著者
中野 晋 小野 悟 冨永 数男 村上 仁士
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1331-1335, 2005

2004年9月5日に発生した紀伊半島沖地震, 東海道沖地震の2回の地震の際の自治体の対応状況をまとめた. 徳島県では概ね震度3, 高知県東部では震度2程度, 来襲した津波高も室戸港で最大0.5m程度であり, 被害は発生していない. しかし, 職員の非常参集体制, 情報収集と伝達方法, 海面監視の方法などの点で検討すべき事項が見出された. これを契機に複数の自治体で津波注意報発令時の配備動員体制を再検討するなど津波防災体制の見直しが行われつつある.
著者
中野 晋 湯浅 成昭 粕淵 義郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_118-I_123, 2012 (Released:2013-01-30)
参考文献数
10
被引用文献数
1

東日本大震災では岩手,宮城,福島3県で園児・児童・生徒553名が亡くなったが,大川小学校などの事例を除くと引き渡し後に自宅や帰宅途中で犠牲になった子供たちが多いと伝えられている.一方,学校施設は災害直後から避難所として利用され,多くの教職員が避難所の開設・運営,さらに被災した学校の復旧や代替施設での学校再開など平常とは異なる膨大な業務の上に,児童・生徒のメンタルケアにも心を砕く必要があった.こうした教育機関での災害対応上の課題を整理し,これらの教訓から教育機関の防災管理のあり方について述べる.これを踏まえて徳島県でまとめた学校防災管理マニュアルガイドラインとこれの普及方法について報告する.
著者
高西 春二 中野 晋 宇野 宏司 仁志 裕太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_130-I_137, 2012 (Released:2013-01-30)
参考文献数
7
被引用文献数
3

近年では,2004年および2011年の新潟・福島豪雨災害,2009年の佐用町豪雨災害,2011年の台風12号による紀伊半島豪雨災害などによる甚大な被害が発生している.これら洪水では,家屋・人的被害に加えて,各種事業所や病院,公共施設,ライフライン等が浸水のために大きな経済被害を被っている.そこで本研究では,沿川に立地しているために洪水被害を受けやすく他事業の復旧期間に大きく影響する『水道事業』に着目し,被災事例を調査した.浸水被害が水道事業者にもたらす影響と課題について考察するとともに,BCPの必要性と水道事業者が想定すべき事前対策等について提案する.
著者
渡辺 雅子 大塚 弘之 上月 康則 大田 直友 河井 崇 萬宮 竜典 岡田 直也 中野 晋
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_1233-I_1237, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
10
被引用文献数
5

希少種ルイスハンミョウの生息環境を代償する目的で,徳島県沖洲に人工海浜が造成された.ルイスハンミョウは海浜生態系の高次捕食者であるため,生息場所の物理的環境条件の模倣だけでなく,餌生物を含む海浜の食物連鎖の再現も目標とされた.人工海浜の概成後,2007-2010年におけるルイスハンミョウ出現数は年々増加しており,本ミチゲーション事業はその目的を達成したといえる.一方,希少種の保全と海浜の利活用を両立するためには,その主体となる地域住民とともに利活用のあり方を検討する必要がある.そこで,多様なステークホルダーによるワークショップが開催され,規制ルールが検討された.その結果,幼虫の生息環境保全のために人を対象とした侵入防止柵が設置され,また,環境維持におけるその有効性が検証された.このことから,協働による海浜の維持管理体制の構築の重要性が示唆された.
著者
湯浅 恭史 中野 晋 岡野 将希
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_217-I_226, 2019 (Released:2020-03-12)
参考文献数
6

平成27年9月関東・東北豪雨及び平成30年7月豪雨では,河川の氾濫や堤防の決壊などにより深刻な浸水被害が発生し,地域の医療機関も被災する事態となった.被災した病院では診療機能が制限され,入院患者を他の病院に転院させざるを得ないケースがあった.被災地域の復旧・復興のためには,住民が安心して暮らすために地域医療の早期再開が望まれるが,被災病院によっては診療再開に長期を要することがあり,医療機関の浸水リスクへの対応は地域医療の継続を考える上での課題となっている. 本研究では,徳島県内の医療機関を対象として,自然災害への防災対策の実施状況についてアンケート調査を行った.調査結果から浸水災害を対象とした避難訓練やBCP策定などの対策が進んでいないことがわかった.豪雨災害で浸水被害のあった病院に対し,初動対応から事業再開の対応についてヒアリング調査を行った.これらの結果から,浸水被害を受けた際の早期復旧を実現するために取り組むべき対策や考え方について考察した.
著者
金井 純子 中野 晋
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_131-I_136, 2018 (Released:2019-02-19)
参考文献数
20

本研究は2016年熊本地震における福祉避難所の運営状況について調査し,福祉避難所の運営上の課題について分析した.福祉避難所を開設した熊本県益城町の2つの特別養護老人ホームを対象に,避難者及び避難者に対する支援者の数がどのように変化したかを聞き取りと質問票によって調査した.地震発生から1週間の間,両施設では大きな混乱が生じた.その要因は被災によって出勤できる職員が少なかったことと多くの一般避難者を受け入れたことであった.このような混乱を避けるためには,BCPの中に福祉避難所の開設手順を加えることが必要である.
著者
中野 晋 蒋 景彩 上月 康則
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
河川技術論文集 (ISSN:24366714)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.397-402, 2022 (Released:2022-09-01)
参考文献数
10

令和3年7月に熱海市の逢初川源頭部で大規模盛土が崩壊し,深刻な土石流災害が発生した.逢初川源頭部付近で複数行われた地形改変に注目し,これらの地形改変が流出過程に及ぼした影響について数値解析により検討した.地形改変前と後の地形データを用いて令和3年7月豪雨時の雨水流出過程を計算し,逢初川源頭部付近の断面通過水量の比較を行った.その結果,尾根部を削って谷を埋めるなどの宅地造成に伴う地形改変の結果,北側を流れる鳴沢川流域から多量の雨水が逢初川側に流入し,盛土末端部では地形改変前の4倍に達する表流水が通過した可能性があることが明らかとなった.
著者
加藤 駿平 金井 純子 中野 晋 湯浅 恭史 徳永 雅彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.I_131-I_139, 2020

<p> 平成30年7月豪雨では広島県の沼田川流域で堤防からの溢水や決壊が生じ,三原市内の複数の高齢者施設で浸水被害が発生した.そこで,被災した3施設を対象に被害状況,水害発生時の避難行動,被災後の業務再開状況等について聞き取り調査を実施した.また,聞き取り調査から得られた浸水過程や避難行動を確認し,詳細分析を行うため,各施設周辺の浸水痕跡調査及び沼田川流域を対象とした河川氾濫数値解析も実施した.浸水エリア内の微高地に立地する施設では臨時の避難場所の役割を果たしたが,避難者との連携が課題となった.深刻な床上浸水被害を受けた施設では緊急時の職員参集体制,近隣の支援者の確保など,水害を想定した具体的な避難計画の作成が急務であることが明らかとなった.また,災害休業時における雇用対策も事業継続上重要な課題であることがわかった.</p>
著者
金井 純子 中野 晋 山城 新吾 三上 卓
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.I_211-I_218, 2020
被引用文献数
2

<p> 令和元年東日本台風では越辺川右岸0.0k付近の堤防決壊により,近くの高齢者施設(1法人2施設)や障害者施設(1法人6施設)が甚大な被害を受けた.被災した2法人を対象に,被害状況,避難行動,避難確保計画,被災後の業務再開状況等についてインタビュー調査を行った.また,浸水痕跡調査を実施した上で,破堤に伴う川越市内の氾濫進展状況を数値シミュレーションにより再現し,証言内容の検証を行った.高齢者施設と障害者施設の利用者の身体的特性や,避難方法,避難生活などの情報を施設特性に注目して整理し,施設特性を踏まえた避難確保計画と長期避難を想定した業務継続計画を検討しておくことの重要性について明らかにした.</p>
著者
中野 晋 内田 剛 石ヶ森 勲 菅原 敏 新田 慶治
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.64, no.617, pp.107-114, 1998-01-25
参考文献数
9

It is necessary to develop a small positive pressure control system for the closed ecology experiment facilities because of the needs to prevent contamination from the atmosphere and to protect against over differential pressure loading. In the present study, a numerical analysis method was developed to calculate the quantity of state of the closed module which is fitted with rubber buffers for the small positive pressure control system. Experiments to examine the pressure change of the closed module caused by rapid temperature control of an air conditioner were carried out at Biosphere-J. Comparison of calculated and experimental results showed that the present dynamic simulation is suited to estimating the quantity of state of the closed module.
著者
湯浅 恭史 中野 晋 岡野 将希
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_217-I_226, 2019

<p> 平成27年9月関東・東北豪雨及び平成30年7月豪雨では,河川の氾濫や堤防の決壊などにより深刻な浸水被害が発生し,地域の医療機関も被災する事態となった.被災した病院では診療機能が制限され,入院患者を他の病院に転院させざるを得ないケースがあった.被災地域の復旧・復興のためには,住民が安心して暮らすために地域医療の早期再開が望まれるが,被災病院によっては診療再開に長期を要することがあり,医療機関の浸水リスクへの対応は地域医療の継続を考える上での課題となっている.</p><p> 本研究では,徳島県内の医療機関を対象として,自然災害への防災対策の実施状況についてアンケート調査を行った.調査結果から浸水災害を対象とした避難訓練やBCP策定などの対策が進んでいないことがわかった.豪雨災害で浸水被害のあった病院に対し,初動対応から事業再開の対応についてヒアリング調査を行った.これらの結果から,浸水被害を受けた際の早期復旧を実現するために取り組むべき対策や考え方について考察した.</p>
著者
木村 剛士 中野 晋 天羽 誠二 白川 卓磨
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.296-300, 2007

Konaruto Channel in the position that links Kii Channel to Seto inland sea shows peculiar tide characteristics, but long-term observations on tide level have not been performed in this channel. Therefore an accurate storm surge prediction was impossible because a tide level prediction was not possible. We carried out tide level observations in three harbors of this channel for one year and obtained tidal harmonic constants. We performed storm surge simulationsu sing the obtainedh armonicc onstants and were able to get good reproductionr esults. Furthermore, as a result of the reproductive storm surge calculation of typhoon 16 in 2004w hen a large storm surge disaster occurred in Takamatsu City, it became clear that storm surge more than 2m above sea level occurred in the northern coast of Naruto City.
著者
木村 剛士 中野 晋 天羽 誠二 白川 卓磨
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.296-300, 2007 (Released:2010-06-04)
参考文献数
4

Konaruto Channel in the position that links Kii Channel to Seto inland sea shows peculiar tide characteristics, but long-term observations on tide level have not been performed in this channel. Therefore an accurate storm surge prediction was impossible because a tide level prediction was not possible. We carried out tide level observations in three harbors of this channel for one year and obtained tidal harmonic constants. We performed storm surge simulationsu sing the obtainedh armonicc onstants and were able to get good reproductionr esults. Furthermore, as a result of the reproductive storm surge calculation of typhoon 16 in 2004w hen a large storm surge disaster occurred in Takamatsu City, it became clear that storm surge more than 2m above sea level occurred in the northern coast of Naruto City.
著者
嶋田 宏 中野 晋
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_749-I_754, 2017

ミャンマーのエーヤワディ地域は,2008年のサイクロン・ナルギスにより,約14万人の犠牲者を出した.これを受け沿岸部の高潮被害を軽減するため,独)国際協力機構によるミャンマー自然災害早期警報システム構築プロジェクトが実施された.このプロジェクトの一つとして,パテイン川河口部に衛星を利用したリアルタイム潮位観測システムを導入し,別途実施されている高潮予測システムとを併せて精度の高い高潮予測を可能としている.しかしながら,広範囲に入り組んだデルタ地帯の沿岸各地での高潮警報を住民に伝えるためには,更なる潮位計の設置により水位の変動を把握することが必要である.そのため筆者らは安価な簡易潮位計を設置し,短期間観測での調和分析に加え,観測潮位と月別降水量等との相関が高いことを検証することにより,乾季と雨季の水位変動を考慮した潮位推算を可能とした.
著者
嶋田 宏 中野 晋 村田 進 丹羽 竜也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_125-I_130, 2015
被引用文献数
1

ミャンマー沿岸部では2008年5月に深刻な高潮被害を受け,約14万人の犠牲者を出した.これを受け沿岸部デルタ地帯の高潮被害を軽減するため,JICAによる自然災害早期警報システム構築プロジェクト<sup>1)</sup>(JICAプロジェクト)が実施されている.広範囲で入り組んだ沿岸各地に精度の高い高潮警報を住民に伝えるためには,ミャンマー国(麺国)の技術者が自立的に各地の潮位特性を分析できる技術を身につけることが重要である.筆者らはリボンテープを用いた簡易潮位計を用い短期間の観測から潮位推算を行ない,これらの手法を防災安全教育の一環として麺国の実情に合わせた継続的な展開が可能な基礎的観測技術の移転を行った.
著者
齊藤 剛彦 三神 厚 中野 晋
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.I_861-I_871, 2013

著者らはこれまで南海地震の揺れの体験談を多数集めて,震源特性の推定を行ってきた.その際,常に問題となるのが体験談の解釈の不確実性の問題であった.本研究は,南海地震と同じく海溝型巨大地震である東北地方太平洋沖地震の強震観測記録とそれから推測される揺れの体感,さらに実際の体験談を併せて用いることで,昭和南海地震の体験談の解釈の方法について検討を行うものである.例えば昭和南海地震では「揺れが水平動から上下動に変化した」や「揺れが段々激しくなった」という体験談が複数得られ,著者らは多重震源理論に基づき解釈を試みていた.今回,東北地方太平洋沖地震で得られた強震記録を用いて標準的な体感を表す振動レベルを算出したところ,水平動から上下動への変化や揺れが段々激しくなったと体感したと思われる強震記録が複数の観測点で得られていることが明らかになり,これまで著者らが行ってきた体験談の解釈法がある程度確からしいことが確認された.
著者
宇野 宏司 中野 晋 粕淵 義郎
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_23-I_28, 2011

南九州・霧島連山の新燃岳(標高1,421m)では,平成23年1月に52年ぶりの爆発的噴火が起き,宮崎・鹿児島両県で降灰や噴石による被害が報告された.先行きの見えない噴火活動が住民の生活や企業活動に与える影響は大きく,また長期化することが懸念される.本研究では,各種公表資料,自治体や企業でのヒアリング調査結果をもとに,本災害による事業所や自治体の被災状況と当時の対応,今後の対策について整理し,長期化する恐れのある火山災害時における企業の事業継続に必要な観点について整理した.<br> 突発的な今回の火山噴火は,当該地域の火山災害に対する防災体制の不備な点を明らかにした.今後,火山災害の影響を受けない地域をも含めたより広域的な連携関係を構築しておくことや,風評被害を防ぐための復旧過程での積極的な報道の利用等が重要であると考えられる.
著者
天羽 誠二 中野 晋 木村 剛士 津川 茂
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
水工学論文集 (ISSN:09167374)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1393-1398, 2008

We investigated the real-time forecast system of a storm surge to reduce its disaster. Typhoon properties such as central atmospheric pressure were forecasted before several hours by two methods. The one is forecasting by using neural network technique based on the past typhoon data and the other is utilization of typhoon forecast information by the Meteorological Agency. As a result of the comparison of both methods, it was found that the latter gave more correct forecast of typhoon properties. Based on the forecasting values of typhoon, we carried out the real-time forecasting of a storm surge and examined the practical utility of this system.