著者
川内 健三 天谷 真奈美
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.2_1-2_11, 2013-06-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
29

研究目的は,精神障害者の療養生活を支援する病棟看護師が,地域への移行や地域生活の安定に向けた訪問看護を実施するなかで感じる困難について明らかにすることである。精神科病棟で3年以上経験し,かつ現在,精神科病棟に所属して精神科訪問看護を行っている看護師15名に対し半構造化面接を行い,Berelsonの内容分析にて分析した。 その結果,病棟看護師は病棟看護と訪問看護による発想の開きから生じる困難,訪問看護に関する病院組織の不十分な実施支援態勢からくる困難,限られた時間や空間で迅速な判断を1人で行う困難,精神障害者が地域生活をするうえでの特質に基づく困難を感じていた。 このような困難をもつ看護師の支援には,精神障害者の地域生活に触れ,地域での支援方法を学ぶ機会を設ける,病院組織の看護部門主導の訪問看護実施体制の確立等で困難の軽減につなげることが必要と考える。
著者
新田 真由美 板山 稔 天谷 真奈美
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.5_31-5_40, 2011-12-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
26

精神疾患をもつ患者の喫煙率は健常者より多いにもかかわらず,積極的な禁煙指導は少ない現状がある。本研究は,統合失調症をもつ患者の禁煙認識や禁煙阻害因子に着目し,よりよい禁煙支援方法を考察するための研究である。研究期間は平成20年5月7日から平成20年5月31日。研究対象者は病院の外来およびデイケアに通院する喫煙中の統合失調症患者16名であった。半構造化面接を行い,分析にはKJ法の手法を用いた。結果,統合失調症患者の禁煙認識と禁煙阻害因子を説明する10のグループが導き出された。統合失調症患者の禁煙認識は,「喫煙者として社会のなかで窮屈さを感じている」などであった。また,禁煙阻害因子は,「日常生活を送るなかで,タバコが日々の営みの支えや,潤い,楽しみ,さらには達成感を与える役割を果たしている」などであった。禁煙を支援する際には,QOLを高める介入や社会からのはたらきかけ,禁煙の目的の設定などが重要であると考えられた。
著者
大塚 麻揚 天谷 真奈美 柴田 文江
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.181-187, 2002
被引用文献数
2

本稿では、地域リハビリテーションやエンパワーメントが重要視されるようになってきた精神保健福祉の領域で欠かすことのできない、障害を持つ人自身の主観的側面について述べる。主観的側面の中でも特に重要と思われる自己効力感を取り上げ、関連が深いとされる自尊感情とともに概説する。わが国の自己効力感に関する過去の文献から次のようなことが言えた。(1)自己効力感は、健康教育、患者教育を中心に幅広い分野で検討および活用され、その有用性が確認されている。(2)自己効力感の概念は、精神障害者支援においても取り入れられ、検討がなされており、有用性が示唆されている。今後の課題として、精神障害者の一般性自己効力感に関する検討、自己効力感の発達的側面に関する検討、すなわち自己効力感が育まれていく過程やその支援の検討、および精神障害者自身の言葉や体験に基づく自己効力感の検討があげられる。
著者
天谷 真奈美 宮地 文子 高橋 万紀子 瀬戸岡 祐子
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.23-32, 2003

本研究は社会的ひきこもり青年を抱える家族18名を対象とし、その家族が子どものひきこもりを発端として認識している課題を明らかにすることを目的とした。家族の認識する課題は【ひきこもる子供への理解に関する課題】【子供への接し方に関する課題】【子育てを見つめなおす課題】【家族関係でさまざまな葛藤やコミュニケーション障害が存在する課題】【自分にも援助を必要とする課題】【子供の社会参加への支援に関する課題】【世間・近隣付き合いで縛りを感じる課題】【将来への不安に関する課題】の8カテゴリーに統合された。支援として、1)「ひきこもり」への理解を助け、交流の拡大に向けた支援、2)家族自身の老年期の発達課題の克服に向けての支援、3)問題解決にむけた社会的資源や支援環境の整備が必要なことがあきらかになった。
著者
天谷 真奈美 岩崎 弥生 Amagai Manami Iwasaki Yayoi アマガイ マナミ イワサキ ヤヨイ
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.79-85, 2006-06-30

本研究の目的は社会的ひきこもり青年を抱える親のパワーレスと,そのエンパワメントの拡大に働く看護援助を明らかにすることである。対象は社会的ひきこもり青年の親で3事例である。ひきこもり青年は20歳半ばから30歳前半の全て男性で,3年から7.5年ひきこもっていた。看護援助指針に基づいて親に援助を実施し,質的分析を行った。また看護援助の効果を測定する質問紙調査を行った。結果,社会的ひきこもり青年を抱える親のパワーレスは7カテゴリーが抽出された。親のエンパワメントの拡大に働く看護援助カテゴリーは,【パートナーシップを確立し孤立感を和らげる援助】,【子育ての振り返りを見守る援助】【否定的自己感と向き合いつつ自尊感情を取り戻す援助】,【適切な対人距離がとれるよう認識を促す援助】,【親が見逃している他者の力量・可能性・思いに対する感受性を高める援助】,【多様な見方・意味づけの提示で,柔軟な物事の理解・とらえ方を拡大する援助】,【問題解決能力を養う援助】の7つが抽出された。これらの看護援助によって,家庭内のコミュニケーション,協働関係の再構築,ひきこもり青年の社会参加行動にも変化が得られた。特に子育ての振り返りを見守る援助は,過去の子育てに関する親の負担感と子供に対する罪悪感の表出を促し,葛藤の整理を行う上で効果的であった。家族の課題に現実的に対処する力を生み出す意味でも重要であることが示唆された。The purpose of this study was two-fold: a) to elucidate factors associated with parents' powerlessness in caring for the children who were socially withdrawn; b) to help those parents empower themselves in their struggles with their socially withdrawn children. Participants in the study were 3 mothers whose children have been socially withdrawn for long time. The socially withdrawn children were in their mid-twenties through mid-thirties. They had confined themselves in their homes from 3 to 7.5 years. Nursing care was given to those mothers after delineating intervention guide-lines on their enhancing empowerment. Data, which were collected for the study period of six months, were analyzed qualitatively and inductively. A questionnaire was used to measure the effects of nursing care. There were 7 categories of the mothers' powerlessness with regard to their children's socially withdrawnness. As well, there were 7 categories of the nursing care provided to those mothers.: 1) partnership established between the mothers and the nursing researcher, 2) looking back their parenting, 3) regaining self-esteem despite regrets, 4) setting a distance appropriately between their children and themselves, 5) enhancing the levels of sensitivity in identifying their family strengths, 6) being able to interpret different meanings form multiple perspective, and 7) enhancing problem-solving skills. As a result of nursing care provided for their mothers, higher levels of empowerment were observed on the mothers as well as on the rest of the family members. In particular, the following behavioral changes were noted: a) improved communication patterns among the family members; b) re-established mutual support between parents; c) no longer socially withdrawn, but getting out of their houses, getting employed, or going to vocational school. Especially nursing intervention supporting mothers to reflect their own parenting have been contributed providing the opportunities to express parenting burden and feeling of guilty, and regulate th