著者
新井 潤美 西川 克之 松本 朗 小山 太一 佐々木 徹 丹治 愛 草光 俊雄 加藤 めぐみ 前 協子 安藤 和弘
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

① 1981年の『炎のランナー』以降、サッチャー政権下のイギリスは、のちにヘリテージ映画と呼ばれることになる多数の映画を生み出していく。代表的なヘリテージ映画を解釈しながら、それらの映画がどのような主題的、映像的、イデオロギー的特徴を共有しているのかを具体的に議論した。② その一方で、ヘリテージ映画にかんする代表的な批評論文(とくにアンドリュー・ヒグソンのもの)を読み、自分たちが進めてきた個々の映画の作品論に照らして、その一般的な定義を批判的に検証し、それがもつ問題点をあぶり出すとともに、ヘリテージ映画にかんする新たな定義にむけて議論を重ねた。
著者
小山 太一
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

昨年度における資料収集およびアントニー・ポウエルの戦前諸作品の研究を踏まえて、本年度は、論文The Novels of Anthony Powell : A Critical Study(90,000 words、未発表)を完成させることにもっぱら努力を傾注した。本論文は、まずポウエルの喜劇小説創作の傾向と諸問題、文学史的コンテクストを整理解説したうえで、ポウエルの戦前・戦後の全テクストに詳細な読解を加え、とりわけ戦後の膨大な12連作『時間の踊り』(A Dance to the Music of Time,1951-1975)の全体像を一望の下に置いたうえでその語りのテクニックとテーマを掘り下げるものである。その論述過程においては、喜劇小説家ポウエルの長いキャリアに「コミックなるものの構造転換、喜劇の持つ教育機能をみずから脱構築してゆく語り」という一貫したテーマを見出し、彼が英国の社会喜劇小説の伝統にもたらした革新(あるいは英国の社会喜劇小説の伝統への反逆)の持つ意味とその限界を明らかにすることを第一の目標とした。本論文は、現在、英国アントニー・ポウエル協会(http://www.anthonypowell.org)を通じて英国ないし米国の出版社との出版交渉を準備中である。また、本年度は、ポウエル以降の英国小説における「コミックなるもの」のありかたにも視野を広げ、文学史的通観を現代まで接続する試みも開始した。論文「イアン・マキューアンにおけるコミックの要素」は、現代において創作活動を展開している英国小説家について、彼の小説の語りの構造そのものに内在する不条理な喜劇性を考察したものである。