著者
山本 裕子 七田 麻美子 横矢 祥代 中西 良文
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45047, (Released:2021-09-07)
参考文献数
6

本稿は三重大学の学部卒業生及びその就職先を対象に質問紙調査を実施し,当該大学の教育が社会的ニーズに合致しているかを検討することを目的とした.卒業生・就職先データの比較分析の結果,卒業生と就職先の評価にずれがあることや,就職先からの評価が卒業生の自己評価より高くてもジェネリックスキルや外国語の力について身についたとする評価が比較的低かったことから,この点をさらに改善する必要性等が見出せた.今後の課題として,カリキュラム評価や教学改革についてより精度の高い評価を行うために経年比較による分析の必要性が明らかとなった.
著者
中西 良文
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.127-138, 2004-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
22
被引用文献数
17 1

本研究では, 方略帰属が方略を介して動機づけに影響を与えるという過程を想定し, 成功/失敗の方略帰属が自己効力感にどのような変化をもたらすのか, さらに, そのような変化はどのような方略を介してもたらされるのかについて検討した。被験者は高校生80名であった。そのうち60名を対象に面接を行い, 自ら考えさせる形で失敗の方略帰属 (SAF) もしくは成功の方略帰属 (SAS) を促し, 面接前後の自己効力感の変化, および, 面接での方略帰属を通じて思いつく「今後用いようとする方略」の特徴について検討した。その結果, 面接後においてSAS群の自己効力感がSAF群よりも有意に上昇していることが見いだされた。また, 今後用いようとする方略について質的分析を行った結果, SAS群はSAF群に比べ, 直接的に学習に関わるような方略を挙げる傾向があることが見いだされた。
著者
中西 良文
出版者
日本教授学習心理学会
雑誌
教授学習心理学研究 (ISSN:18800718)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.60-69, 2020 (Released:2022-11-07)

本研究は現実のテスト結果における成功/失敗の原因帰属について自由記述法で検討を行ったものであるが,特にこれまで主要な帰属因として扱われてきた努力帰属に関して,方向的な側面を含むものを方略帰属として弁別し検討を行った。また,原因帰属を行った後に,次の解決のためにどのような学習方略を用いようとするのかについても検討を行った。高等学校の1・2年生153名(男性97名・女性54名・不明2名)を対象に,社会科(現代社会もしくは地理)の定期テストにおける学業成績の原因帰属と,次の解決のための方略について自由記述で回答を求めた。その結果,最も多く挙げられた帰属因は,普段の学習における方略に該当する,勉強方略であった。また,成功の場合は勉強方略への帰属が最も多かったが,失敗の場合は努力帰属が勉強方略への帰属よりもやや多く,また,成功の場合との対比で勉強方略への帰属の割合に比して,テスト方略への帰属の割合が高かった。さらに,原因帰属を行った後に考える,次の解決のための方略については,失敗の原因帰属では学習の環境を整えるといった間接的にしか学習に関わらない方略がより挙げられやすいことが見いだされた。
著者
中西 良文 大道 一弘 梅本 貴豊
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.199-211, 2018-09-30 (Released:2018-11-02)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本研究では,Pintrich, Marx, & Boyle (1993) で言及されている,自己効力感の2つの側面,すなわち,知識の正確性に対する自己効力感と知識再構築に対する自己効力感が,概念変化とどのように関連しているか検討した。概念変化を促すための教授ストラテジーとして,既有の概念に対峙する情報から提示する対決型ストラテジーと,合致する情報から提示する懐柔型ストラテジーを取り上げた。大学生・短期大学生135名を対象にいずれかの教授ストラテジーを用いて家畜概念の変化を促す教材を用いた検討を行った。その結果,まず2つの側面の自己効力感を測定する尺度が作成された。続いて,2つの教授ストラテジーと2つの側面の自己効力感によって家畜概念の判断の正答にどのような影響が見られるか検討したところ,対決型の教授ストラテジーによって概念変化がより促されている様子が見られたとともに,対決型の教授ストラテジーの場合において,知識再構築に対する自己効力感の得点が高く,知識の正確性に対する自己効力感の得点が低い場合により正答が導かれるという交互作用が見出された。そして,いずれの教授ストラテジーも,教授前から後にかけて,2つの側面の自己効力感を高めることが見出された。
著者
中西 満悠 中谷 素之 中西 良文
出版者
Japan Society of Personality Psychology
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.197-200, 2015

This study developed a Japanese version of the Academic Delay of Gratification (ADOG) Scale, based on the original language scale created by Zhang, Maruno, Karabenick, and Lauermann (2011), and investigated its reliability and construct validity. Japanese undergraduates (<i>N</i>=394) completed the new scale. Confirmatory factor analysis yielded a one-factor structure. The students' ADOG score correlated positively with effortful academic behavior, use of metacognitive strategies, planned studying and the average of weekly study time, and negatively correlated with less sustained studying. The internal consistency, test-retest reliability, and construct validity of the scale were confirmed.
著者
中山 留美子 中西 良文 長濱 文与 中島 誠
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.170-176, 2015

The present study examined the influence of interpersonal motivation on university adjustment in freshman students enrolled in a First Year Experience (FYE) class. An interpersonal motivation scale and a university adjustment (interpersonal adjustment and academic adjustment) scale were administered twice to 116 FYE students; data from the 88 students who completed both surveys were analyzed. Results from structural equation modeling indicated a causal relationship between interpersonal motivation and university adjustment: interpersonal adjustment served as a mediator between academic adjustment and interpersonal motivation, the latter of which was assessed using the internalized motivation subscale of the Interpersonal Motivation Scale as well as the Relative Autonomy Index, which measures the autonomy in students' interpersonal attitudes. Thus, revising the FYE class curriculum to include approaches to lowering students' feelings of obligation and/or anxiety in their interpersonal interactions might improve their adjustment to university.
著者
中西 満悠 中谷 素之 中西 良文
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.197-200, 2015-03-31 (Released:2015-04-04)
参考文献数
11
被引用文献数
1

This study developed a Japanese version of the Academic Delay of Gratification (ADOG) Scale, based on the original language scale created by Zhang, Maruno, Karabenick, and Lauermann (2011), and investigated its reliability and construct validity. Japanese undergraduates (N=394) completed the new scale. Confirmatory factor analysis yielded a one-factor structure. The students' ADOG score correlated positively with effortful academic behavior, use of metacognitive strategies, planned studying and the average of weekly study time, and negatively correlated with less sustained studying. The internal consistency, test-retest reliability, and construct validity of the scale were confirmed.
著者
松本 金矢 森脇 健夫 根津 知佳子 後藤 太一郎 滝口 圭子 中西 良文 磯部 由香
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

教育実践現場やその隣接関連領域の現場で、教材開発研究とその実践を組み合わせた、教員養成のための新たなPBL教育カリキュラムの開発を模索した。開発したPBL教育モデルは、先行研究や実践活動で実績のある拠点校(5校区)を中心に、現場との協働において教育実践に活用された。さらに、海外の教育現場での学びを実現する海外実地研究型PBL教育を導入した。得られた成果は、学会発表(45件)・論文発表(29件)として公開され、関係研究者の評価を得た。
著者
中山 留美子 長濱 文与 中島 誠 中西 良文 南 学
出版者
京都大学高等教育研究開発推進センター
雑誌
京都大学高等教育研究 (ISSN:13414836)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.37-48, 2010-12-01

In 2009, a First-Year-Experience (FYE) course of Mie University was introduced as an endeavor to transform students into active learners by having them acquire the university's educational goals. Mie University established this program to allow the students acquire generic skills broadly categorized into four abilities: to appreciate (kanjiru), to analyze (kangaeru), to communicate, and to integrate those skills in various practical situations (ikiru). The course consisted of 16 sessions. The first five sessions emphasized communication practices to enable the students to brush up their discussion skills. In the next seven workshops, the students were assigned a group project to complete. The last four sessions included presentation, evaluation of the projects, and reflection of their achievements. The student's responses were measured by a scholastic achievement evaluation, which was administered in September. To clarify the effect of the FYE course, we compared the evaluation of students enrolled in 2008 with 2009. ANOVA revealed significant differences in the evaluations. Their expectancy to acquire the four abilities was not as low as those who did not take this course. In addition, the majority of the students felt that their communication and practical skills had improved. Among all freshman in 2009, the evaluations for students who took the FYE course showed a similar trend. This course was evaluated as successful in transforming the students into active learners.
著者
中西 良文 村井 一彦 梅本 貴豊 古結 亜希 Nakanishi Yoshifumi Murai Kazuhiko Umemoto Takatoyo Kogetsu Aki
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.299-303, 2010

本研究では、Pintrich, Marx, & Robert (1993) のいう、「暖かい概念変化モデル(hot model of conceptual change)」という考えをもとに、小学生6名(5年生4名・6年生2名)を対象に英語の否定疑問文への回答に対する概念変化と動機づけ変化を促す実践を行い、その効果を検討したものである。具体的には、認知的葛藤を利用して、概念変化を導くと同時に、興味を高めることをねらいとした働きかけを行った。実践の結果、否定疑問文に回答する課題において、正答者数が増えたものの、有意な変化は見られなかった。一方、興味については、得点の上昇が見られた。これらの結果をもとにして、より望ましい概念変化が導かれるために必要な条件について、議論を行った。
著者
梅本 貴豊 中西 良文
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.353-358, 2012

本研究は、方略保有感、方略の認識と、主観的ウェルビーイング(自尊感情、学校生活満足感)との関連を検討することを目的とした。216名の大学生に対して、質問紙調査が行われた。相関分析の結果、方略保有感は自尊感情、学校生活満足感との正の関連がみられたが、方略の認識については関連がみられなかった。次に、方略保有感と方略の認識のそれぞれの高低の組み合わせから4群を構成し、その4群を独立変数、自尊感情と学校生活満足感を従属変数とした一要因分散分析を行った。その結果、方略保有感と方略の認識がともに高い群は、高い自尊感情と学校生活満足感を示した。これらの結果から、方略保有感と方略の認識が、主観的ウェルビーイングに与える影響について議論された。
著者
松本 金矢 森脇 健夫 根津 知佳子 後藤 太一郎 中西 良文 滝口 圭子 上垣 渉 廣岡 秀一 八木 規夫
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

医学教育において実践されてきたPBL教育を,教員養成学部において展開するための基礎的な研究を行った.教育周辺領域の様々な現場においてPBL教育を実践し,コンテンツの開発を行った.特に,学生・院生に旅費を支給し,大学より離れた現場でのPBL教育を実践することができた.現場での実践を大学において省察し,学生が教員からのアドバイスを受けるためのネットワークシステムとしてmoodleを用い,そのための専用サーバを立ち上げた.例えば美術教育において学内・外のデザイン製作を学生と教員が協働して手がけるなど,教科の専門性を活かした活動や教科を超えた協働活動を展開した.また,先端的な取り組みを行っている他大学研究機関・学会の調査のために,海外視察を4回,国内視察を5回行った.これらの視察では,学生・院生を引率し,他大学の学生との交流も実現した.特に,秋田大学,愛媛大学とは双方向での視察・交流を果たし,moodle上で恒常的な交流の場を設置した.PBL教育の教育効果を明らかにするために,評価方法の開発にも注力している.日本教育大学協会研究助成プロジェクト(カルロス研究会)との協働により、パフォーマンス・アセスメント(PA)を用いた評価法の開発を推進し、そのためのマニュアル作成を行った。このようなPBL教育の成果を学内外に発信・共有するために、学内で開催された4回の公開研究会と4回のボスターセッションにおいて発表し,愛媛大学・島根大学とのジョイントシンポジウムを1回開催した。また、これらの成果を学会において論文・紀要等により発表した。開発されたすべてのコンテンツはデータベース化し、専用ホームページを通して公開している。
著者
松本 金矢 森脇 健夫 根津 知佳子 後藤 太一郎 磯部 由香 滝口 圭子 中西 良文
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

先行研究や実践活動で実績のある拠点校(5校区)を中心に、教育現場や隣接領域の実践現場のニーズを調査し、それに応じた領域を超えた教材・活動を開発・展開した。開発した教材は、現場との協働において教育実践に活用された。その実践報告を基に公開研究会を開催し、その有効性が検討された。得られた成果は、学会発表(33件)・論文発表(36件)として公開され、関係研究者の評価を得た。