著者
安田 誠一
出版者
明星大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

・研究目的18歳人口の減少等、外部環境の変化に伴い、大学は戦略的な経営を行う必要があり、現場に近い大学職員の経営企画能力の育成は極めて重要となってきている。中教審の答申では、「業務の高度化・複雑化に伴い、大学院等で専門的教育を受けた職員が相当程度いる」ことが、教員・職員協働で大学改革を実行する必要条件になるとしている。OJTや集合研修と異なり、集中して体系的に、専門分野について学べる大学院は、大学職員の職能開発の有効な手段であると考えられる。一方で、職能開発における大学院の優先順位はそれほど高くなく、大学職員自身が業務外の時間に経済的負担を負って進学している現状がある。そこで本研究では、職場である大学側と社会人大学院を修了した大学職員との間の「大学院教育の有用性」に対する意識の違いを明らかにすることを目的として研究を実施した。・研究方法全国の国公私立大学(771校)の人事部を対象に質問紙法にて「職能開発における大学院教育の位置づけ」を問う調査を行うと共に、特徴的な大学2大学にヒアリング調査を実施した。・研究成果本調査の有効回答数は272校であり、回答率は35.3%であった。調査の結果、大学職員の能力開発については98.9%、自己啓発については95.6%の大学がその必要性を感じていることが明らかとなった。一方、大学院を「自己啓発の場として望ましい」とした回答は全体の19.5%であり、大学院進学を支援する制度を持つ大学は、22.1%であった。先行研究において明らかになっている大学院を修了した大学職員自身が感じる「大学院の有用性」と、職場側が感じる「大学院の有用性」が大きく乖離することが浮き彫りとなった。加えて、ヒアリング調査においては、大学院で学んだ知識の実務への還元についての不安も挙げられた。