著者
関 孝敏 松田 光一 平澤 和司 轟 亮 山内 健治 岩崎 一孝 小井土 彰宏
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

申請テーマである「北海道南西沖地震に伴う家族生活と地域生活の破壊と再組織化」に関して、次の諸点が明らかになった。1)家族生活の破壊について。奥尻町における死者(不明者を含む)175名中107名(61%)が青苗地区に集中した。とくに70戸余の旧5区は、津波により地域社会が全減したため、犠牲者が多くみられた。青苗地区の被災者(家族)を中心に聞き取り調査を行った結果、家族の解体、家族成員の島外への転出、家族成員の病死・精神的後遺症・内体的疾患などが被災後みられた。2)地域生活の破壊。10年前の日本海中都沖地震による津波の経験(2名の犠牲者があり、防潮堤の一部整備が行われた)は、地域住民個々においては適切な避難行動につながる事例がみられたが、地域社会としては残念ながら生かされなかったように思われる。この原因は、何よりも、経験をはるかに超えた大規模な複合災害であったことよる。しかし、それに加えて、海岸に近接した漁業集落特有の形態が、災害のあり方とそのための防災システムのあり方を課題として鮮明にした。3)家族生活の再建。義援金の規模が被災家族における新築の恒久住宅建設を可能にした。多くの被災家族にとって、住宅再建が家族生活の再建にとって最大の課題であった。この住宅再建を通じて、職業と年齢によって家族生活の再組織化のあり方は異なることが鮮明になった。とくに、高齢者世帯家族、自営業家族、漁業経営者家族に顕著な特徴がみられた。4)地域社会の再建。災害前の住宅地図を手掛かりに、職業別の社会地図を作成し、地域社会の復元作業を試みた。その結果、被災後の住宅地図は、旧地区の住民が混住化しつつ地区成員の再組織化が行われたり、職業別分布の大幅な組み替えが見られた。とくに、商業者や自営業者は海側地区、民宿・旅館が高台地区、漁家と高齢者は両地区に混在することが明らかになった。
著者
山内 健治 仲座 栄三
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

沖縄県下における台風・暴風・雨・干ばつなど、主に気象環境を、民俗レベルで、人々が観察し、予兆してきたかの民俗知識のデータベース化を意図した研究の一環である。同県の市町村史・誌、字史・誌に記録された気象に関する民俗知識・予兆伝承をリストアップしデータベース化した。また、気象予兆知識が実際に機能しているか、村落社会の中で語られているのかを確認するためにインテンシブな民俗調査を実施した。
著者
山内 健治
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.243-243, 2008

沖縄戦における集団自決壕からの生存者に関する聞き取り内容の社会人類学的分析である。沖縄本島で1945年4月2日に起こった、通称、チビチリガマとよばれる83名の死者をだした避難壕の様子と日本軍・米軍との人間関係の構造を分析し、人類学者としてのその意味を考察する。事例は、チビチリガマからの生還者・ハワイ・オアフ島在住・上原進助氏のライフヒスリーを中心とする。