- 著者
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小川 真人
高橋 登
- 出版者
- 一般社団法人 日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.1, pp.85-94, 2012-03-20 (Released:2017-07-27)
本研究では,「心の理論」とふり遊び,役割遊びの関係について実験的に検討した。モジュール説が想定するようにふりと「心の理論」が同一のメカニズムで説明可能であるとすれば,ふり遊びと心の理論との間に直接の関連が見られるであろうし,理論説やシミュレーション説が妥当であるとすれば,その間に直接の関連は見られないであろう。ただし,シミュレーション説による説明が妥当なものであるとすれば,ふり遊びは役割遊びを可能にすることを通じて「心の理論」の獲得を助けるであろう。本研究では,実験1において誤信念課題を実施し,あわせてふり遊びと役割遊びの課題を実施することで,「心の理論」とふり遊び,役割遊びの間の関係を実験的に検討し,実験2では,短期縦断的にふり遊びと役割遊びを子ども達に経験させ,それが子どもたちの「心の理論」獲得を助けることになるのか検討した。結果,実験1ではふり遊びと「心の理論」の関連は見られず,役割遊びにおいてのみ「心の理論」との関連が見られた。また,ふり遊びと役割遊びにおいても関連が見られた。さらに実験2ではふり遊び訓練の効果は見られず,役割遊びを訓練的に行うことで「心の理論」課題の得点が高くなった。本研究では,ふりにおける物の見立てや,現実とふりの区別と「心の理論」との関連は見られず,役割遊びにおいて他者の視点に立ち,そこで他者の感情や行動を考えることが「心の理論」と関連すると考えられた。