著者
宮本 直 伊藤 和憲 越智 秀樹 山田 充彦 大橋 鈴世 糸井 恵
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.384-394, 2009 (Released:2010-01-20)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

【目的】変形性膝関節症 (以下、 膝OA) に伴う運動機能と痛みに対し、 鍼刺入深度の違いが及ぼす効果を検討した。 【対象】膝OAと診断された患者のうち研究条件に適合した患者26名。 【方法】コンピュータによりA) 浅刺群 (3mm前後の刺入)、 B) 深刺群 (10~20mm刺入) の2群に分類し、 下肢の圧痛点10ケ所に対して10分間の置鍼を行った。 【評価】膝痛の主観的な評価としてvisual analogue scale (VAS) を、 運動機能の客観的な評価としてTimed Up & Go test、 20m歩行時間、 階段昇降時間を、 膝OAのQOL評価としてWestern Ontario and MacMaster Universities osteoarthritis index (WOMAC) をそれぞれ4週ごとに計4回記録した。 【結果】痛みの程度は両群ともに治療前と比較して有意に改善したが (p<0.05)、 客観的な運動機能はすべての測定項目において、 治療前と比較して浅刺群のみ有意に改善した (p<0.05)。 【結語】浅刺は痛みと運動機能を改善しQOL向上に寄与したことから、 膝OAの症状に対する、 より効果的な治療方法である可能性が示唆された。
著者
根本 玲 相良 亜木子 沢田 光思郎 杉山 庸一郎 櫻井 桃子 川上 愛加 大橋 鈴世 三上 靖夫
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.69-76, 2020-04-30 (Released:2020-08-31)
参考文献数
23

【目的】皮膚筋炎に伴う重度の摂食嚥下障害は,回復まで長期間を要するとされている.さらに間質性肺炎と縦隔気腫を伴うと,治療はより困難になる.われわれは皮膚筋炎に間質性肺炎と縦隔気腫を合併し,重度の摂食嚥下障害をきたした症例に対し,リハビリテーション治療を行い良好な経過を得た.本症例で実施した摂食嚥下リハビリテーション治療の工夫と経過について報告する.【症例】69 歳男性.四肢の関節部痛と筋力低下,嚥下困難感を訴え,皮膚筋炎と診断された.間質性肺炎を併発し,プレドニゾロン,免疫抑制剤による薬物療法が開始されたが,嚥下困難感が増悪したため,リハビリテーション科に紹介された.嚥下造影検査では咽頭収縮は不良で,嚥下内視鏡検査(以下VE)ではとろみ水(段階1 よりうすいとろみ),ゼリー(コード0j)で誤嚥,喉頭蓋谷残留を認めた.摂食嚥下障害臨床的重症度分類2,藤島グレード2 であった.摂取エネルギー維持目的に経管栄養を開始した.過用による皮膚筋炎増悪防止のため頭部挙上運動などの間接訓練は実施せず,とろみ水(段階1)とゼリー(コード0j)の複数回嚥下による直接訓練を開始した.2 週間後,胸部CTで縦隔気腫と診断された.直接訓練では,縦隔気腫の増悪や縦隔炎の予防目的にゼリーを中止したが,摂食嚥下機能向上を目的にとろみ水(段階1)のみ継続した.疲労感,とろみ水摂取量,血清CK値,VE所見から摂食嚥下機能を総合的に評価し,食形態を段階的に変更した.12 週で,摂食嚥下障害臨床的重症度分類6,藤島グレード7 に改善し,1 日3 食の嚥下調整食(コード4)の摂取が可能となった.13 週目,亜急性期病院に転院した.【結論】皮膚筋炎に間質性肺炎と縦隔気腫を合併し,重度の摂食嚥下障害をきたした症例に対してリハビリテーション治療を行った.皮膚筋炎の過用に注意して経鼻経管による栄養管理を行い,縦隔気腫を増悪させないために間接・直接訓練を工夫することで,摂食嚥下機能の向上が得られた.