著者
安井 湘三 鈴木 宏昭 下薗 真一
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

我々が開発したCSDF構造刈り込みの手法は、脳機能の本質に迫るとされる冗長削減原理の一形態と考える。本基盤研究では、この手法を洗練・改良した上で以下のような応用を行い、当初の目標は概ね達成されたものと考える。(A)アナロジー類推プロセッサアナロジーは認知科学、心理学、科学史、AIなどで研究されてきた。アナロジー類推を行う我々のニューロプロセッサは比較的シンプルで、そこでは抽象化内部モデルおよび具体⇔抽象の結合がCSDFの働きで自律生成されるという独自のものである。内部モデルへの引き込み等が起こることで、複合アナロジーや追加アナロジーの学習パラダイムにおいても有効であることが確認された。(B)独立成分分析(ICA)ICAもしくはBSSとは、混合された複数未知信号を分離抽出するという新IT技術である。我々の方法は、情報理論に基づいた従来法とは根本的に異なる。センサー信号を入力するオートエンコーダに恒等写像学習を行わせ、同時に、デコーダ部にCSDFを施す。すると、CSDFに抗して生き残った隠れ素子が源信号を再生する。また、デコーダ行列は混合行列を再生するので、デコーダ部は外部世界(源信号-センサ)の内部モデルとなる。従来法と比べて適応性・ロバスト性に富むことが特長で、音声や画像の実データを使った実験においてもある程度の成功を収めた。
著者
古川 徹生 田原 潤彌 宮本 雅浩 安井 湘三
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス
巻号頁・発行日
vol.97, no.525, pp.1-6, 1998-01-31
被引用文献数
1

網膜のtransient型アマクリン細胞はフラッシュ光に対して刺激のON時とOFF時に一過性の応答を示す. 網膜神経系において, このような非線形応答はアマクリン細胞で初めて見られるものである. 本研究ではさまざまな時空間パターンを持つ光刺激に対するアマクリン細胞の応答を調べることでその非線形応答のメカニズム解明を試みた. 実験の結果, 非線形な応答は受容野の各地点で局所的に作られ, その後空間的に線形加算されることを示唆していた. このことは双極細胞とアマクリン細胞間のシナプス機構を考える上でも重要である.