著者
伊藤 壽一 西村 幸司 扇田 秀章 大西 弘恵 山本 典生 田浦 晶子 松本 昌宏
出版者
滋賀県立総合病院(研究所)
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2020-04-01

難聴は人口の高齢化に伴い、認知症との関連もあり、世界的な大問題となっている。しかし、内耳感覚細胞、ラセン神経節細胞の障害に起因する「感音難聴」は薬物治療は不可で、補聴器、人工内耳などの機器による聴覚補償が唯一の方法である。本研究では、再生医学を利用し、細胞移植による内耳細胞の再生と人工内耳の組み合わせで、難聴を克服させようとする計画である。特に移植細胞にはヒト人工多能性幹細胞を用い、人工内耳からの刺激には既存の電気刺激に加え、光ファイバーによる光刺激を用いることに新規性がある。
著者
吉松 誠芳 大西 弘恵 岸本 曜 大森 孝一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.125, no.8, pp.1281-1287, 2022-08-20 (Released:2022-09-01)
参考文献数
43

気管喉頭は硝子軟骨により枠組みを保持されており, 呼吸, 発声, 嚥下機能を担う重要な臓器である. しかし, 外傷や炎症性疾患・悪性腫瘍に対する手術などで軟骨が欠損した場合, 枠組みが維持できなくなり, その機能は大きく損なわれる. 硝子軟骨はそれ自体に再生能が乏しいため, 気管喉頭軟骨欠損に対して, これまで組織工学を応用したさまざまな軟骨再生方法の開発, 研究が行われてきた. 足場としては非吸収性足場素材や脱細胞組織が臨床応用されたが, 前者は枠組みの安定性は得られるものの, 大きさが不変であるため小児への適応が困難であり, 後者はドナーの確保や長期的な内腔保持困難が課題であった. 一方, 細胞移植 (+足場素材) による軟骨組織再生では, 軟骨細胞や間葉系幹細胞 (MSC) を用いた移植法が, 治験の段階ではあるが, 一部で臨床応用されている. しかし, 初代培養の軟骨細胞や MSC では培養時に生じる細胞の脱分化や増殖能の低下が課題として残っている. また, 近年, 無限増殖能・多分化能を有する iPS 細胞から軟骨細胞や MSC への分化誘導法が開発され, 特に膝関節領域においては臨床研究も実施されている. しかし, 気管喉頭領域における iPS 細胞由来細胞を用いた軟骨再生研究はいまだ少なく, 確立された方法はない. 今後, 細胞移植が確立されるためには, 必要な細胞を効率よく誘導したり, 必要な数だけ確保したりする, 細胞の動態をコントロールする技術が必要となる. 医工学分野の新しい技術を適切に応用し, 気管喉頭の安全かつ確実な軟骨再生方法が確立されることが期待される.
著者
中川 隆之 飯田 慶 喜多 知子 西村 幸司 大西 弘恵 山本 典生
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

哺乳類とは異なり、鳥類の聴覚器官である基底乳頭では、有毛細胞再生が自発的に誘導され、聴覚機能も再生される。鳥類とは異なり、哺乳類では有効性が期待できるレベルの聴覚機能再生は報告されていない。近年、鶏に関する遺伝子情報が充実し、網羅的遺伝子解析手法を用いて、これまで困難であった鳥類における有毛細胞再生に関連する遺伝子およびシグナルの詳細な分子生物学的解析が可能となった。鳥類における旺盛な有毛細胞再生機構を哺乳類における有毛細胞再生活性化に応用し、哺乳類蝸牛における有毛細胞再生効率を向上させ、新しい感音難聴治療薬開発につなげる。