著者
大塚 惠 荒川 信彦
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1996

アレルギー反応の媒介物質として知られるヒスタミンは生体内でヒスチジンより生成される。本研究では、ビタミンCの体内ヒスタミン分布に及ぼす影響を調べることを目的とし、ラット腹水より調製した肥満細胞および粘膜型肥満細胞のモデル細胞である好塩基球白血病細胞(RBL-2H細胞)を用いてヒスタミン遊離に及ぼすビタミンCの影響について検討を行った。1)ラット腹水肥満細胞からの遊離ヒスタミンに関する検討: 腹水より採取した肥満細胞は、各種濃度のビタミンC添加培地で30分培養を行なったが、この前処理によって顕著な細胞内取り込みが行なわれなかった。しかし、非免疫刺激剤(コンパウンド48/80)により細胞内全ヒスタミン量の70%が放出される条件下で、生理的濃度のビタミンCで前処理を行なった肥満細胞ではヒスタミン放出の低下傾向が認められたが、高濃度のビタミンCと前処理した場合には顕著な差はみられなかった。2)RBL-2H細胞からの遊離ヒスタミンに関する検討: 本細胞は、高濃度のビタミンCで前処理を行なうことにより増殖は抑制された。また、ビタミンCの添加濃度の増加に伴って経時的に細胞内取り込み量は増加した。増殖に顕著な影響の現れない条件で各種濃度の細胞内ビタミンC量をもつ細胞を調製したところ、高濃度のビタミンCを含む細胞において非免疫刺激剤(タプシガルギン)によるヒスタミン放出は有意に抑制された。以上のことから、細胞をビタミンCで処理することにより、非免疫刺激剤に対するヒスタミン放出の抑制に寄与する可能性が示唆された。
著者
妻鹿 絢子 藤木 澄子 荒川 信彦
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.618-621, 1979-08-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
8

市販牛肉を実際の調理のさいのマリネ条件にもとづき, 角切り肉でマリネ処理した場合にも, 前報のホモジネートを用いた実験でみられたと同様のプロテオリシスが進行し, 筋原繊維蛋白質の部分分解および低分子化が起こることが認められた.また, マリネ処理において針入度の増加と切断応力の減少から肉の軟化が認められ, 肉重量の増加から保水性の増大が認められた.さらに, マリネ処理による低pHにおいて, 肉中のプロテアーゼにより筋原繊維蛋白質が分解し, 比較的高分子の蛋白質は保水性の増大にともなって肉漿中に保持されアミノ酸等の低分子物質は浸漬外液中に溶出した.
著者
妻鹿 絢子 三橋 富子 細見 博子 荒川 信彦
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.199-203, 1981-04-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
9

マリネ処理時間および酸濃度の食肉蛋白質におよぼす影響について検討し, あわせてマリネ処理肉の官能検査を行った.1) 浸漬時間の経過および, 酸濃度の増加にともないマリネ肉のpH低下, 重量増加がみられ, 切断応力が経時的に減少して肉がやわらかくなることが認められた.2) マリネ処理により生じた水溶性窒素化合物の総量は半日~1日経過で著しく増加した.3) 酸の浸透にともない筋肉蛋白質中のミオシン主鎖の切断がおこり, 150,000 dalton fragmentへ移行することが認められた.4) 浸漬日数の経過にともない官能的にも肉がやわらかくなると判定された.また, 酸味を感じるパネル数も増加した.
著者
沼田 正寛 河口 麻紀 中村 豊郎 荒川 信彦
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.397-405, 1992-05-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

海水塩および海水塩中の微量成分を所定の割合で塩化ナトリウムと混合した調製塩を用いて,タンパク質の抽出性,ミオシンBの加熱ゲル形成能および食肉加工品の品質に及ぼす影響を検討し,以下の結果を得た.(1)タンパク質の抽出性および抽出したタンパク質中に占めるミオシンの割合は,海水塩中の微量成分あるいは調製塩中の硫酸マグネシウム,塩化マグネシウムおよび硫酸カルシウムの増加に伴って上昇した.これらの変化は抽出液のイオン強度の変化と対応する傾向を示したが,硫酸カルシウムを含む調製塩では,ミオシンの抽割合が特に増加した.(2)ミオシンBの加熱ゲル強度も海水塩中の微量成分あるいは調製塩中の硫酸マグネシウム,塩化マグネシウムおよび硫酸カルシウムの増加に伴って上昇した.昇傾向は40℃から80℃まで,すべての加熱領域で認められたが,その範囲内では加熱温度が高いほど顕著であった.しかし,加熱ゲルの微細構造に供試食塩による差は認められなかった.(3)生ハム,ロースハムおよびボロニアソーセージの保水性や色調に供試食塩による差は認められなかった.前2者では加熱ゲル強度も変化しなかった.しかし,後者では前項までの結果が硬さの増加として現れる傾向を示し,それは硫酸カルシウムを含む調製塩で有意に認められた.呈味性は生ハムで変化がみられ,微量成分の割合が最も高い海水塩および塩化マグネシウムを含む調製塩でまろやかさが向上し,硫酸マグネシウム,塩化マグネシウムおよび硫酸カルシウムを含む調製塩では後味がよいと評価された.
著者
妻鹿 絢子 三橋 富子 藤木 澄子 荒川 信彦
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.79-82, 1983-02-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
9

市川らの報告をもとに, ショウガ根茎からショウガプロテアーゼを抽出, 精製し, そのプロテアーゼ活性の比較を行った.その結果, ショウガ搾汁, 酵素抽出液, 粗酵素液, 精製酵素B, 精製酵素Aの順にカゼイン分解物が増加し, 酵素の精製が進んだことが確認された.これら各精製段階のショウガプロテアーゼをpH5.037℃において, 筋原繊維蛋白質に対して3%になるように添加して作用させた.ショウガ搾汁を作用させた場合には, 反応時間60分におけるミオシン分解率は35.8%であったが, 最も蛋白分解力の強い精製酵素Aを作用させた場合には, 反応時間60分で62.3%におよぶミオシン分解率を示した.