著者
黒田 圭介 宗 建郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

Ⅰ.はじめに <br>「ゆるキャラ」は「ゆるいキャラクター」を略したもので,主に地域情報のPRに使用される着ぐるみのマスコットキャラクターである。ゆるキャラは,その名前・デザインともに地域の様相を簡潔に反映したキャラクターである場合が多く,例えば2016年ゆるキャラグランプリで総合1位を獲得した高知県須崎市のPRキャラクター「しんじょう君(名前の由来は同市を流れる新荘川より)」の風貌は,同市に生息していた「ニホンカワウソ」をデフォルメしたものであり,頭には同市名物「鍋焼きラーメン」を模した帽子がかぶせられている1)。このようにゆるキャラは,ある地域に対して知識の乏しい第三者に,ネーミングの語感と見た目のインパクトを通して地域情報をアピール,伝達する手段として活用されていると考えられ,本発表はこれを地域調査(まちたんけん)結果のまとめ方の一例として教材化し,教員養成系学科の地理学の授業に組み込んだ教育実践の報告である。具体的には,斜陽化が進む地方都市の商店街調査を実施し,その特徴(特長)を凝縮した一体のゆるキャラ作成を義務付けて調査結果をプレゼンテーションさせた。この活動を通じて受講者(多くが小学校教員を志望)に対し,地域の特徴を見出そうとする探求心や,ゆるキャラ作成を通じて他者への伝達力を養成しようと試みた。さらに,ゆるキャラを,「まちたんけん」のまとめ(第三者への伝達手段)として利用できる可能性を学生自身に探究させ,将来の教材研究への柔軟な姿勢を育てることを大きな目的の一つとした。<br><br>Ⅱ.実施概要 <br>講義は西南学院大学人間科学部児童教育学科で隔年開講されている「地理学Ⅰ」で,例年小学校生活科の「まちたんけん」をテーマに地域調査を実施している。本年度の調査地は長崎県島原市の中心部に細長く立地する5つの商店街,北より森岳商店街(島原最古の商店街で,観光地的雰囲気が漂う),天蓋式のサンシャイン中央街と一番街,住宅と店舗が混在する湊道商店街とみなと商店街とし,それぞれ班単位で聞き取り調査やシャッター率調査等の活動を行った(2017年6月17日実施)。なお,島原市での本調査前に,学内及び大学近隣の商店街において聞き取り調査等の事前トレーニングを行っている。<br><br>Ⅲ.結果 <br>クオリティに差が出たものの,ほとんどの班は商店街の特徴を捉えたゆるキャラを作成した。しかし,みなと商店街を調査した班のみ,擬人化もすることなく,上手な鯉を描いてきた。事前指導において,ゆるキャラの概要や将来の生活科の授業でどう活かせるか等の説明はしたが,「絵の上手さより,地域(商店街)の特徴を簡潔に反映した親しみのもてる図案とすべき」旨の説明を行わなかったことに原因があると考えられ,これを反省点として次回講義へ活かしたい。<br><br>Ⅳ.学生アンケート結果(まとめにかえて) <br>最終回講義時に,本講義で行った活動についてのアンケートを実施した。ゆるキャラ作成への問いに関しては,「ゆるキャラの特徴を作るために,より注意深く調査でき,よいと思う」等,概ね好意的な意見が多かった。一方で,「自分たちが調査した商店街では元々ゆるキャラがいたので,難しかった。」や「もっと違った形でまとめる調査結果があると思う。」等の意見もあった。生活科の授業にどう活かせるかへの問いには「自分たちの学びを集約したゆるキャラという方法は,子ども達の工夫を様々にわき立てると思う(原文ママ)」等の意見があった。アンケート結果より,本講義の取り組みは,教員志望の受講者に,「まちたんけん」の調査結果のまとめの方の,新たな方法の可能性を探求させる有意義な機会になったと考えられるが,PRキャラとしてのゆるキャラの特徴を事前指導で詳細に説明しないと,単なるキャラクターデザインに終始したり,その作成自体に否定的な意見が生まれたりと,課題も多く残った。<br><br>参考Website<br>1)須崎市役所(発行年不明):「しんじょう君OFFICIAL WEBSITE」,http://shinjokun.com/,2017年7月20日閲覧.&nbsp;<br>
著者
黒木 貴一 磯 望 後藤 健介 宗 建郎 黒田 圭介
出版者
福岡教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、国内の都市河川の御笠川、大分川、大淀川、白川を対象とし、地形図、空中写真、衛星データなどの時空間地理情報をGISで用いて、それらの氾濫原の土地条件とその変化を明らかにした。また過去に災害が生じた場所の土地条件も検討した。この結果、氾濫原に対し時空間地理情報を用いる解析では、堤外の土地条件の分布とその変化の特徴から、都市域の自然災害の量的・質的評価ができることが示された。またこれら解析方法は、海岸平野及び海外の氾濫原にも応用できることを確認した。