著者
安岡 義人 紫野 正人 二宮 洋 近松 一朗
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.268-273, 2016 (Released:2017-03-23)
参考文献数
13

小児の反復する難治性嚥下性肺炎予防のための誤嚥防止術には種々の術式がある。喉頭気管分離術は気管食道吻合術と共に,小児の誤嚥防止術として最も広く普及し施行されている術式である。筆者らは気管を切断せず,気管前壁のU字気管弁を後方に折り曲げ気管後壁と側壁に縫合して気管閉鎖する喉頭気管分離術(気管弁法)を開発し施行している。 気管弁法は低侵襲で簡便なため本人・家族が受け入れやすく,術後の管理が容易で気管孔が安定しているなどの利点がある。今回,気管弁法の術式の改良を行い,小児,成人,気管切開後にも適応を拡大し,喉頭気管瘻や気管腕頭動脈瘻のリスクも軽減させることのできる応用範囲の広い術式とした。さらに,誤嚥防止術の枠を超え,嚥下機能改善や,食道–喉頭シャントにより声帯発声が展望できる術式を目指している。
著者
安岡 義人 中島 恭子 村田 考啓 紫野 正人 近松 一朗
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.374-380, 2015 (Released:2016-03-31)
参考文献数
10

過去 6 年間に当科外来を受診した15歳以下の小児鼻出血77例の血管病態を電子内視鏡の通常光と狭帯域光観察(narrow band imaging: NBI)を用いて診断し,好発部位と血管形態別 6 型分類の特徴を明らかにした。好発部位は95%以上が鼻中隔前下方皮膚粘膜移行部付近とキーゼルバッハ部であった。血管形態分類では線状型(linear type)39例(50.6%),網状型(reticular type)34例(44.2%),肉芽型(granular type)2 例(2.6%),点状型(punctate type)1 例(1.3%),瘤型(aneurysmal type)1 例(1.3%)で陥凹型(recessed type)は該当例がなく,静脈性出血であった。小児の鼻出血の好発部位と血管病態に基づき,小児の鼻出血の初期対処法は患側の母指で鼻翼を正中の鼻中隔に圧迫し,手掌は開き他 4 指を対側下顎角部に当て挟む,母指圧迫止血法:thumb press maneuver (TPM)が合理的で効果的な止血法である。
著者
高橋 秀行 長井 今日子 飯田 英基 登坂 雅彦 安岡 義人 古屋 信彦
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.107-112, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
14

今回我々は,反復性髄膜炎に 3 回罹患した内耳奇形症例を経験したので報告する。症例は 3 歳女児,側頭骨 CT にて両側の内耳奇形を認め,聴力検査にて両側感音難聴を認めた。右鼓膜穿刺にて糖陽性の液体を認め耳性髄液漏と考えられたため,これを遮断する目的で試験的鼓室開放術を施行した。髄液圧をコントロールするため,手術に先立ち腰椎穿刺による髄液ドレナージを施行した。アブミ骨底板は欠損し膜性組織で閉鎖していた。その他の耳小骨に奇形は認めなかった。アブミ骨上部構造を除去すると大量の髄液噴出(gusher)を認めたため,追加の髄液ドレナージ・マンニトール点滴を行ったうえで,卵円窓へ側頭筋膜を十分に充填しフィブリン糊で補強した。術後12カ月の時点で再発を認めず,経過良好である。
著者
安岡 義人
出版者
耳鼻
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.273, 1993

外傷後声門下狭窄の治療には, Tチューブなどのステントを用いる例が多いが, 幼小児では気道の閉塞などで術後管理に困難をきたす場合がある. 今回, カニューレと分離した型で, 軟性シソコンチューブを細工してステントとし, 前頸部と気管に固定する方法を紹介した. この方法は一カ月以上の持続固定が可能であり, カニューレ交換も容易で管理し易いため, とくに幼小児に有用な方法と考えられた. 難治性のウェジナー肉芽腫症の声門下狭窄2例を含む8例の声門下狭窄症を呈示した.