著者
佐藤 宏樹 大西 鮎美 寺田 努 塚本 昌彦
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:21888760)
巻号頁・発行日
vol.2022-HCI-200, no.34, pp.1-7, 2022-11-01

人間の目は明るさの変化に対応して感度を調整し,その明るさに順応することで視覚機能を維持する.周囲が明るくなるときの順応を明順応,暗くなるときの順応を暗順応と呼ぶ.しかし,トンネルや建物への出入りのような急激に明るさが変化する場面では,明るさの変化に目の順応が追い付かず視力が低下し事故につながる恐れがある.そこで本研究では,明るさの急激な変化に対応するため,LED と遮光フィルムを用いて目に入る光の量を制御し,明順応と暗順応を支援するウェアラブルデバイスを提案する.提案デバイスは明順応を支援するために,周囲が明るくなる直前に LED の光を目に照射して明るさに目を慣れさせる機能と,明るくなると同時に遮光フィルムを用いて明るさの変化を緩やかにする機能をもつ.また,暗順応を支援するために,暗くなる直前に遮光フィルムで目を覆い暗さに目を慣れさせる機能をもつ.各機能による視力の低下を抑制する効果を評価した結果,LED を用いた明順応の支援では視力の低下を抑制できる可能性が示唆されたが,遮光フィルムを用いた明順応の支援については視力の低下を抑制する効果は確認できなかった.また,遮光フィルムを用いた暗順応の支援は LED を用いた明順応の支援と比べて視力の低下を抑制する効果が低いことがわかった.
著者
岩本 宗大 大西 鮎美 寺田 努 塚本 昌彦
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.1574-1582, 2022-10-15

フィールドホッケーは,スティックと硬球を使って行う世界的に人気のあるスポーツである.フィールドホッケーの動作の中で,チームメイトへのパスとして最も基本的で一般的に使われる動作のうちの1つにプッシュという動作がある.プッシュ動作中,スティックにボールが接触してからリリースされるまでスティックがボールと接触している距離が長いと強くて速いプッシュを打てる.しかし,初心者が自分でスティックの接触点を知覚することは難しい.本研究では,プッシュの技術向上のためにスティックにボールが接触する位置の移動経路をリアルタイムに聴覚フィードバックするシステムを提案する.提案システムは,圧力センサの接触位置に応じてピッチの異なるフィードバック音を圧電スピーカによりリアルタイムで発生させる.2カ月間行った評価実験の結果,スティック上のボールの移動経路の平均距離は,聴覚フィードバックを行ったほうが,行わなかった場合よりも有意に長くなった.これにより,提案システムによる聴覚フィードバックの有効性を確認した.
著者
中川 遼 大西 鮎美 吉田 さちね 寺田 努 塚本 昌彦
雑誌
マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.330-337, 2018-06-27

授乳中にスマートフォンを操作する母親がいるが,授乳中のスマートフォン操作により乳児がぐずりだしたという声もある.しかし,実際に授乳中のスマートフォン操作が乳児のぐずりを引き起こしているのかは現在調査されていない.授乳中のスマートフォン操作が乳児のぐずりを引き起こしていた場合,原因を明らかにし,その原因を取り払うことで,乳児のぐずりを引き起こすことなくスマートフォンを操作できる可能性がある.また,原因がスマートフォン操作でない場合,母親は罪悪感を感じることなく授乳中にスマートフォン操作をすることが可能となる.本論文では,実際に授乳中のスマートフォン操作により乳児のぐずりが引き起こされているのか,またその場合,乳児のぐずりの原因は何であるのかを明らかにすることを目的とし,ビデオカメラや加速度センサ等を用いて授乳のみ時とスマートフォン操作時の母親の体勢や授乳中の乳児の視線や動作の変化を比較した.
著者
清水 裕介 大西 鮎美 寺田 努 塚本 昌彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.468-481, 2022-02-15

本論文では,パソコンを利用した作業時のキー入力を身体動作で置き換えることにより,運動不足を解消するシステム,DeskWalkを提案する.長時間の座位作業は健康に悪影響がある.歩行や立ち上がりを行うことでその影響を低減できるが,これらは作業の中断をともなう.DeskWalkは下肢に取り付けたストレッチセンサで歩行と同等に筋肉が動く動作を認識し,それらの対象動作にあらかじめ割り当てたキーの入力を行う.これにより,ユーザは座位作業を続けながら運動ができる.さらに,日常生活での運動を記録しておき,座位作業時にDeskWalkを用いて不足分の運動を補わせるアプリケーションを提案,実装した.評価実験の結果,DeskWalkは対象動作を平均F値0.98と高精度に認識できた.システム使用時は未使用時と比較して2割から3割程度入力速度が減少したが,通常のパソコン作業において問題のない速度で入力ができていた.