- 著者
-
安永 雅
- 出版者
- 日本財政学会
- 雑誌
- 財政研究 (ISSN:24363421)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, pp.196-222, 2022 (Released:2023-10-17)
- 参考文献数
- 86
本稿は,ミード報告の改革案の検討を通して,支出税理論の再検討を行い,税制改革案と租税理論との関係について考察する。ミード報告を理論書としてのみ扱うのではなく,その実践的側面に注目し,かつミードの財政思想を踏まえることで,この報告書の改革案が3つの要素のコンビネーションであったこと,支出税の根拠は公平性などの租税原則に基づいたものではなく,経済停滞打破という具体的なものであったことを明らかにする。一方で日本の支出税論においてはミード報告が頻繁に言及され,税制改革案として支出税の研究も進んだが,原則論に基づいた評価がおもであり,公平性の観点からミード報告は評価されてきた。このような,改革案の形成やその後の解釈における支出税像の相違は,支出税の理論的優位性が一義的に定まるものではなく歴史的状況に大きく依存していることを示唆している。