著者
江藤 一洋 KANOK Sorate NARONGSAK La PIYAWAT Phan SITTICHAI Tu VISAKA Limwo 石川 烈 黒田 敬之 大山 喬史 天笠 光雄 SORATESN Kanok LAOSRISIN Narongsak PHANKOSOL Piyawat TUDSRI Sittichai LIMWONGSE Visaka
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

1.〈顎顔面の発生と発生異常に関する調査研究〉頭部神経堤細胞(NC)が神経上皮上の領域によってその分化運命が異なるかどうかを細胞培養系で検索した。その結果、(1)ニューロンは中脳領域由来のNCから前脳領域より多くしかも早期に分化した、(2)軟骨細胞に分化すると思われる細胞は中脳領域由来のNCに限定されていた、(3)色素細胞は前脳領域由来のNCに限定されていた。以上より、NCは神経上皮上から移動を開始する前に分化運命はその領域毎ですでに決まっていると考えられた。2.〈顎顔面外科に関する調査研究〉チュラロンコン大学および東京医科歯科大学の口腔顎顔面外科における1985年〜1994年の10年間の口腔悪性腫瘍、良性腫瘍、顎顔面裂奇形、顎骨骨折および顎関節疾患について調査、比較研究を行った。悪性腫瘍中最も頻度の高かったのは両国とも扁平上皮癌であった。扁平上皮癌は男性に多く、タイでは60〜70歳台に、日本では50歳台に好発していた。タイで下顎歯肉癌が多かった(42.1%)のに対し日本では舌癌が高頻度であった(46.6%)。良性腫瘍中タイで多かったのはエナメル上皮腫(51.4%)、血管腫(20.0%)であり、日本では血管腫(18.8%)、多形性腺腫(13.1%)の順であった。裂奇形については両国ともに片側性唇顎口蓋裂が多かった(タイ42.1%、日本33.3%)。顎骨骨折は20歳台の男性に好発しており、その原因はタイでは交通事故が圧倒的に多く(72.5%)、日本では転倒によるものが多かった(30.0%)。顎関節疾患のうち外科的処置を受けたものはタイでは顎関節強直症(87.5%)が主であったが、日本では顎関節内障(42.1%)、強直症(28.1%)、習慣性脱臼(10.5%)など多疾患にわたっていた。3.〈顎顔面補綴に関する調査研究〉両国間の症例数を可及的に同一とするため、チュラロンコン大学では1985年〜1994年の間の188症例、東京医科歯科大学では1992年〜1994年の間の425症例を最終的な分析対象症例とした。症例を口蓋裂、腫瘍、外傷、炎症、その他に分類し、年度別患者数、男女比、年齢分布、主訴、症例別患者数、最終補綴物について分析を行い、さらに、口蓋裂症例については裂型、腫瘍症例についてはその部位、外傷症例についてはその部位と原因についても分析を行った。その結果、両国間での共
著者
上野 俊明 大山 喬史
出版者
口腔病学会
雑誌
口腔病学会雑誌 (ISSN:03009149)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.429, 1996-06-30 (Released:2010-10-08)
参考文献数
4
被引用文献数
1
著者
大山 喬史 森本 俊文 河野 正司 片山 芳文 野首 孝祠 古谷野 潔
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

床義歯の形態,設計様式が口腔感覚に及ぼす影響を分析し,機能との関係を検討する目的で舌感,味覚,痛覚,咬合感覚等の生理学的データを収集し,さらにその神経筋機構について動物実験より分析した.まず口蓋部の床の形態が舌感に及ぼす影響について質問紙法で分析した結果,床辺縁の断面形態は粘膜より移行的に立ち上るナイフエッジ状,走行は左右対称な形態が感覚的に優れ,移行的な断面形態,斜めのラインを避けた左右対称な走行形態が口腔感覚に調和することが推察された.次に臼歯部咀嚼とうまみ溶出の関係を調べるために,利尻昆布のグルタミン酸量を測定し,咀嚼後の溶出量を算出した結果,臼歯部補綴によりグルタミン酸溶出量は増加する傾向が認められた.また金属床の味覚に対する影響を実験用口蓋床を用いて検査した結果,厚さが1.5mmのレジン床と金属床では味覚閾値に差は認められなかったが,0.5mmの金属床では,味覚閾値は有意に低い値を示し,義歯床の厚さや材質の違いが味覚に影響を与えることが示唆された.さらに義歯装着者の咀嚼効率の判定法として,食塊形成能の観点から嚥下に至るまでの咀嚼ストローク数をパラメータとすると有用なことが認められた.また無歯顎者の義歯装着が床下粘膜の圧痛閾値に与える影響を調べた結果,無歯顎者は健常有歯顎者より40%低く,無歯顎者の口蓋中央部の閾値は頬側歯槽粘膜より2〜300%高かったため,義歯装着により圧痛閾値は低下し,粘膜への機械的ストレスの関与が示唆された.さらにモルモット前歯部に咬合挙上板を装着して臼歯を挺出させると,歯ぎしり様の運動を繰り返し元の咬合高径に戻るが,三叉神経中脳路核を破壊し閉口筋の筋感覚を除外すると高径低下が有意に減少し,咬合高径決定に閉口筋の筋感覚受容器の関与が示唆された.以上より,口腔感覚と機能とは密接な関係にあり,床義歯の設計に際しては維持や機能力の分配だけでなく,感覚への配慮が機能向上に繋がることが示唆された.