著者
吉田 満梨 水越 康介
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.17-34, 2012-03-31 (Released:2013-12-28)
参考文献数
71

本稿では、近年注目を集める実践的転回( practice turn)を考察し、消費経験論への再接続を試みる。 1980年代に Hirschmanや Holbrookを中心に展開された消費経験論は、今日では、消費文化理論(Consumer Culture Theory: CCT)の名のもとに、多様な研究分析が蓄積されるようになっている。我々のみるかぎり、こうした研究には、実践的転回の萌芽をみることができる。実践概念への注目は、 CCTはもとより、多くの消費者行動論やマーケティング論においても、新たな研究方針を提示することにつながる。具体的に言えば、実践概念の下では、主観的かどうかという点ではなく、主観と客観や個人と構造という視点自体がどのようにして形成され、またどのように消費行為に影響を及ぼすことになるかを問うことになる。
著者
大平 修司 スタニスロスキー スミレ 日高 優一郎 水越 康介
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.19-30, 2021-01-07 (Released:2021-01-07)
参考文献数
61
被引用文献数
2

ふるさと納税は,問題点を抱えているものの,着実にその規模が拡大している。一方で,ふるさと納税に関する研究は,その実態把握研究が大半であり,特に利用者研究は限定的な理解に留まっている。本稿では,まずふるさと納税を寄付型および報奨型クラウドファンディングとして理解し,利用者がふるさと納税を行う要因を検討する。次に寄付者が寄付を行う要因を検討する。さらにふるさと納税の返礼品を寄付つき商品と理解することでコーズ・リレーテッド・マーケティング研究を通じ,消費者が寄付つき商品を購入する要因を検討する。最後にふるさと納税の利用者を理解する枠組みを提示し,地方自治体のマーケティングへの示唆を述べる。
著者
水越 康介
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.3-5, 2023-09-29 (Released:2023-09-29)
参考文献数
2

Case study research is a method of research using case studies that has gained a spotlight within social science. Many books and articles outline the case study research method, among which the series of works by Robert K. Yin has been well referenced. In this special issue, we summarize findings from case study research based on the methodology described by Yin. These findings show how case study research can be performed in practice and what it can reveal.
著者
水越 康介
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.33-42, 2008-03-20 (Released:2022-08-19)
参考文献数
62

本稿では,マーケティング論の視点から,特に消費行為に焦点を当てて格差の問題を考察する.消費行為は,格差を社会的に可視化することで階層の安定的な維持に寄与する.一方で,消費社会では消費行為のフラグメンテーションが進み,格差の社会的な不可視化が進む.しかし,それは格差が現実になくなるということを意味しない.むしろ,格差に対する議論の高まりの中で,見えない格差は不安を生み出し,格差を新たな形で作り出す契機ともなる.
著者
水越 康介
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.116-125, 2022-03-31 (Released:2022-03-31)
参考文献数
3
被引用文献数
1

本稿では,アバターアプリ「ポケコロ」のサービス展開について,運営会社であるココネ株式会社の歴史とともに紹介する。インターネットの普及に合わせて注目されてきたアバターは,近年いよいよ充実したサービスを提供するようになっている。利用者からみても,アバターに対して課金し,着せ替えや模様替えを楽しむことはいまや当たり前の行動である。アバターアプリでは,ビジネスの仕組みとしてこうしたアイテムへの課金が重要になる。本稿では,デザイナーのチーム体制によるアイテム開発の仕組みとともに,利用者のコミュニケーションとアイテムの結びつきを確認する。こうしたアバターアプリの発展は,メタバースと呼ばれるようになった仮想空間の今後の可能性と強く結びついている。
著者
松嶋 登 水越 康介
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.4-18, 2008-12-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
45

本稿では,市場原理を前提とした戦略論が抱える理論的課題を克服するため,制度派組織論が議論する戦略概念を再検討し,現実の企業が採る戦略を捉える分析枠組みを構築する.我が国のオンライン証券業界の戦略事例を通じて示されるのは,制度を変更する戦略が制度的な実践を通じて生み出され,企業間の多面的な競争とその競争に独自の価値を見出す顧客が総体となって,市場が創発されるダイナミズムである.
著者
水越 康介
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.83-92, 2006-03-20 (Released:2022-08-05)
参考文献数
28

本稿では,沼上(2000)において提起された間接経営戦略の可能性が考察され,その精緻化が試みられる.その結果,間接経営戦略は,意図せざる結果を意図的に取り込む戦略としてではなく,意図せざる結果を利用することによって可能になる戦略として捉えなおされる.この認識は,消費者を企業にとっての決定的な他者として捉えるマーケティングの視点を強調し,またその意義をふまえることで導かれる.
著者
水越 康介 日高 優一郎
出版者
日本商業学会
雑誌
JSMDレビュー (ISSN:24327174)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.33-39, 2017 (Released:2019-10-29)
参考文献数
70
被引用文献数
1

本稿では,ソーシャル・マーケティング研究について検討し,今後の具体的な研究指針を提示する。この試みは,近年ますます注目される社会的活動において,マーケティング活動やマーケティング研究が果たす意義を明らかにするとともに,営利企業の活動にとどまらないマーケティングの可能性を示す。具体的に,本稿では,ソーシャル・マーケティングがコマーシャル・マーケティングの応用として発展し,個人の行動変革を目的とするダウンストリームに注目してきたことを確認する。その上で,近年の新たな研究として,社会変革までを見据えたアップストリームに注目するとともに,アップストリームとダウンストリームの相互依存関係に関する実証的な研究が必要とされるようになっていることを示す。
著者
水越 康介 コールバッハ フローリアン
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.86-101, 2015-03-31 (Released:2020-05-26)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

本稿では,イクメンという言葉と意味が普及し消費される過程と,その言説に向き合う現在の父親のアイデンティティ構築について考察する。これまでの研究では,具体的な消費行動とアイデンティティ構築の関係に焦点が当てられることが多く,特定の父親像を担う言説とアイデンティティ構築の関係についてはあまり考察されてこなかった。そこで本稿では,マクロな視点から,主に新聞記事にもとづきながら家族サービスとの対比によってイクメンという言葉と意味の普及を明らかにするとともに,ミクロな視点から,これから親になる夫婦へのヒアリングにもとづきながらイクメンという言葉が2つの意味で捉えられ,父親のアイデンティティ構築に関わっている可能性を示す。
著者
桑田 耕太郎 松嶋 登 石川 哲也 高田 昌樹 原 拓志 高尾 義明 松尾 隆 井上 福子 高橋 勅徳 西村 孝史 水越 康介 宮尾 学
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は、所与の科学技術を産業利用する既存のイノベーション研究ではなく、科学技術の変化や産業構造の変化を伴った根源的なイノベーションのプロセスを理解するための分析枠組みと理論を構築し、先端科学技術と産業の国際競争力の向上をダイナミックに結びつける理論と方法を確立することにある。ビッグサイエンスのリサーチサイトとして、理化学研究所の協力の下、大型放射光施設(SACLAやSPring-8)を取り上げる。本研究では、「科学は社会化され、社会は科学化される」という視角を採用し、世界最先端の大型放射光施設を生み出す産業の実践、その施設を利用する科学技術者の実践、その研究成果を利用する産業の実践のダイナミクスを研究し、科学・技術と産業社会の分業構造が根幹から再編成されるプロセスを分析する。研究3年目となった本年は、これまでの研究蓄積を踏まえつつ、大きく4つの論点についてそれぞれ研究を進めた。第一に、科学と産業の相互影響の歴史に取り組み、これまでに引き続き研究蓄積の整理分析を行うとともに、各分野でのヒアリング調査を中心として、放射光科学の歴史を確認した。第二に、ビッグサイエンスを支えるビジネス・エコシステムの社会的形成、および、第三にビッグサイエンスを媒介にした社会的実践の変化を捉えるため、大型放射光施設に関わる企業のイノベーションを確認した。さらに第4として、地球レベルでのイノベーション・システムの探求に取り組むべく、研究会や学会報告を行い、研究枠組みの精緻化を進めた。
著者
加護野 忠男 石井 淳蔵 猶本 良夫 川上 智子 松嶋 登 坂田 隆文 水越 康介 横山 斉理 日高 優一郎
出版者
甲南大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、医療経営のマネジメントに関する研究を行うことを目的とする。具体的には、医療分野の固有性をふまえつつ、研究上の方法論整備を行い、トヨタ生産方式を中心としたマネジメントノウハウの意義についての研究がすすめられた。研究の結果、方法論として、制度論や実践論に基づく研究の可能性が示された。また、具体的な対象については、トヨタ生産方式はもとより、より包括的に次章を捉える為にも、ITの意義や、ガバナンスの必要性などが確認された。
著者
清水 信年 西川 英彦 岸谷 和広 水越 康介 栗木 契
出版者
流通科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

電子書籍産業におけるイノベーション普及やビジネス成否に関して、マーケティングの観点から重要な要素として以下の3点を導出した。第一に、消費者が電子書籍を利用することを促進するために「インターネット・リテラシー」(操作能力や他者との交流能力、リスク理解能力など)を考慮したサービス設計が求められることである。第二に、関係性マーケティングの観点からのビジネス設計の必要性である。第三に、戦略の「計画」ではなく「実践」を重視する「エフェクチュエーション」の観点の重要性である。
著者
桑田 耕太郎 松嶋 登 高橋 勅徳 山田 仁一郎 水越 康介 山口 みどり 入江 信一郎
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究テーマである「制度的起業」とは、単に制度的環境を与件としてそれに組織が適応するとする議論を越えて、企業が既存の制度に埋め込まれながら新たな制度を創造する側面を持っていることに注目した概念枠組みである。本研究では、こうしたダイナミックな制度的実践の側面に注目しつつ、制度変革のマネジメントについて明らかにした。
著者
石井 淳蔵 嶋口 充輝 栗木 契 西川 英彦 松井 剛 村下 訓 水越 康介 岸谷 和広 清水 信年 宮内 美穂 金 雲鎬 棚橋 豪 小田部 正明 山本 奈央 吉田 満梨
出版者
流通科学大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、マーケティング競争下におけるデザイン戦略の重要性について、近年注目されつつある「ロバストデザイン」を核概念として、理論的・歴史的・実証的な研究が実施された。その主要な研究成果として、デザイン概念についての再構築が行われるとともに、競争優位性をもつデザイン戦略の現実と意義、そしてその背景としてのマーケティング競争のメカニズムが明らかにされた。