著者
門野 敏彦 重森 啓介 弘中 陽一郎 佐野 孝好 藤岡 慎介 境家 達弘 杉田 精司 黒澤 耕介 大野 宗祐 松井 孝典 中村 昭子 荒川 政彦 近藤 忠 藪田 ひかる
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

高出カレーザーを用いてサブミリメートルサイズの弾丸および平板飛翔体を加速した.従来の加速方法ではこのサイズの飛翔体は秒速数kmまでしか加速できなかったが,本研究では秒速10km以上(最高秒速60km)に加速することに成功した.この技術を使って岩石標的に対して超高速度衝突実験を行い,衝突によって発生する高圧状態での岩石物質の状態方程式,高圧から解放後に発生する蒸気の組成や熱力学状態,クレーターサイズ,放出破片,クレーター深部の状態,など,これまで全く実験的データの無かった未知領域での知見を数多く得ることが出来た.
著者
大野 宗祐
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、天体の超高速度衝突時に発生する蒸気雲内における化学反応の速度を実験的に求めることと、その求まった反応速度が地球や惑星の表層環境や生命の進化にどのような影響を与えたかを解明することである。今年度は、衝突蒸気雲内部における硫黄酸化物の酸化還元反応の反応速度を実験的に推定するとともに、求まった反応速度を用い、今から6500万年前のK/T事件において硫黄酸化物がどのような環境変動を引き起こしたのかについて、理論計算を行った。本研究の手法で推定された硫黄酸化物の反応速度は、既存の気相反応の文献値よりも大きく、衝突蒸気雲の最終生成物は低温で安定な三酸化硫黄が支配的であったであろうことを意味する。この場合、K/T事件の際放出された硫黄酸化物が速やかに硫酸エアロゾルを形成したと推測される。この硫酸エアロゾルの大気中での滞留時間が、環境変動を議論するうえで非常に重要である。しかしながら、既存のK/T事件の際の硫酸エアロゾルの大気中の滞留時間の推定結果は全て、衝突直後大気中で共存していたはずのケイ酸塩の再凝縮物を無視していたため、滞留時間を何桁も過大に見積もっていた。そこで本研究では、ケイ酸塩と硫酸エアロゾルとの相互作用を考慮に入れて硫酸エアロゾルの大気中における滞留時間を計算した。その結果、硫酸エアロゾルの滞留時間は数日以内と非常に短いという結果が得られた。これは、硫酸エアロゾルによる日射遮蔽はごく短期間で終了するかわり、強い酸性雨が全球的に降ったということを意味する。本研究では計算した硫酸の降下フラックスに基づき、海洋表層の炭酸イオン濃度を推定した。硫酸の降下が大気海洋間のガス交換の特徴時間よりも圧倒的に速いため炭酸の緩衝系が弱められ、従来の推定よりも数十分の一まで炭酸イオン濃度が減少すると言うことがわかった。
著者
松井 孝典 阿部 彩子 杉田 精司 大野 宗祐
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では, 堆積岩及び各種氷の衝突脱ガス過程における化学反応過程の解明を目的として実験を行った. また, 脱ガス過程からの反応生成物が, 地球気候システムに及ぼす影響の定量的評価を行った. 結果として, (1)衝撃脱ガスによるCO2の発生は, 先行研究の推定より非常に高圧でのみ起きることと(2)白亜期末の巨大隕石衝突後には, 従来想定されていたCO2の大量発生ではなくCOが大量に発生したらしいこと, (3)COが大量発生した場合には, 強力な温室効果が起きることが分かった.