著者
小久保 英一郎 井田 茂
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.349-356, 2000-05-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
16

われわれにもっとも身近な天体,月は実は衛星としては特異なものである.その起源のシナリオとして近年有力視されているのは巨大衝突説である.巨大衝突説では,火星くらいの大きさの天体が原始地球に衝突し,その衝突により形成された原始月円盤から月が形成される.この原始月円盤からの月形成の大規模N体シミュレーションを行い,原始月円盤がどのような時間スケールで,どのように進化するのかを調べた.その結果,円盤の赤道面上で円軌道をもつ1個の大きな月が約1ヵ月かけてロッシュ限界のすぐ外側に形成されることがわかった.また,月の質量は初期円盤の単位質量当たりの角運動量によって決まることもわかった.ここでは明らかになった月形成過程の運動学的なフレームワークを紹介する.
著者
玄田 英典 小久保 英一郎 井田 茂
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会秋季講演会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.35, 2007

地球型惑星形成の後期には、原始惑星同士の衝突が頻繁に起こるステージが存在する。本研究では、SPH法を用いて様々な衝突条件で原始惑星の衝突を計算し、合体条件などを系統的に調べ定式化した。その結果、過去の研究でわかっていた衝突イベントの約半数が合体しない衝突であることがわかった。合体条件を原始惑星の軌道進化に組込み、非完全合体が地球型惑星の特性(個数・質量・自転など)に与える影響を明らかにする。
著者
斎藤 貴之 台坂 博 出田 誠 岡本 崇 小久保 英一郎 和田 桂一 富阪 幸治 牧野 淳一郎 吉田 直紀
出版者
日本流体力学会
雑誌
日本流体力学会年会講演論文集 (ISSN:13428004)
巻号頁・発行日
vol.2006, 2006-09-05

In this paper, we introduce Project "Origin of the Milkyway". This project aims at reliable modeling of the formation history of our Galaxy (i.e., the Milkyway), as a typical spiral galaxy, with the mass resolution 2-3 orders of magnitude higher than what has been achieved so far. In order to achieve such state-of-the-art simulations, we construct two beowulf type PC-clusters with GRAPE-6A/7, and we develop a new N-body/SPH code for parallel computing.
著者
和田 桂一 小久保 英一郎 富阪幸治 台坂 博 斎藤 貴之 牧野淳一郎 吉田 直紀
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.1225-1228, 2004-12-15

大規模理論天文シミュレーションによる「天の川創成プロジェクト」とその背景にある銀河形成の問題について紹介します。プロジェクトでは、詳細な理論モデル、計算手法と高速の専用並列計算機を組み合わせ、宇宙初期から現在まで、銀河の形成・進化過程を高精度でシミュレーションすることにより、(1) 我々の銀河系=天の川の3次元構造とその形成過程、および(2)銀河の形態の起源、を初めて明らかにすることを目指しています。第I 期計画では、次世代専用超並列計算機GRAPE-DRと高速ホスト計算機、高速ネットワークを組み合わせた計算能力1ペタフロップスの「天の川数値解析装置」を国立天文台内に構築し、現状の最大規模のシミュレーションの100倍規模のシミュレーションを行います。 これにより銀河形成問題にブレークスルーをもたらすことができるはずです。