著者
黒木 俊郎 八木田 健司 藪内 英子 縣 邦雄 石間 智生 勝部 泰次 遠藤 卓郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.1050-1055, 1998-10-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
20
被引用文献数
14 12

神奈川県下の12温泉施設30浴槽の浴槽水中のLegionella属菌と自由生活性アメーバの生息実態を調査した. 11施設の21浴槽 (21/30: 70.0%) からLegionella pneumopkilaが101CFU/100ml (6施設7浴槽: 23.3%), 102CFU/100ml (7方缶設10浴槽: 33.3%) および103CFU/100ml (2施設4浴槽: 13.3%) の菌数で検出された.決定できたL. pneumopkilaの血清群は3, 4, 5, 6群で4群株が最も検出頻度が高かった.アメーバは11施設の22浴槽 (22/30: 73.3%) から5属が検出され, その主なものはNaegleria属 (7施設14浴槽: 46.7%), Plalyamoeba属 (7施設10浴槽: 33.3%), Acanthamoeba属 (3施設3浴槽: 10.0%) であった.Legionella属菌の宿主アメーバのいずれかが検出された浴槽は合わせて9施設の17浴槽 (17/30: 56.7%) であった.温泉のいずれの水質においてもLegionella属菌あるいは自由生活性アメーバが高率に検出されたが, 標本数が少ないため生息と水質との間の関係の有無は判断できなかった.今回の調査ではNaegleria lovaniensisが13浴槽から分離された. 原発性アメーバ性髄膜脳炎の病原体であるNaegleria fowleriはN.lovaniensisと生息環境を同じくすることが知られており, わが国にも存在することが確認されていることから, 今後とも十分な監視が必要である.
著者
烏谷 竜哉 黒木 俊郎 大谷 勝実 山口 誠一 佐々木 美江 齊藤 志保子 藤田 雅弘 杉山 寛治 中嶋 洋 村上 光一 田栗 利紹 藏元 強 倉 文明 八木田 健司 泉山 信司 前川 純子 山崎 利雄 縣 邦雄 井上 博雄
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.36-44, 2009-01-20 (Released:2016-02-15)
参考文献数
19
被引用文献数
3 6

2005 年6 月~2006 年12 月の期間,全国の循環系を持たない掛け流し式温泉182 施設を対象に,レジオネラ属菌等の病原微生物汚染調査を行い,29.5%(119/403)の試料からレジオネラ属菌を検出した.採取地点別の検出率は浴槽が39.4%と最も高く,貯湯槽23.8%,湯口22.3%,源泉8.3%と続いた.陽性試料の平均菌数(幾何平均値)は66CFU/100mL で,採取地点による有意差は認められなかったが,菌数の最高値は源泉,貯湯槽,湯口でそれぞれ180,670,4,000CFU/100mL と増加し,浴槽では6,800CFU/100mL に達した.陽性試料の84.7%からLegionella pneumophila が分離され,血清群(SG)別ではSG 1,5,6 がそれぞれ22,21,22%と同程度の検出率であった.レジオネラ属菌の汚染に関与する構造設備及び保守管理の特徴を明らかにするため,浴槽と湯口上流側とに分けて,多重ロジスティック回帰分析を行った.浴槽での汚染リスクは,湯口水がレジオネラに汚染されている場合(OR=6.98,95%CI=2.14~22.8)及び浴槽容量が5m3 以上の場合(OR=2.74,95%CI=1.28~5.89)に高く,pH 6.0未満(OR=0.12,95%CI=0.02~0.63)では低下した.同様に,湯口上流ではpH 6.0未満(OR=0.06,95%CI=0.01~0.48)及び55℃以上(OR=0.10,95%CI=0.01~0.77)でレジオネラ汚染を抑制した.レジオネラ属菌以外の病原微生物として抗酸菌,大腸菌,緑膿菌及び黄色ブドウ球菌を検査し,汚染の実態を明らかにした.
著者
黒木 俊郎 宇根 有美
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 = The journal of veterinary epidemiology (ISSN:09128913)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.63-65, 2007-07-20

両生類,特に無尾類(カエル)の個体数の減少や種の絶滅が世界各地で報告され,ある調査によれば全世界の5,743種の両生類のうち少なくとも2,469種(43%)の個体数が減少し,1,856種(32%)が絶滅の危機に瀕している。劇的な減少が顕著となった1980年以降,9種が絶滅し,113種が絶滅した恐れがあるとされている。この両生類の悲劇の主たる原因のひとつにはツボカビ症(chytridiomycosis)と呼ばれる両生類の新興感染症が挙げられ,<I>Batrachochytrium dendrobatidis</I>が原因微生物である。この真菌は1998年にオーストラリア,カナダ,米国および英国の研究チームによって初めて発見され,パナマやオーストラリアの手付かずの自然環境における大規模な両生類の個体数の減少に関与していることが明らかになり,それ以来世界各地で調査されている。<BR><I>Batrachochytrium dendrobatidis</I>は1999年に1属1種の新属,新種として記載された,ツボカビ門,ツボカビ目に属する真菌である。属名"<I>Batrachochytrium</I>"の"Batracho"はギリシャ語でカエルを意味し,ツボカビを意味する"chytrium"の"chytr"はギリシャ語の"chytridion"または"chutridion" : 陶器製の小型のツボに由来する。したがって,属名をそのまま訳せば,カエルツボカビ属になる。種名の"<I>dendrobatidis</I>"はヤドクガエル属(<I>Dendrobates</I>)の1種(blue poison dart frog)から分離したツボカビ株を用いて種の記載を行ったことによる。しかし,<I>B. dendrobatidis</I>の宿主はヤドクガエルに限られているわけではなく,宿主域は非常に広い。<BR><I>B. dendrobatidis</I>は,ツボカビ類では脊椎動物に寄生する唯一の種である。生きたあるいは死んだ両生類の皮膚の角質層や顆粒層に寄生し,そこに含まれているケラチンを利用して発育する。しかし,ケラチンを含まないトリプトン(タンパク質を加水分解したもの)寒天培地でも培養することができる。<I>B. dendrobatidis</I>の生活環は非常に単純で,遊走子(zoospore)と遊走子嚢(zoosporangium)の2形態からなっている。<I>B. dendrobatidis</I>の遊走子嚢は表面が平滑で,球形から長球形であり,乳頭状の放出管(discharge tube)がある。遊走子嚢は角質層の表面から放出管を突出させ,突起の蓋が取れると遊走子を放出する。遊走子は後方に伸びる鞭毛があり,水中を遊走する。遊走子嚢から泳ぎ出た遊走子が宿主に到達することで伝播する。感染は100個程度の遊走子により成立し,時に致死的となる。両生類の皮膚の表面に達すると,角質層を貫通し,徐々に径が大きくなり,遊走子嚢を形成する。<BR><I>B. dendrobatidis</I>の遊走子は鞭毛で遊泳して宿主に到達することから,発育や感染には水が必須である。遊走子は滅菌水道水では3週間,滅菌精製水では4週間,滅菌湖水ではさらに長く,7週間生存するとされている。遊走子は乾燥により死滅してしまう。発育の至適温度は17~25℃で,23℃が最も適しているとされている。高温には弱く,28°Cで発育が止まり,30℃以上になると死滅する。<BR>ツボカビ症に対する感受性は両生類の種により異なり,アフリカツメガエル(<I>Xenopus laevis</I>)やウシガエル(<I>Rana catesbeiana</I>)は感染しても発症しないことが知られている。しかし,多くのカエル種は発症して,致死率も90%を超える場合がある。<BR>(View PDF for the rest of the abstract.)
著者
黒木 俊郎 宇根 有美 遠藤 卓郎
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.27-34, 2003 (Released:2018-05-04)
参考文献数
27

クリプトスポリジウムは幅広い種類の脊椎動物に感染することが知られている。近年,爬虫類においてクリプトスポリジウムによる致死性の下痢症が頻発し,有効な治療法も無いために大きな脅威となっている。また,ヘビに由来すると推測されるクリプトスポリジウムのオーシストが水道原水から検出され,水道汚染の観点から新たに関心を集めている。ここでは,爬虫類に寄生するクリプトスポリジウムを中心にして,その生物学的特徴や病原性などの概要を紹介する。
著者
山本 向三 飯塚 万利子 赤坂 江美子 馬渕 智生 梅澤 慶紀 太田 幸則 松山 孝 小澤 明 藤井 光子 川端 寛樹 渡邉 治雄 古屋 由美子 黒木 俊郎 谷 重和
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.1161-1164, 2005-11-01

要約 62歳,女性.神奈川県宮ヶ瀬の山林にハイキング後,右膝に吸血したヒルに気付いた.その14日後より吸血部に紅斑と,同部の疼痛が出現し,38℃台の発熱も認め,さらに2日後には,吸血部を中心に環状に紅斑が拡大した.また,全身に発疹が出現し,頭痛,関節痛,全身倦怠感などの全身症状も伴っていた.セフェム系抗生剤点滴を行い,これらの症状は改善した.なお,Lyme病抗体価は陰性であった.皮膚症状としての環状紅斑,また全身症状を呈したヒル咬傷は稀と思われた.
著者
中臺 文 黒木 俊郎 加藤 行男 鈴木 理恵子 山井 志朗 柳沼 千春 塩谷 亮 山内 昭 林谷 秀樹
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.97-101, 2005-01-25
参考文献数
21
被引用文献数
2 54

2000年11月から2002年7月の間に,ペットショップの爬虫類112頭におけるサルモネラの保有状況を調査したところ,74.1%(83/112)と高率に本菌が分離された.分離された112株は5生物群に型別され,I群の割合(62.5%)が最も高かった.また,112株中54株は28血清型に型別可能であった.これらの成績から,ペットの爬虫類は人のサルモネラ症の感染源となる可能性が示唆された.