著者
大河内 正一 石原 義正 稲葉 慎 上平 恒
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.1215-1218, 1994-08-01 (Released:2008-02-14)
参考文献数
13
被引用文献数
4 5

The line width (full width at half maximum intenslty) of 170 nuclear magnetic resonance signals and the spin-lattice relaxation time, T1, of aged commerclal distilled spirits and aqueous ethanol solutions were measured at 298K. The values of T1 for the 17O nucleus of water (which reflects the mobility of the water molecule) in both kinds of preparations did not change over the pH range of 2 to 13, but the line width broadened at pH from 5 to 9, as did that of pure water. That the broadenlng, whlch reached about 1OO Hz at pH7.0, depended on pH seemed to be due to changes in the exchange rates of protons. The T1s of the aged commercial splrits and the ethanol solutions of the same concentration were almost the same. Therefore, when the line width of the 170-NMR signal is to be used as an index of the aging of spirits, it must be taken into account that the width depends on the pH of the materials.
著者
土屋 正彦 栗田 繕彰 深谷 晴彦 大河内 正一
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1087-1093, 2013-12-05 (Released:2013-12-28)
参考文献数
24

水は種々の特異性をもつことが知られており,液体中にもクラスターが存在することが推定されているが,その大きさやサイズ分布は確認されていない.液体イオン化質量分析法は液体表面及び気相中のクラスターを区別して測定できるので,室温(23~25℃),大気圧下での水のクラスター(H2O)nの測定,解析を行った.液体表面には,水の分子数nが30前後までのクラスターが連続的に存在し,その水分子数の平均値(N)は15~17であった.気相中にもクラスターが存在するが,液体表面よりは小さくなり,液面から遠ざかるほどクラスターは分解して小さくなる.これはArガスが逆方向に流れているので,単位空間中の水の絶対量が減るためである.試料流量を増加すると,イオン量は若干減るが相対的に大きなクラスターが少し増える.また,第2質量分析計(Q3)でさらに大きなクラスター(N=27)が観測された.クラスターは水素結合により生成するので,大気圧下では水はクラスターとして蒸発し,水量が多くなれば湯気や霧のような水分子の集合体になり,減れば分解すると考えられる.このクラスターの存在が水の特異性の主な原因の一つといえよう.