著者
前田 益孝 椎貝 達夫
出版者
社団法人 日本腎臓学会
雑誌
日本腎臓学会誌 (ISSN:03852385)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.821-827, 2005-10-25 (Released:2010-05-18)
参考文献数
18

Blood ionized calcium (iCa) fraction is affected by the serum albumin (Alb) level, even though this effect might not be appropriately estimated by the formulae proposed previously. To clarify a reasonable regimen for predicting iCa from serum total Ca (tCa), we investigated the relationship of blood iCa, tCa, and serum Alb levels through 124 samples from 116 non-dialysis patients requiring iCa measurement at the Nephrology Section of Toride Kyodo General Hospital. The patients comprised 61 males and 55 females with the mean age of 66.9±1.4 years, including 9 cases of hypercalcemia, 110 of normocalcemia, and 5 of hypocalcemia based on their iCa levels. Their background diseases were 25 cases of chronic glomerulonephritis, 17 of nephrotic syndrome, 40 of diabetes mellitus, 4 of collagen diseases, and 30 of others. Their mean serum Cr was 2.44±0.21mg/dl, and 77 patients showed elevated Cr levels.Four adjustment formulae: one derived from Payne's, two from the proposal of K/DOQI Clinical Practice Guidelines, and a theoretical one based on the previous in vitro experiments, were compared with the non-adjusted value (tCa itself) with respect to their suitability for estimating iCa. The correlation coefficient of tCa with iCa was higher than the values adjusted by the above four formulae. The difference of iCa from tCa divided by eight, which concisely predicted iCa based on the assumption that half the serum Ca is bound to protein, was less than 1/8th of the other adjusted Ca levels. Hence none of the adjusted Ca by the above formulae was superior to non-adjusted tCa from the point of estimating the iCa level. Moreover, the sensitivity for predicting hypocalcemia was the highest in tCa, even though its specificity was lower than the other adjusted values.In conclusion, no adjustment formula is required to predict ionized Ca from tCa, and to screen hypo-or hypercalcemia.
著者
椎貝 達夫 前田 益孝 小林 隆彦 棚瀬 健仁 小林 君枝
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.928-932, 2003-03-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

慢性腎疾患 (CKD) の進行抑制に低たんぱく食 (LPD) は不要という説がある。しかしCKDのうちの非糖尿病性腎症 (NDN) を対象としたLPDのランダム化比較試, 験 (RCT) についてのメタアナリシス (MA) 3篇では, いずれのMAでもLPDは「進行抑制に有用」と結論されている。他領域でも行われているような, RCT一つ一つの質を評価し, 質の高いものだけのMAを行えば, LPDの有用性はさらに高まると思われる。一歩退いて進行抑制にLPDが無効の場合を考えてみよう。WHO/FAOが疾病予防の観点から30年前に発表した一般人の食事についての勧告では, 推奨される1日たんぱく摂取量 (DPI) はたんぱく0.8g/kg/dayであった。しかし先進国では国民のDPIはどの国でも1.1~1.3g/kg/dayである。CKDに対し食生活に何の規制も加えなければ, この一般人のたんぱく摂取量になってしまうだろう。一般人より心血管系リスクがはるかに高いNDN・CKD例がたんぱく制限なしで良いとは到底考えられない。つまりどのような立場であってもDPIのモニタリングをキチンと行い, DPIO.89/kg/day, あるいはDPI0.6g/kg/dayになるような指導を行い, その条件下に降圧療法, レニン・アンジオテンシン系抑制, アシドーシス補正, 腎性貧血の治療などの総合的な進行抑制療法を行うべきだろう。
著者
平間 好弘 沼崎 誠 吉田 公代 鶴岡 信 新谷 周三 椎貝 達夫
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.233, 2007

目的 取手市など、5市1村で構成する「取手・龍ヶ崎医療圏」の基幹病院となっている当院では、災害現場での救急隊・現場救護所および病院での多数傷病者対応の想定訓練を通じて、地域の災害医療にかかわる各部門の問題点を抽出し、実際の発災時の初期対応の改善を目的に3病院合同災害医療訓練を実施したので報告する。<BR>方法 災害医療の原点は、12年前の阪神淡路大震災である。以後、厚生労働省の指導で全国に災害拠点病院が設置され、当院も平成14年4月に茨城県災害拠点病院に指定された。<BR> 平成17年4月、当地区を管轄する龍ヶ崎保健所は、医療圏内の災害発生時における広域医療の中心病院として、取手地区は取手協同病院、龍ヶ崎地区は龍ヶ崎済生会病院、阿見地区は東京医大霞ヶ浦病院の3病院を指定した。<BR> この3病院を中心に、医療圏内にある医療・消防・保健機関が合同し、取手龍ヶ崎医療圏災害医療協議会を結成し、3回の準備会と災害医療講演、机上訓練などを含め7回の会合を開催し、昨年(平成18年)の9月23日に災害医療訓練を実施した。<BR> 訓練には、3病院の他に医師会や保健所、保健センター、取手市消防本部、稲敷地方広域消防本部、阿見町消防本部などから150名が参加した。<BR> 訓練内容は、取手市を横断するJR常盤線下り線踏み切り内で、立ち往生したダンプカーに列車が追突、先頭車両が脱線転覆し、30人の重軽傷者が出たと想定し訓練を行った。<BR>結果 救助活動は、事故現場近くのガス会社敷地内に現地本部と救護所を設置。救護所では、消防本部から要請を受けたDMAT(Disaster Medical Assistant Team)がトリアージを行い、4台の救急車などで対策本部のある当院へ負傷者を搬送した。<BR>3病院を想定したブース内では、長いすを利用した仮ベッドで苦しがる重軽傷者を医師や看護師が対応すると同時に、重症患者に対しては県の防災ヘリによる他病院への搬送訓練も実施した。<BR>結語 同じ医療圏内にある複数の病院が合同して訓練を行なうことは、全国的にも珍しく高い評価を得た。今後も、実際の災害場面での協力体制・合同対応を円滑に進めるため、定期的に訓練を実施したい。
著者
椎貝 達夫 桑名 仁 神田 英一郎 前田 益孝
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日農医学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.114, 2005

<B>目的</B>:進行性腎不全(PRF)の治療は世界の腎不全対策を考えるとき、きわめて重要である。前医での腎不全進行速度がわかっているPRF60例について治療成績をまとめた。<BR><B>方法</B>:対象は前医での進行速度がScrの経時的変化からわかっている60例のPRFで、男42人、女18人、年齢58.2±14.7歳、原疾患は多発性のう胞腎以外の非糖尿病性腎症(NDN)57例、糖尿病性腎症3例である。<BR> 当院診療開始時のScr3.60±1.80mg/dl、Ccr26.3±16.0ml/minで、前医と当院での進行速度をScr<SUP>-1</SUP>・時間(月)勾配で求め比較した。当院の診療は24時間蓄尿による食事内容モニタリング、各種データの腎臓病手帳への記入・説明、家庭血圧測定によりプログラム化されている。<BR><B>結果</B>:図は60例のPRFの当院受診前と受診後の速度のちがいを示している。一番左は前に較べて進行速度が80%以上遅くなったグループで、31人(51.7%)がこのグループに属した。中央は進行速度の減少が前に較べて79%未満に止まったグループで、21人(35%)だった。一番右は当院受診後進行速度が前よりかえって速くなったグループで8人(13.3%)だった。<BR> 全体として、前医での治療が続けられていた場合、透析導入まで平均78.2か月を要するが、当院での治療で187.0か月となり、腎臓の寿命が2.4倍延長される。<BR><B>結論</B>:60例のPRFを対象とした交差法による検討で、従来の治療に比べ、腎臓寿命が全体として2.4倍延長された。今後当院が行っている治療法の全国への普及が必要である。