著者
永長 直人
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.520-529, 2004-08-05
参考文献数
49

物理学における幾何学の役割は対称性の問題と並んで今日も理論物理学の中心的な興昧であり続けている.一方で近年,固体中の電子輸送現象に現れる量子力学的な位相-ベリー位相-の役割がいろいろなところで認識されるようになってきた.ベリー位相は,量子力学における幾何学の役割を考えるうえで,最も基本的なものである.この解説では,その基礎概念,過去の仕事,そしてわれわれの研究を中心にその最近の発展について述べたい.
著者
永長 直人 十倉 好紀
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.413-421, 2009-06-05 (Released:2020-10-30)
参考文献数
65

磁性と誘電性は物性物理学の中でも最も基本的な性質であるが,意外にもその関連についてはほとんど研究が行われてこなかった.近年,磁性秩序と強誘電性が共存する物質-マルチフェロイックス物質-が相次いで発見され,両者の強い結合が研究されている.特にらせん磁性が強誘電性を引き起こすという新しい機構が実験・理論ともに確立してきた.「固体における相対論的効果」とも呼ぶべきこの現象に関して最新の研究成果を報告する.
著者
十倉 好紀 永長 直人
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.124-130, 2015-02-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
37

磁性体中のスピン渦構造(スキルミオン)は,1原子層当たりでも多数個(102〜104)のスピンから成るが,その特有のトポロジーのために安定なナノ粒子として振る舞う.MnSiなどのカイラル(掌性)構造をもつ磁性体で,2009年にそのスキルミオン格子配列が中性子回折で,そして翌年に個々のスキルミオンが電子顕微鏡で実空間観察されて以来,スキルミオンは多くの関心を集め,その発現理論,材料探索,デバイス機能設計などの研究が進行中である.特に,室温でのスキルミオン観測,材料組成によるスピン渦のサイズや向きの制御,微小電流によるスキルミオンの駆動,マイクロ波整流効果の発見など,新デバイスの実現を期待させる成果も次々と報告され始めている.本稿では,その基礎学理から出発し,最新のスキルミオン研究成果を紹介し,次世代デバイスへの応用の展望を述べる.
著者
永長 直人
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.520-529, 2004-08-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
47
被引用文献数
3

物理学における幾何学の役割は対称性の問題と並んで今日も理論物理学の中心的な興昧であり続けている.一方で近年,固体中の電子輸送現象に現れる量子力学的な位相-ベリー位相-の役割がいろいろなところで認識されるようになってきた.ベリー位相は,量子力学における幾何学の役割を考えるうえで,最も基本的なものである.この解説では,その基礎概念,過去の仕事,そしてわれわれの研究を中心にその最近の発展について述べたい.
著者
永長 直人
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.71, no.11, pp.1403-1406, 2002-11-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
1
被引用文献数
2

基礎物理学的にも工学的応用でも重要なテーマである超伝導の墓礎理論を解説する.超伝導体の示す不思議な性質,固体中の多電子の量子力学を記述する第2量子化法,そしてBCS理論を初学者にも理解でぎるように直観的な説明を交えながら説明する.
著者
内田 慎一 永長 直人
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.182-186, 2003-03-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
26

銅酸化物の高温超伝導体にはフォノンが関与せず,電子間の強い相互作用が主役であると信じられてきた.最近,高温超伝導体中の電子が,明らかにフォノンと強く相互作用しているという光電子分光の実験結果がNature誌(2001年8月)に発表された.また,MgB2やC60での高温超伝導の報告は,フォノンの役割が決して無視できないことを示唆している.銅酸化物において,フォノンが無視されてきた経緯,フォノンがかかわっていると考えられる実験事実,そして,強い電子相関の下で,電子-格子相互作用をどのように考えればよいかについて述べる.
著者
五神 真 宮野 健次郎 十倉 好紀 永長 直人 宮野 健次郎 宮下 精二 鹿野田 一司 内田 慎一 内野倉 国光 花村 栄一
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究(COE)
巻号頁・発行日
1996

本研究の目的は、固体中の電子が、そのスピンと電荷さらに格子系の自由度を通じて互いに強い相関を保ちながら運動することによって生じる多彩な物質相に注目し、その多体量子系としての物理学と外場や光による相の制御を利用した新しいエレクトロニクスを開拓することであった。遷移金属酸化物、有機系固体、半導体など幅広い物質系を対象とし、物質開発、物性測定、レーザー分光、X線光学さらに理論を互いに連携させながら研究を推進した。その結果、従来の物性物理学研究では伝導や磁性といった低エネルギーの物性と光領域の高エネルギーの物性が同じ土俵の上で議論される機会はなかったが、この両者の融合を図ることで、独自の研究領域を世界に先駆けて創始することができた。これにより、従来の一体問題の発想では捉えられない新規の現象を次々に発見し、それをきっかけとして、強相関電子系の磁気的性質、伝導、光学応答、非線形光学応答に関する知見とそれを記述する理論研究が格段に進歩した。本研究により、高品質の遷移金属酸化物結晶作製技術の確立、テラヘルツ領域から紫外線領域にわたる超高速分光技術の確立などの技術基盤整備をメンバーの強い連携のもとで進めた。これらを用いて、光誘起金属絶縁体転移の発見、金属絶縁体転移と超伝導機構の関連、軌道量子(オービトン)の発見、超高速光制御機能の発見などの成果を上げた。これらの成果は従来の半導体エレクトロニクスを超える次世代エレクトロニクスにつながる新しい工学を拓く成果であると言える。本研究によって、この東京大学の研究チームを世界的研究拠点としてアピールすることができた。この成果を踏まえ、国際研究拠点として本研究をさらに発展させるため平成13年4月に東京大学大学院工学系研究科附属量子相エレクトロニクス研究センターが発足した。