著者
寺園 淳
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.214-228, 2022-05-31 (Released:2023-05-31)
参考文献数
33

近年,リチウムイオン電池は多くの電気製品や自動車に使われており,日常生活に欠かせないものとなっている。一方で,粗大ごみ・不燃ごみを処理する一般廃棄物処理施設やリサイクル施設での火災等が増加している。リチウムイオン電池は資源有効利用促進法に基づく自主回収の対象ではあるが,対象外の品目,電池一体型製品,回収率の目標がないことなど,多くの課題がある。リチウムイオン電池のマテリアルフローに関しては,年間排出量約 1.6 万 ton (2019 年) とする環境省推計がある一方,排出先の情報が限られており,処理施設に混入する量の推計精度を向上させる必要がある。火災等の発生を背景として,環境省は排出状況や自治体の先進事例を調査して 「リチウム蓄電池等処理困難物対策集」 をとりまとめ,経済産業省でも資源有効利用促進法の在り方に関する検討を行なってきた。今後の課題として,安全確保を考慮した回収の責務と意義の見直しの必要性を論じた。
著者
吉田 綾 田崎 智宏 寺園 淳
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会研究発表会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.29, 2007

使用済みパソコンについて、日本における家庭用パソコンのリサイクル制度の施行前と施行後のマテリアルフローを、マテリアルフローデータにおける誤差を最小化することによって推定した。また、日本でリユース(再使用)されるパソコンと中古品として輸出されるパソコンの台数についても推定した。推計結果から、デスクトップパソコンに比べてノートパソコンの方が国内でリユースされやすいこと、2001年から2004年にかけて増加した排出台数2590千台はほとんど国内廃棄物処理ではなくリユースされており、リユース分も多くが輸出されていることが明らかになった。家庭やリース・レンタル会社から古物商へ引き取られる量が増えており、それが輸出台数増加につながっていると考えられた。
著者
寺園 淳 酒井 伸一 高月 紘
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.192-210, 1999-05-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
24
被引用文献数
1

阪神・淡路大震災では, 地震発生後に被災地の広範囲で一般環境大気中のアスベスト濃度が上昇した。この原因を探るために, 被災した建築物の解体に伴うアスベスト飛散について, 実測を含めて実態を調査し, 拡散モデルを用いて飛散の影響を検討した。まず, 自治体の協力を得て吹付けアスベスト使用状況を詳細に調査し, S造建築物での多くの使用事例や吹付けアスベスト原則禁止後も使用されていた事例などを明らかにした。また, 一般環境濃度上昇の原因として, 吹付けアスベストの除去, 除去後の解体, 並びに非除去解体の現場におけるアスベスト飛散をそれぞれ調べたが, 周囲に最も飛散し影響が懸念されたのは非除去解体であった。更に, 被災地の推定アスベスト蓄積量および飛散量から, プルーム・パフモデルを用いて, 環境庁モニタリングの各測定点におけるアスベスト濃度上昇の寄与を試算した。その結果, アスベスト濃度の試算値と実測値の間には弱い正の相関関係がみられ, 試算から実測値のオーダーをほぼ説明できることが示唆されたとともに, アスベスト飛散現場から周辺環境の濃度推定に役立つ情報が提供された。最後に, 非除去解体によるアスベストの飛散を避けるために, 法規制とともに除去費用の負担軽減措置などの必要性を示した。
著者
古積 博・岩田 雄策 山﨑 ゆきみ 寺園 淳
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.113-120, 2013-04-15 (Released:2016-07-30)
参考文献数
7

ここ数年,金属スクラップの火災が輸送中(船舶,陸上),港湾施設で頻発している.そこで,最近の火災事例を現地調査し,また,問題点,火災原因を明らかにするため,各種危険性評価実験を行った.金属スクラップ自体は容易に火災になることはないが,火災となった場合,高温となり,消防隊が接近しにくいこと,消火までに長時間を要することも多く,海上交通の安全や環境への影響等が懸念されている.ここでは,著者らが現地調査を行ったいくつかの事例を紹介するとともに,金属スクラップ火災の現状と消火活動上の問題点について実験的に検討した.その結果,電池類の短絡,トナー粉の摩擦等による発火の可能性があることがわかった.