著者
小井土 彰宏
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.194-209, 2014 (Released:2015-09-30)
参考文献数
24

合衆国に現在約1,150万人滞在するといわれる非正規移民の社会運動は, 2006年以来急激に台頭し, その後も持続的な潮流となってきた. 一斉検挙や強制送還に反対し, 正規化を求める運動は, 一見すると国民国家の枠内での権利獲得の運動とも思える. だが, この運動は移民と安全保障に関するアメリカ国家の枠組みの根本的再編成というかたちをとって, 新たなグローバリズムが社会に浸透したことへの対抗運動という性格をもっている. 他方, この運動は, 市場原理志向の再編成の結果生み出される経済・社会的な排除の論理に対抗して, さまざまな水準のローカルな規制やトランスナショナルな交渉によるグローバル化の諸影響への抵抗の戦略という性格も合わせもってきた. 本稿では, 移民管理レジームとその作動様式をまず概観し, この新たな統治性の様式の出現の衝撃がどのような運動の行動論理と戦略を生み出すかを分析していく. その一方, グローバルな市場原理の地域社会への浸透に対抗する移民の運動の組織や戦略の特質について, 類型的に整理・分析することで検討していく. 最後に, 2009~10年の現地調査に基づくロサンゼルス郡での2つの対照的な一斉検挙を分析することで, このグローバルな移民統治様式と市場の論理が相互作用しながら移民コミュニティにどのような影響を与えるかを例証していく.
著者
関 孝敏 松田 光一 平澤 和司 轟 亮 山内 健治 岩崎 一孝 小井土 彰宏
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

申請テーマである「北海道南西沖地震に伴う家族生活と地域生活の破壊と再組織化」に関して、次の諸点が明らかになった。1)家族生活の破壊について。奥尻町における死者(不明者を含む)175名中107名(61%)が青苗地区に集中した。とくに70戸余の旧5区は、津波により地域社会が全減したため、犠牲者が多くみられた。青苗地区の被災者(家族)を中心に聞き取り調査を行った結果、家族の解体、家族成員の島外への転出、家族成員の病死・精神的後遺症・内体的疾患などが被災後みられた。2)地域生活の破壊。10年前の日本海中都沖地震による津波の経験(2名の犠牲者があり、防潮堤の一部整備が行われた)は、地域住民個々においては適切な避難行動につながる事例がみられたが、地域社会としては残念ながら生かされなかったように思われる。この原因は、何よりも、経験をはるかに超えた大規模な複合災害であったことよる。しかし、それに加えて、海岸に近接した漁業集落特有の形態が、災害のあり方とそのための防災システムのあり方を課題として鮮明にした。3)家族生活の再建。義援金の規模が被災家族における新築の恒久住宅建設を可能にした。多くの被災家族にとって、住宅再建が家族生活の再建にとって最大の課題であった。この住宅再建を通じて、職業と年齢によって家族生活の再組織化のあり方は異なることが鮮明になった。とくに、高齢者世帯家族、自営業家族、漁業経営者家族に顕著な特徴がみられた。4)地域社会の再建。災害前の住宅地図を手掛かりに、職業別の社会地図を作成し、地域社会の復元作業を試みた。その結果、被災後の住宅地図は、旧地区の住民が混住化しつつ地区成員の再組織化が行われたり、職業別分布の大幅な組み替えが見られた。とくに、商業者や自営業者は海側地区、民宿・旅館が高台地区、漁家と高齢者は両地区に混在することが明らかになった。
著者
小井土 彰宏
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.194-209, 2014

合衆国に現在約1,150万人滞在するといわれる非正規移民の社会運動は, 2006年以来急激に台頭し, その後も持続的な潮流となってきた. 一斉検挙や強制送還に反対し, 正規化を求める運動は, 一見すると国民国家の枠内での権利獲得の運動とも思える. だが, この運動は移民と安全保障に関するアメリカ国家の枠組みの根本的再編成というかたちをとって, 新たなグローバリズムが社会に浸透したことへの対抗運動という性格をもっている. 他方, この運動は, 市場原理志向の再編成の結果生み出される経済・社会的な排除の論理に対抗して, さまざまな水準のローカルな規制やトランスナショナルな交渉によるグローバル化の諸影響への抵抗の戦略という性格も合わせもってきた. 本稿では, 移民管理レジームとその作動様式をまず概観し, この新たな統治性の様式の出現の衝撃がどのような運動の行動論理と戦略を生み出すかを分析していく. その一方, グローバルな市場原理の地域社会への浸透に対抗する移民の運動の組織や戦略の特質について, 類型的に整理・分析することで検討していく. 最後に, 2009~10年の現地調査に基づくロサンゼルス郡での2つの対照的な一斉検挙を分析することで, このグローバルな移民統治様式と市場の論理が相互作用しながら移民コミュニティにどのような影響を与えるかを例証していく.
著者
小井土 彰宏
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.194-209, 2014

合衆国に現在約1,150万人滞在するといわれる非正規移民の社会運動は, 2006年以来急激に台頭し, その後も持続的な潮流となってきた. 一斉検挙や強制送還に反対し, 正規化を求める運動は, 一見すると国民国家の枠内での権利獲得の運動とも思える. だが, この運動は移民と安全保障に関するアメリカ国家の枠組みの根本的再編成というかたちをとって, 新たなグローバリズムが社会に浸透したことへの対抗運動という性格をもっている. 他方, この運動は, 市場原理志向の再編成の結果生み出される経済・社会的な排除の論理に対抗して, さまざまな水準のローカルな規制やトランスナショナルな交渉によるグローバル化の諸影響への抵抗の戦略という性格も合わせもってきた. 本稿では, 移民管理レジームとその作動様式をまず概観し, この新たな統治性の様式の出現の衝撃がどのような運動の行動論理と戦略を生み出すかを分析していく. その一方, グローバルな市場原理の地域社会への浸透に対抗する移民の運動の組織や戦略の特質について, 類型的に整理・分析することで検討していく. 最後に, 2009~10年の現地調査に基づくロサンゼルス郡での2つの対照的な一斉検挙を分析することで, このグローバルな移民統治様式と市場の論理が相互作用しながら移民コミュニティにどのような影響を与えるかを例証していく.