著者
東 和之 大田 直友 河井 崇 山本 龍兵 丸岡 篤史 橋本 温 上月 康則
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_1091-I_1096, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
16
被引用文献数
1

代償措置として創出された人工干潟と模倣した自然干潟においてマクロベントスの定量調査を行い,干潟中下部生態系を再現できているかを検討した.マクロベントスの個体数は,自然干潟の方が人工干潟を大きく上回っており,種数についても自然干潟の方が多い傾向であった.干潟へ流入してくる栄養塩や底生珪藻量も自然干潟の方が高く,自然干潟の豊富な生物量はこれらの栄養塩や一次生産に支えられているようであった.両干潟の決定的な違いは,ホソウミニナの有無であったが,直達発生により分散能力が乏しいため,人工干潟にはほとんど加入していないこと,安定した自然干潟では爆発的な増加力を発揮していることが示唆された.以上のように,造成から約5年が経過した人工干潟であるが,潮間帯中下部の干潟生態系は模倣した干潟とは全く異なっていた.
著者
鈴木 重雄 正本 英紀 井坂 利章 古川 順啓 東 彰一 大田 直友 鎌田 磨人
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-10, 2010-06-30 (Released:2012-02-14)
参考文献数
23
被引用文献数
3 5

モウソウチク(Phyllostachys pubescens Mazel ex Houzeau de Lehaie)を中心とする竹林の拡大が全国各地で報告され,社会的な問題となっている.竹林拡大を抑止するためには,竹林所有者のみならず市民参加を促し,協働の枠組みを構築しながら継続性を担保できる計画を策定することが肝要である.本研究では,産民学官からなる協議会「みなみから届ける環づくり会議」が,徳島県阿南市において,竹林の拡大抑制に取り組むにあたり,その活動方針決定にいかすために行った竹林所有者と地域住民を対象とした意識調査を通じて,竹林所有者と地域住民の竹林に対する認識とニーズを明らかにした.その結果,たけのこ生産が盛んであった当地域では,竹林はたけのこ生産の場であると強く認識がされていた.一方,主に竹林所有者にしか竹林の拡大は認識されておらず,竹林を所有していない住民との間で認識に差異があった.また,竹林は所有者の資産であるという考え方が強く,地域全体の問題として竹林拡大抑制策に取り組もうとする意識は低かった.これらのことから,本地域では,竹林の拡大に係る課題を地域内で共有する努力を行って,所有者と地域住民の双方が現状を認識し,合意形成を図る必要がある.
著者
渡辺 雅子 大塚 弘之 上月 康則 大田 直友 河井 崇 萬宮 竜典 岡田 直也 中野 晋
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_1233-I_1237, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
10
被引用文献数
5

希少種ルイスハンミョウの生息環境を代償する目的で,徳島県沖洲に人工海浜が造成された.ルイスハンミョウは海浜生態系の高次捕食者であるため,生息場所の物理的環境条件の模倣だけでなく,餌生物を含む海浜の食物連鎖の再現も目標とされた.人工海浜の概成後,2007-2010年におけるルイスハンミョウ出現数は年々増加しており,本ミチゲーション事業はその目的を達成したといえる.一方,希少種の保全と海浜の利活用を両立するためには,その主体となる地域住民とともに利活用のあり方を検討する必要がある.そこで,多様なステークホルダーによるワークショップが開催され,規制ルールが検討された.その結果,幼虫の生息環境保全のために人を対象とした侵入防止柵が設置され,また,環境維持におけるその有効性が検証された.このことから,協働による海浜の維持管理体制の構築の重要性が示唆された.
著者
大田 直友 渡慶次 陸範
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus : journal of the Malacological Society of Japan (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.261-271, 2002-01-31
被引用文献数
1

転石潮間帯にすむ同属の肉食性貝類イソニナ・シマベッコウバイの個体群特性について, コドラートによる定量調査を行い, その時空間的変化を明らかにした。2種は類似の生活史をもち, 1994年7月から1995年10月にかけて安定的な密度で存在した。世代解析により両種は少なくとも4年間生きることが推察され, 安定的に個体群の加入が続いていた。新規加入個体は, 8月に6 mm程度の採集可能サイズになり, 暖かい季節により多くの成長が観察された。イソニナは1年で11 mm, 2年目に17 mm, 3年目には22 mmに, 一方, シマベッコウバイは1年で13 mm, 2年目に20 mm, 3年目には26.5 mmに成長すると推察された。小型個体の加入と産卵は垂直分布の中部に多くみられ, 成長に伴い分布域が高・低潮位に, とくに低潮位域に広がっていった。また, 分布パターンの解析から, 垂直分布の端の部分ではより集中した分布がみられた。