著者
増田 弘 佐藤 晋 加藤 陽子 加藤 聖文 浜井 和史 永島 広紀 大澤 武司 竹野 学
出版者
東洋英和女学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

平成21年度から23年度に至る3力年の研究の具体的成果は、本年9月に慶応義塾大学出版会より刊行が予定されている増田弘編『大日本帝国の崩壊と復員・引揚』にある。本書は、日本が第二次世界大戦に敗北したことで生じた帝国日本の崩壊過程に関して、外地からの民間人引揚と外地に在った日本軍将兵の復員という視座に立った実証研究であると同時に、東アジアにおける冷戦という新局面との歴史的接合点を解明しようとする試論である。
著者
大澤 武司
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

初年度となる平成19年度は、大学院における研究を発展させる基礎を構築すべく、研究の基礎史料となる中華人民共和国外後部档案(公文書)の完全なる調査・収集を目指した。この点については、平成19年8月19日から9月8日までの約3週間、中国北京の中国外交部档案館における調を実施し、その目的をほぼ遂げることができた。また、この期間をはさみ、同年8月から10月までの3ケ月間は、北京大学歴史系客員研究員(受入研究者歴史系主任牛大勇教授)としても研究交流活動を行った。なお、本年度は具体的な研究課題として、(1)戦後初期中国の外交を主宰すると共に、中国の対日「戦犯」処理を指揮した周恩来の日本人「戦犯」認識を明らかにする研究、(2)中国残留日本人の残留過程を実証的に解明する研究、(3)中国の対日「戦犯」処理政策の要ともいえる「一個不殺(一人も処刑しない)」方針の確立過程を解明する研究という三つのテーマを掲げ、いずれも成果があった。まず(1)については、「幻の日本人『戦犯』釈放計画と周恩来」において、周恩来が日本人「戦犯」を外交カードとして認識していたことを中国側公文書に依拠して明らかにした。なお、(1)については、中国の対日「戦犯」処理政策をより詳細に扱った「対日戦犯処理政策与周恩来--相関『領導』的実際情況」を平成20年に中国で公共予定である。次に(2)であるが、まず終戦直後の前期集団引揚について「戦後東アジア地域秩序の再編と中国残留日本人の発生」を公表した。これは総司令部主導の中国地域からの日本人の引揚過程を一次史料に依拠して体系的に解明した成果である。また、(2)については、平成20年に「『ヒト』の移動と国家の論理」(東大出版会より出版予定)という後期集団引揚に関する体系的研究成果も公表予定である。最後に(3)についてだが、前掲の中国語論文「対日戦犯処理政策与周恩来--相関『領導』的実際情況」が一部このテーマに関連しており、これは平成20年度中に日本国内でも公表する予定である。
著者
大澤 武司
出版者
熊本学園大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、近年公開が進む中華人民共和国外交部档案(公文書)の体系的な調査・収集を行い、人道を大義名分として行われた日中間における民間経由の戦後処理、すなわち「戦後日中民間人道外交」に込められた建国初期中国の冷戦外交戦略の一端を明らかにしたものである。従来、「戦後日中民間人道外交」は戦後日中友好運動史の文脈において肯定的に語られることが多かったが、本研究はかかる評価の描き直しを試みるものである。