著者
辻 誠一郎 南木 睦彦 大沢 進
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.279-296, 1984
被引用文献数
5 13

相模地域の後期更新世の大型植物化石・花粉化石群集を記載し, 植物群と植生, および古環境を論じた.<br>植物分類・地理学上注目すべきイワヒバ・カラマツ・トウヒ各属の大型植物化石の形態を記載した. このうちトウヒ属は, トウヒ, ヒメバラモミの2種とトウヒ属A・B・Cの3型に分けられた.<br>主に, スギおよびヒメバラモミからなる冷温帯針葉樹林が約9万-6万年前に優勢であった. これは上部冷温帯の年降水量の多い湿潤な気候を示す. 約6万-5.5万年前の三崎海進を通じての植生は, 冷温帯のナラ類林の拡大によって区別される. これは年降水量の少ない比較的温暖な気候を示す. 約5.5万-5万年前の主にヒメバラモミとカラマツ属からなる亜寒帯ないし冷温帯針葉樹林は, 関東地方で従来知るかぎり後期更新世における最初の寒冷気候を示す. この時代は立山で確認された室堂氷期にあたる. 亜寒帯針葉樹林と冷温帯落葉広葉樹林の間の移行的な混交林が約1.6万-1.3万年前に優勢であった. このような森林は更新世末期の南関東に分布拡大していたと思われる. この時代の富士山東麓における亜寒帯針葉樹林の下降は1,000m以上であった.<br>(地名)<br>Eda 荏田<br>Ekoda, Egota 江古田<br>Iseyamabe 伊勢山辺<br>Kyuden 給田<br>Nippa 新羽<br>Rengeji 蓮花寺<br>Shijuhasse River 四十八瀬川<br>(地層名)<br>Kissawa L. 吉沢ローム層<br>Younger L. 新期ローム層<br>Anjin Pumice 安針軽石