著者
宮下 精二
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.748-754, 2008-10-05 (Released:2017-08-04)
参考文献数
102
被引用文献数
1

昨年は,久保理論1)の発表50周年であり,それを記念していくつかのシンポジウムなどが開かれた.久保理論の成立過程やその発展に関しては,久保先生の還暦記念事業として発行された「統計力学の進歩」2)や,日本物理学会誌1995年11月号の久保先生の追悼特集3)で詳しく論じられている.今回の特別企画で,私に与えられたこのようなタイトルは,全くの私の力の及ぶ物ではなく,これまでの名解説の不完全な模倣になることは否めない.この問題に取り組んでいる多くの専門家に対して誠に恐縮の至りではあるが「感想」に近い記述をご容赦願いたい.
著者
宮下 精二
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.748-754, 2008
参考文献数
102

昨年は,久保理論<sup>1)</sup>の発表50周年であり,それを記念していくつかのシンポジウムなどが開かれた.久保理論の成立過程やその発展に関しては,久保先生の還暦記念事業として発行された「統計力学の進歩」<sup>2)</sup>や,日本物理学会誌1995年11月号の久保先生の追悼特集<sup>3)</sup>で詳しく論じられている.今回の特別企画で,私に与えられたこのようなタイトルは,全くの私の力の及ぶ物ではなく,これまでの名解説の不完全な模倣になることは否めない.この問題に取り組んでいる多くの専門家に対して誠に恐縮の至りではあるが「感想」に近い記述をご容赦願いたい.
著者
宮下 精二
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:07272997)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.279-288, 1999-11-20

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
田中 秀数 上田 寛 金道 浩一 太田 仁 宮下 精二 利根川 孝 内野倉 國光 本河 光博
出版者
東京工業大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

本研究において,我々は種々の空間構造をもち,スピンの大きさがS=1/2と小さく,量子効果が顕著な量子磁性体を精力的に開拓し,それらが強磁場中で示す新奇な磁気現象を多角的に研究した。以下に代表的な結果をあげる。スピンの対(ダイマー)が構成単位である,S=1/2のスピンダイマー系は磁場中で新奇な量子相転移を起こす。これらの磁性体の基底状態は,有限の励起ギャップをもった非磁性の1重項状態となる。強磁場中では,磁化をもつダイマーの3重項状態が重要になる。ダイマーの3重項はダイマー間の交換相互作用の横成分のために隣の位置に次々と移ってゆき,あたかも粒子のように振る舞う。この準粒子はボース粒子の性格をもちマグノン或いはトリプロンとよばれる。このとき磁場はマグノンの化学ポテンシャルとして,新しい役割を担う。我々はSrCu_2(BO_3)_2を初めとして種々の量子磁性体で,磁化曲線に磁場方向に依らない平坦領域(磁化プラトー)を発見した。磁化プラトーはマグノンの並進運動が抑制されるためにマグノンが周期的に配列するために起こる,量子多体効果である。磁化プラトーではマグノンのウィグナー結晶が形成されていると考えられる。我々はSrCu_2(BO_3)_2のNMR実験によって,実際にマグノンのウィグナー結晶を実証した。これに対して,磁場誘起反強磁性相転移はマグノンの並進運動が優先されるために起こるマグノンのボース・アインシュタイン凝縮(略してボース凝縮)と捉えることができる。これはマグノンの運動量空間での凝縮である。我々はTlCuCl_3の磁場誘起反強磁性相転移を種々の実験で詳細に調べ,理論解析と合わせて,これがマグノンのボース凝縮であることを実証した。本特定領域研究によって,磁性体は強磁場中で「量子力学的粒子の集団」としての性質を強く示す場合があることが明らかになった。これは磁性体の新概念をつくるものである。我々はまた,平成13年度から15年度にかけて国外研究者を交えた公開シンポジウムを3回開催し,平成16年に国際会議「International Symposium on Quantum Spin Systems」を開催した。更に3回の国際会議を協賛した。
著者
五神 真 宮野 健次郎 十倉 好紀 永長 直人 宮野 健次郎 宮下 精二 鹿野田 一司 内田 慎一 内野倉 国光 花村 栄一
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究(COE)
巻号頁・発行日
1996

本研究の目的は、固体中の電子が、そのスピンと電荷さらに格子系の自由度を通じて互いに強い相関を保ちながら運動することによって生じる多彩な物質相に注目し、その多体量子系としての物理学と外場や光による相の制御を利用した新しいエレクトロニクスを開拓することであった。遷移金属酸化物、有機系固体、半導体など幅広い物質系を対象とし、物質開発、物性測定、レーザー分光、X線光学さらに理論を互いに連携させながら研究を推進した。その結果、従来の物性物理学研究では伝導や磁性といった低エネルギーの物性と光領域の高エネルギーの物性が同じ土俵の上で議論される機会はなかったが、この両者の融合を図ることで、独自の研究領域を世界に先駆けて創始することができた。これにより、従来の一体問題の発想では捉えられない新規の現象を次々に発見し、それをきっかけとして、強相関電子系の磁気的性質、伝導、光学応答、非線形光学応答に関する知見とそれを記述する理論研究が格段に進歩した。本研究により、高品質の遷移金属酸化物結晶作製技術の確立、テラヘルツ領域から紫外線領域にわたる超高速分光技術の確立などの技術基盤整備をメンバーの強い連携のもとで進めた。これらを用いて、光誘起金属絶縁体転移の発見、金属絶縁体転移と超伝導機構の関連、軌道量子(オービトン)の発見、超高速光制御機能の発見などの成果を上げた。これらの成果は従来の半導体エレクトロニクスを超える次世代エレクトロニクスにつながる新しい工学を拓く成果であると言える。本研究によって、この東京大学の研究チームを世界的研究拠点としてアピールすることができた。この成果を踏まえ、国際研究拠点として本研究をさらに発展させるため平成13年4月に東京大学大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センターが発足した。