著者
越久 仁敬 岡田 泰昌 平田 豊 池谷 裕二
出版者
兵庫医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

吸息活動は、延髄内のpre-Botzingercomplex(preBotC)という場所で起こる。従来の説では、呼吸リズムはpreBotCの神経細胞(ニューロン)が作り出しており、脳のもう一つの主要な構成細胞であるグリア細胞は、ニューロン周囲の細胞外環境を維持する程度の役割しか演じていないと考えられていた。本研究において、我々は、吸息時に活動するニューロンに先行して活動を開始するアストロサイト(グリア細胞の一種)を発見した。ニューロン活動のみを抑えるフグ毒のテトロドトキシンを投与すると、ニューロン活動および呼吸神経出力は消失したが、これらのアストロサイトの周期的な自発活動は残った。さらに、光を照射すると細胞を活性化させるイオンチャネルであるチャネルロドプシン2を、アストロサイトにのみ発現させた遺伝子改変マウスを用い、preBotC領域のアストロサイトを光照射で興奮させると、吸息性ニューロンの活動を惹起させることができた。これらの結果は、アストロサイトがpreBotC領域において呼吸リズム形成に積極的に関与していることを示唆している。
著者
高橋 剛士 福瀬 達郎 倉橋 康典 木場 崇之 高橋 鮎子 福田 正順 妻鹿 成治 板東 徹 田中 文啓 平田 敏樹 越久 仁敬 長谷川 誠紀 寺田 泰二 池 修 和田 洋巳 人見 滋樹
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.685-689, 1999-07-15 (Released:2009-11-11)
参考文献数
11

上肢に症状を呈したBuer墓er病に対して胸腔鏡下交感神経切除術が奏功した一例を経験したので報告する.症例は46歳, 男性.一日約40本, 25年の喫煙歴があった.約半年前から両上肢の指末梢側を中心として痺れ, 冷感が出現し始めた.Buerger病との診断にて星状神経節ブロック術を受けたが症状の改善は一時的で, 疼痛も増悪してきたため両側胸部交感神経節切除術を施行した。術直後より癖痛, 痺れ, 冷感の著しい改善を認め, 術後6週間を経た時点では痺れ, 冷感は全く認められず, 術前潰瘍化していた指の完全治癒を認めた.サーモグラフィーにても上肢末梢皮膚温の著明な上昇を認めた.レーザードップラー血流計を用いて指末梢側の組織間血流を計測したところ, 症状の改善とよく一致して血流の増加を認めた.このことからBuerger病における術前術後の組織間循環の評価に際してレーザードップラー血流計が有用であると考えられた.
著者
越久 仁敬
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.172-176, 2022-04-28 (Released:2022-04-28)
参考文献数
20

呼吸困難(息苦しさ)とは,呼吸に伴う違和感,不快感または苦痛感である.呼吸困難感の大きさは,基本的には呼吸努力の大きさによって決まる.くわえて,努力に見合う換気量が得られているか否かも関係し,さらには,低酸素血症や高炭酸ガス血症も呼吸努力の大きさとは独立して呼吸困難感を生じさせる.呼吸努力の大きさ,低酸素血症,高炭酸ガス血症といった情報は,脳幹において統合され,上行覚醒系を通って大脳辺縁系や大脳皮質に伝えられ,それらの刺激の大きさをどのくらい大きいと感じるかという感度(息苦しさの感度)により,最終的な呼吸困難感の大きさが決まる.したがって,呼吸困難に対処するためには,呼吸困難の知覚や日常生活への影響だけでなく,精神的な苦痛を考慮する必要がある.
著者
石黒 真木夫 三分一 史和 越久 仁敬 岡田 泰昌
出版者
統計数理研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

イメージングデータの事前処理として,画像強度の不均性やモーションアーチファクトなどの実用的な補正方法の開発を行った。そして,イメージングデータの分散や時間依存相互相関などの統計量マップを用いて脳幹内の呼吸活動生成部位におけるニューロンとアストロサイトを効率的に識別する方法を確立した。生理学的には遅い周期で活動し,ニューロンネットワークと弱く結合するアストロサイトネットワークの存在を示唆する結果や,呼吸バースト毎に活性化するニューロンの組み合わせが異なるという知見を得ることが出来,今後のニューロンネットワークの数理モデリング研究に新たなパラダイムをもたらす可能性のある成果を得ることが出来た。