- 著者
-
中西 良文
大道 一弘
梅本 貴豊
- 出版者
- 一般社団法人 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学研究 (ISSN:00215015)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.3, pp.199-211, 2018-09-30 (Released:2018-11-02)
- 参考文献数
- 20
- 被引用文献数
-
1
本研究では,Pintrich, Marx, & Boyle (1993) で言及されている,自己効力感の2つの側面,すなわち,知識の正確性に対する自己効力感と知識再構築に対する自己効力感が,概念変化とどのように関連しているか検討した。概念変化を促すための教授ストラテジーとして,既有の概念に対峙する情報から提示する対決型ストラテジーと,合致する情報から提示する懐柔型ストラテジーを取り上げた。大学生・短期大学生135名を対象にいずれかの教授ストラテジーを用いて家畜概念の変化を促す教材を用いた検討を行った。その結果,まず2つの側面の自己効力感を測定する尺度が作成された。続いて,2つの教授ストラテジーと2つの側面の自己効力感によって家畜概念の判断の正答にどのような影響が見られるか検討したところ,対決型の教授ストラテジーによって概念変化がより促されている様子が見られたとともに,対決型の教授ストラテジーの場合において,知識再構築に対する自己効力感の得点が高く,知識の正確性に対する自己効力感の得点が低い場合により正答が導かれるという交互作用が見出された。そして,いずれの教授ストラテジーも,教授前から後にかけて,2つの側面の自己効力感を高めることが見出された。