著者
森本 慎一郎 朴 炳植 劉 薇 小杉 隆信
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌) (ISSN:03854213)
巻号頁・発行日
vol.124, no.11, pp.1307-1316, 2004 (Released:2005-02-01)
参考文献数
24

For the purpose of mitigating carbon dioxide emissions, three renewable energy transportation systems are proposed in which methanol is synthesized by use of wind power generation energy at an oversea and is transported to Japan to be used for a power generation. The proposed systems are the following three systems: (1) wind energy and captured CO2 utilization system, (2) wind energy and coal utilization system, and (3) wind energy and biomass utilization system. The characteristic and cost of the proposed systems’ components such as a wind power generation and a methanol synthesis plants are investigated, and so are the energy and carbon flows of the systems, assuming that the wind power generation plant is constructed at the eastern coast of Russia. Major indicators such as energy efficiency, methanol cost, CO2 reduction cost, etc., of the proposed systems are evaluated together with those of a similar CO2 recycling system utilizing hydraulic power. On the basis of the evaluation results, the wind energy and biomass utilization system is shown to be the most excellent among the evaluated systems from the viewpoints of the CO2 reduction cost. When LNG cost is increased, its estimated CO2 reduction cost islower than that of a CO2 recovery system adopted to a conventional LNG-fired power plant. Consequently, the proposed system is expected to be a feasible option for CO2 reduction in the near future when the wind power generation cost is much decreased.
著者
時松 宏治 小杉 隆信 黒沢 厚志 伊坪 徳宏 八木田 浩史 坂上 雅治
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.327-345, 2007-09-28 (Released:2010-06-28)
参考文献数
36

本論文は「持続可能な発展(SustainableDevelopment;SD)」指標の将来値の推計方法と,将来が「持続可能かどうか」の提示を試みようとする論文である。推計する指標は,世鉦が発行するWorldDevelopmentIndicator(WDI)で提示されているGenuineSaving(Sg,)とWealth(W)である。前者はフローの概念,後者はストックの概念に基づいている。こ¢指標の開発者であるD.W.Pearce,G.Atkinson,K.Hamiltonらロンドン大と世銀のグループらによると,これら2つの指標がともに正であることが「持続可能な発展」の必要条件である。理論的な定式化は最適経済成長理論に基づく世銀のHamiltonらの考え方を利用した。その上で,これら2つの指標の将来値の推計に必要なデータを,統合評価モデルから休生的に得られるシミュレーションデータに求めた。そのシミュレーションデータは,殿存の統合評価モデル(GRAPE)に日本版被害算定型ライフサイクル影響評価手法(LIME)を組み込んだGRAPE/LIMEモデルによる最適経済成長のシミュレーション結果を用いた、LIMEを用いた理由の1つは,LIMEは環境影響の経済評価にコンジョイント分析による支払い意思額を用いていることにある。Hamiltonらによる持続可能な発展指標の推計には支払い意思額と環境影響物質の排出量が必要となるが,GRAPE/LIMEモデルを開発することによりこれらがモデルで内生的に整合的に得ることが可能となる。また,環境影響被害を防ぐ支払い意思額は一種の外部コストと解釈可能であり,外部コストの内部イヒをGRAPE/LIMEモデルで行うことで,最適経済成長のシミュレーションを行うことが可能となった。 以上の方法により,2!00年までの世界10地域におけるsgおよびWの推計が可能となった。結果について議論をするのは今後の課題であるが,今回の推計方法によると,世界といわゆる先進国では21世紀にわたって「持続可能な発展」の必要条件を満たすが,いわゆる発展途上国においては21世紀後半になるまで,「持続可能な発展」の必要条件を満たさないことになった。 本研究の手法により,次の点で,従来の「持続可能な発展」指標の推計方法を,学術的にアドバンスすることが可能となった。1つ目は,従来では過去あるいは現在における推計だったものを,最適経済成長理論に基づいて,将来時点の推計を可能にしたことである。2つ目は,従来では推計に必要な各種データを整合的に収集して実証すること自体に難しさがあったが,本研究の方法では統合評価モデルにより内生的に得られるデータを利用して推計するため,整合性が高まったことである。3つ目は,異なる複数の指標から何らかの形で統合化する場合には,推計者の主観的判断により指標間のウェイトを決定せねばならないケースが多かったが,本研究ではその統合化に環境経済学の方法によるコンジョイント分析を用いたことである。 本研究は「弱い持続可能性」の立場に立って「持続可能な発展」指標の将来を推計する方法と結果を提示することには成功したものの,将来の「持続可能性」を評価し議論するという点では,今後多くの課題に取り組む必要がある。「持続可能な発展」の将来,Genuine Saving,Wealth,統合評価モデル,最適経済成長シミュレーション
著者
周 〓生 仲上 健一 小杉 隆信
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.ポスト京都議定書における選択肢として、「法的数値目標」を特徴とする「京都方式」と自主的行動を特徴とする「非京都方式」が挙げられる。2.気候変動枠組みにおいては、「共通ではあるが差異のある責任」原則に基づき、世界全体を、(1)先進国(米国、日本等)、(2)中進国(韓国、メキシコ等)、(3)途上国(中国、インド等)の3地域に分け、参加形態も強制的(法的拘束力のある数値目標をもつ)、自主的、(法的拘束力のない数値目標を自主的設定する)、自発的(数値目標は持たないものの、自発的に削減方策を講じる)との3つの形態に分けることができる。3.一人当たりの排出権を同等にするための「総量規制下で一人当たりの均等な排出許容量」を世界各国に初期割当量として排出枠を配分し、排出権取引やCDMを活かせば、世界全体が公平で効率よく総量規制を実現する。また、この基準とモデル予測により、日本は2008年、韓国は2013年、中国は2020年から法的削減義務を負う時期を迎えると推測する。4.中国と周辺各国日本、マレーシア、シンガポール、タイ、フィリピンとその他の地区と地域の8地域を対象とし、多目標、多変量、多制約且つ非解析的なアジアエネルギーシステムモデルを構築し、各地域、各部門のエネルギー生産、運輸、消費のバランス関係について最適化分析を行い、環境税及びCDMを導入した場合のエネルギー消費構造の予測、とCO_2、硫化物などの同時排出削減効果を分析した。5.本研究を通じて、温暖化対策に加えて、経済、環境、社会の調和が取れた持続可能で活力のある社会を形成していくための国境を越えた日中韓3国を含めた東北アジア低炭素社会共同体構想を提案する。このための要素課題と意義として、革新的低炭素技術の開発と既存技術の移転、低炭素化経済産業システムの創出とライフサイクルなど低炭素社会システムの変革、国際連携によるエネルギー・物質循環のエコデザイン、パイロットモデル事業を通じて、低炭素社会の実現可能性について先駆的に実証し、持続可能な低炭素社会への移行過程を具現化するロードマップの提示、アジア地域の低炭素社会建設を誘導する政策提言が求められる。