載した宇宙用機器に品質の高い民生部品を活用して超小型衛星打上げシステムを作り上げたことと,従来の開発手法に加え新たに取り組んだ民生品の品質保証の考え方を構築してフライト実証したことである.また,既存の観測ロケットに衛星打上げ能力を持たせるためには,いくつかの課題を克服する必要があった.抜本的な構造軽量化,搭載機器の小型軽量化,衛星とロケット一体となった機能の最適配分,誘導制御系の工夫,飛行安全,Test as Flyをベースとした検証試験等々,限られたリソースと開発期間の厳しい制約条件のなかで随所に創意工夫を施した.本解説では,その開発におけるポイントを総括した.