著者
長谷川 誠紀
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

家免を用いた片側肺結紮モデルの確立本実験に入る前に、適度な肺障害を起こすモデルの確立を行った。一定の肺障害を再現できるモデルを作成するため試行錯誤した結果、(1)家免の体温保持が極めて重要である。体温が35℃以下になると障害が大幅に減少する。このため、温水潅流式ブランケットを使用、直腸温を38℃に保持した。(2)肺門をクランプする器具が重要である。家免の肺血管・気管支は極めて脆弱なため、器具によってはクランプによる組織損傷で実験結果が左右される。最終的に、バクスター社製ラバークッション付きクランプ鈕子を採用した。(3)肺門遮断時間は120分が適当である。我々の使用したモデルは、左肺動静脈、気管支の遮断にて温阻血を加えるものであるが、この温阻血時間で障害の程度を調節できる。温阻血時間を90分とすると、再潅流120分後の純酸素呼吸による動脈血ガスは平均10mmHg程度となり、コントロール群の差が有意に出ない恐れがある。一方、温阻血時間を120分とすると、再潅流120分後の純酸素呼吸による動脈血ガスは平均110mmHg程度となり、ネオプテリンが有効であれば有意差を持って高い酸素化を示す可能性がある。以上のようにモデルを確定し、ネオプテリンを投与する実験を開始した。以上のように、ネオプテリンは家免肺門クランプによる温阻血障害を全く抑制しなかった。われわれはネオプテリンのラットにおける脳虚血再潅流障害抑制効果を既に証明しており、今回の結果が種差によるものか臓器の違いによるものかを明らかにする必要がある。われわれは続いて酸化型ネオプテリンを用いて実験を重ねて行く方針である。
著者
高橋 剛士 福瀬 達郎 倉橋 康典 木場 崇之 高橋 鮎子 福田 正順 妻鹿 成治 板東 徹 田中 文啓 平田 敏樹 越久 仁敬 長谷川 誠紀 寺田 泰二 池 修 和田 洋巳 人見 滋樹
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.685-689, 1999-07-15 (Released:2009-11-11)
参考文献数
11

上肢に症状を呈したBuer墓er病に対して胸腔鏡下交感神経切除術が奏功した一例を経験したので報告する.症例は46歳, 男性.一日約40本, 25年の喫煙歴があった.約半年前から両上肢の指末梢側を中心として痺れ, 冷感が出現し始めた.Buerger病との診断にて星状神経節ブロック術を受けたが症状の改善は一時的で, 疼痛も増悪してきたため両側胸部交感神経節切除術を施行した。術直後より癖痛, 痺れ, 冷感の著しい改善を認め, 術後6週間を経た時点では痺れ, 冷感は全く認められず, 術前潰瘍化していた指の完全治癒を認めた.サーモグラフィーにても上肢末梢皮膚温の著明な上昇を認めた.レーザードップラー血流計を用いて指末梢側の組織間血流を計測したところ, 症状の改善とよく一致して血流の増加を認めた.このことからBuerger病における術前術後の組織間循環の評価に際してレーザードップラー血流計が有用であると考えられた.
著者
上林 孝豊 柳原 一広 宮原 亮 板東 徹 長谷川 誠紀 乾 健二 和田 洋巳
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.566-569, 2003-07-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
12
被引用文献数
2

目的・対象: 当院で手術を施行し, 病理組織学的に肺カルチノイドと診断された20症例 (定型15例, 非定型5例) の臨床的検討を行った.結果: 定型, 非定型の5年生存率は, それぞれ86.6%, 60%であった.定型の1期症例は術式に関わらず全例, 無再発で生存中である.非定型は全例, 葉切除および肺門縦隔リンパ節郭清が行われていた.1期3症例は, いずれも無再発で生存中であるが, T2N2のIIIA期症例, T4NOのIIIB期症例は, 集学的治療にも関わらずそれぞれ術後10ヵ月後, 61ヵ月後に遠隔転移にて癌死した.定型では観察期間1~250ヵ月間 (平均観察期間72.8ヵ月) において, 5年生存率は86.6%であった.非定型では観察期間10~251ヵ月間 (平均観察期間121, 4ヵ月) において5年生存率は60%であった.まとめ: T2の定型カルチノイドに対する縮小手術の可能が示唆された.またIII期以上の非定型カルチノイドに対しては有効な集学的治療の確立が望まれる.
著者
大槻 剛巳 中野 孝司 長谷川 誠紀 岡田 守人 辻村 亨 関戸 好孝 豊國 伸哉 西本 寛 福岡 和也 田中 文啓 熊谷 直子 前田 恵 松崎 秀紀 李 順姫 西村 泰光
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.543-552, 2011 (Released:2011-06-24)
参考文献数
73
被引用文献数
1

The research project entitled “Comprehensive approach on asbestos-related diseases” supported by the “Special Coordination Funds for Promoting Science and Technology (H18-1-3-3-1)” began in 2006 and was completed at the end of the Japanese fiscal year of 2010. This project included four parts; (1) malignant mesothelioma (MM) cases and specimen registration, (2) development of procedures for the early diagnosis of MM, (3) commencement of clinical investigations including multimodal approaches, and (4) basic research comprising three components; (i) cellular and molecular characterization of mesothelioma cells, (ii) immunological effects of asbestos, and (iii) elucidation of asbestos-induced carcinogenesis using animal models. In this special issue of the Japanese Journal of Hygiene, we briefly introduce the achievements of our project. The second and third parts and the third component of the fourth part are described in other manuscripts written by Professors Fukuoka, Hasegawa, and Toyokuni. In this manuscript, we introduce a brief summary of the first part “MM cases and specimen registration”, the first component of the fourth part “Cellular and molecular characterization of mesothelioma cells” and the second component of the fourth part “Immunological effects of asbestos”. In addition, a previous special issue presented by the Study Group of Fibrous and Particulate Substances (SGFPS) (chaired by Professor Otsuki, Kawasaki Medical School, Japan) for the Japanese Society of Hygiene and published in Environmental Health and Preventive Medicine Volume 13, 2008, included reviews of the aforementioned first component of the fourth part of the project. Taken together, our project led medical investigations regarding asbestos and MM progress and contributed towards the care and examination of patients with asbestos-related diseases during these five years. Further investigations are required to facilitate the development of preventive measures and the cure of asbestos-related diseases, particularly in Japan, where asbestos-related diseases are predicted to increase in the next 10 to 20 years.
著者
長谷川 誠紀 田中 文啓 岡田 守人 中野 孝司
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.93-96, 2008-04-20
被引用文献数
5 4

背景.平成18年度文部科学省科学技術振興調整費「アスベスト関連疾患への総括的取り組み」の一環として,我が国における悪性胸膜中皮腫に対する集学的治療の現状を調査した.対象と方法.2002年1月〜2006年12月の5年間に悪性胸膜中皮腫に対して胸膜肺全摘術(EPP)を完遂した症例のみを対象とした.アンケートは本プロトコールへの参加表明施設とJCOG参加施設の計69施設に送付し,うち61施設から返答を得た.結果.対象5年間にEPPを完遂した症例は計171例,男性/女性154例/17例,右/左91例/80例,年齢14〜78歳,平均59歳.手術後30日以内の死亡は1例(間質性肺炎),在院死は6例(腫瘍再発4例.MRSA膿胸1例,肺梗塞1例).シスプラチンを含む術前化学療法を行った症例は38例,うち12例ではシスプラチンを含む術前化学療法と術後片側全胸郭照射を完遂した.術後生存期間の中央値は23ヶ月であった.結論.我が国の悪性胸腹中皮腫に対するEPPは症例数の増加と安全性の改善が確認された.しかし,集学的治療のfeasibilityに関しては現時点でなお十分なデータが存在しない.