著者
西川 哲成 富永 和也 尹 聖澤 上村 学 好川 正孝 戸田 忠夫 田中 昭男
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.272-281, 1996-09-28
被引用文献数
7 2

共焦点レーザ走査顕微鏡(CLSM)でラット硬組織を観察する条件を得るため,硬組織の各種ラベリング剤を用いて,その染色方法を検討し,立体的に観察した。生後4週の雄性ラットの背部皮下,大腿部の筋肉,腹腔そして頸部の静脈にcalceinを投与し,その2日後灌流固定を行った。下顎骨を摘出しエポキシ樹脂に包埋して厚さ500μmの非脱灰切片とした。これらの切片を励起波長488nmで,波長535nm (CH1)と610nm (CH2)のバリアーフィルターを用いてCLSMで観察した。また,ラットにcalcein, tetracyclineおよびalizarin redの種々な濃度のラベリング剤を単独あるいは複数組合せて投与し,同様の方法にて切片を作製し,CLSMで観察した。その結果,体重100gにつきcalceinの量が1または2mgのときにCH1およびCH2を,alizarin redは4または8mgのときにCH2を,tetracyclineは4または8mgのときにCH1およびCH2をそれぞれ使用することによって最も明瞭に観察できた。Calceinを静脈に投与した場合には,皮下組織への投与と比較して,ラベリング線は細く,染色程度も強かった。さらに,筋肉あるいは腹腔に投与した場合は静脈内と皮下投与の中間の結果であった。2重ラベリングでは体重100gにつきcalcein 2mgとalizarin red 4mgの投与がCLSMの観察に適していた。この染色条件では,象牙質の基質および支持歯槽骨の外側は規則正しく,そして歯根膜に接する固有歯槽骨は不規則にそれぞれラベルされていた。また,骨小腔および骨細管が立体的に観察された。
著者
川崎 浩二 田中 康弘 好川 正 安田 克廣 高木 興氏
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.103-109, 1995-01-30
被引用文献数
7

Nd-YAGレーザー照射によるヒト・脱灰エナメル質の表面構造を結晶学的に検討する目的で,健全エナメル質,脱灰エナメル質,レーザー照射エナメル質,脱灰後レーザー照射したエナメル質を高分解能電子顕微鏡で観察した。その結果,TEM観察により脱灰エナメル質の表層部は健全エナメル質のそれと類似した比較的緻密な結晶粒構造であるのに対して,10μm程度深部では結晶粒間に空隙が認められた。脱灰後レーザー照射したエナメル質表層部のTEM所見は表層から約100nmの深さまでがその下部に存在するエナメル質結晶と比較してコントラストが明るく結晶粒が確認されにくい領域であった。しかし同部位の高分解能像では結晶構造の存在を意味する格子縞が確認された。さらにその格子縞の間隔を測定して,JCPDSの面間隔データと比較検討することにより結晶学的解析を行ったところ,同部位はα-TCPまたはβ-TCPに変化している可能性が高いことが示唆された。