著者
佐藤 宏 鈴木 和男 宇仁 茂彦 神谷 晴夫
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.1203-1206, 2005-12-25
参考文献数
28
被引用文献数
4 10

2003年5月から2005年4月の2年間に, 和歌山県を主体とした関西3府県で駆除された野生化アライグマ555頭について腸管寄生虫を調べた.そのうち61頭から, 鳥類を固有終宿主とする7種の鉤頭虫が検出された.これらは, Centrorhynchus bazaleticus, Centrorhynchus elongatus, Centrorhynchus teres, Sphaerirostris lanceoides, Plagiorhynchus ogatai, Porrorchis oti, Southwelina hispidaの幼鉤頭虫と同定され, これまで日本あるいは極東からは未確認であった3種, すなわちC. bazaleticus, C. teres, S. lanceoidesが含まれていた.幼鉤頭虫のアライグマからの検出は, 春先から初夏にかけて高く(月別検出率8.3-36.8%, 平均21.5%), その他の季節では低かった(同様に0-20.0%, 平均6.3%).このように, 季節によって鉤頭虫検出率が変動する要因は不明である.国内に分布する野鳥の鉤頭虫相やその地理的分布についてはほとんど情報がなく, また, 検査材料調達にも限界があることから, 国内各地で通年的に駆除されるアライグマからの鉤頭虫検出情報に大きな手がかりを期待したい.
著者
村田 浩一 柳井 徳麿 吾妻 健 宇仁 茂彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.945-947, 2003-08-25
被引用文献数
1 20

膵内分泌腺癌が原因で死亡した飼育下の成雌ユキヒョウ(Uincia uncia)の右心室内および肺動脈内にフィラリア成虫3隻の寄生を認めた.虫体の計測値は犬糸状虫(Dirofilc immitis)のものとほとんど一致しており,形態およびミトコンドリアDNA COI領域の比較においてもD.immitisと遠いが認められなかった. D.immitisはこれまでネコ科動物2属3種に感染が報告されているが,新たな宿主としてユキヒョウが加えられた.
著者
宇仁 茂彦 松林 誠 池田 英一 鈴木 義孝
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.s・v, 385-388, 2003-03-25
被引用文献数
3 10

福井,滋賀,岐阜の3県において,捕獲されたニホンツキノワグマの各種内部臓器(肝臓,腎臓,心臓,肺,脾臓,リンパ節,皮膚)の組織学的検索を行った.その結果,18頭すべての肺の全葉の肺胞壁にHepatozoon sp.の未成熟および成熟メロントを見いだした.また,病理学的所見として,メロント,メロゾイトおよび虫体を包含する食細胞結節の周回に炎症性細胞潤滑は見られなかったが,崩壊過程を示す細胞,虫体および結節の周りには炎症性細胞浸潤を見いだした.クマにおけるヘパトゾーン症の最初の報告である.