著者
仲上 健一
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.44-51, 2019 (Released:2020-01-24)
被引用文献数
2 2

改正水道法(平成30年法律第92号、平成30年12月12日公布)における国会議論と残された課題を検討する、地方自治体の反応の特徴を整理した。改正水道法の最大の論点は、水道事業へのコンセッション方式の導入であり、コミュニケーション方式のメリット・デメリットについて類型化した。水道事業のコンセッション方式の導入において、浜松市における、 「浜松市水道事業へのコンセッション導入可能性調査業務報告書」(平成30年2月)を対象に、コンセッション導入検討プロセスについて検討するとともに、本報告書における結論は、水道事業を経済性のみでの判断を基本にコンセッション方式の優位性が導き出された結論であり、水道利用者の住民や事業者のコンセッション方式の意向が把握されていないことを指摘した。水道法改正にあたっては、問題解決の方法として、水道事業の経営の視点で議論されており、水道事業の全体環境である行政・労働者・地域住民・社会の視点で問題点を検証し、課題解決の道を探る必要がある。
著者
西口 清勝 仲上 健一 松野 周治 長須 政司 小山 昌久 守 政毅 西澤 信善 渡辺 周央 ンガウ ペンホイ
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ASEAN(Association of South-East Asian Nations、東南アジア諸国連合)が現在目指している最重要かつ喫緊の課題は2015年までにASEAN共同体(AC)と構築すること、とりわけその土台となるASEAN経済共同体(AEC)を構築することにある。しかし、そのためにはASEANの先発6カ国と後発4カ国-メコン地域に位置するCLMV4カ国(カンボジア、ラオス、ミャンマーおよびヴェトナム)-との経済格差、いわゆる"ASEAN Divide"、を克服しなければならない。本研究ではメコン開発計画(GMS)と日本のODAがCLMV諸国の経済開発に大きな役割を果たしており、なかでもメコン諸国間の連結性を3つの経済回廊の建設という形で推進したことを明らかにした。
著者
周 〓生 仲上 健一 小杉 隆信
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.ポスト京都議定書における選択肢として、「法的数値目標」を特徴とする「京都方式」と自主的行動を特徴とする「非京都方式」が挙げられる。2.気候変動枠組みにおいては、「共通ではあるが差異のある責任」原則に基づき、世界全体を、(1)先進国(米国、日本等)、(2)中進国(韓国、メキシコ等)、(3)途上国(中国、インド等)の3地域に分け、参加形態も強制的(法的拘束力のある数値目標をもつ)、自主的、(法的拘束力のない数値目標を自主的設定する)、自発的(数値目標は持たないものの、自発的に削減方策を講じる)との3つの形態に分けることができる。3.一人当たりの排出権を同等にするための「総量規制下で一人当たりの均等な排出許容量」を世界各国に初期割当量として排出枠を配分し、排出権取引やCDMを活かせば、世界全体が公平で効率よく総量規制を実現する。また、この基準とモデル予測により、日本は2008年、韓国は2013年、中国は2020年から法的削減義務を負う時期を迎えると推測する。4.中国と周辺各国日本、マレーシア、シンガポール、タイ、フィリピンとその他の地区と地域の8地域を対象とし、多目標、多変量、多制約且つ非解析的なアジアエネルギーシステムモデルを構築し、各地域、各部門のエネルギー生産、運輸、消費のバランス関係について最適化分析を行い、環境税及びCDMを導入した場合のエネルギー消費構造の予測、とCO_2、硫化物などの同時排出削減効果を分析した。5.本研究を通じて、温暖化対策に加えて、経済、環境、社会の調和が取れた持続可能で活力のある社会を形成していくための国境を越えた日中韓3国を含めた東北アジア低炭素社会共同体構想を提案する。このための要素課題と意義として、革新的低炭素技術の開発と既存技術の移転、低炭素化経済産業システムの創出とライフサイクルなど低炭素社会システムの変革、国際連携によるエネルギー・物質循環のエコデザイン、パイロットモデル事業を通じて、低炭素社会の実現可能性について先駆的に実証し、持続可能な低炭素社会への移行過程を具現化するロードマップの提示、アジア地域の低炭素社会建設を誘導する政策提言が求められる。
著者
仲上 健一 小幡 範雄 周 〓生 高尾 克樹 中島 淳 竹濱 朝美 福士 謙介 加藤 久明 原 圭史郎 韓 驥 濱崎 宏則 李 建華 何 青 RAHMAN M. M. ISHRAT Islam GIASUDDIN Ahmed choudhury HASSAN Ahmadul FARHANA Ahmed REBA Paul
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

気候変動による水資源環境影響評価分析・適応策および統合的水管理に関する理論的研究を行い、水危機への戦略的適応策のフレームワークを構築した。アジア大都市圏(日本:琵琶湖流域、中国:上海市・太湖周辺地域、バングラデシュ:ダッカ市、メコン河流域諸国)における気候変動による水資源環境影響評価分析、気候変動への実態と課題を実証分析し、戦略的適応策の施策を体系化した。
著者
植田 和弘 森田 恒幸 仲上 健一 佐和 隆光
出版者
京都大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
1991

発展途上国における環境保全型経済発展のあり方とその可能性に関する分析をすすめた。アジア諸国においては、日本における公害対策の進展が経済成長をしながらすすめられたことをもって、日本を持続可能な発展のモデルとみる傾向がある。そこで、日本の公害対策のうち最も成功したと言われている硫黄酸化物対策に焦点をあてて、中国および韓国を対象として環境政策の発展過程に関する基礎的データを収集・分析するとともに、政策の発展経緯をその経済性に着目して詳細に比較分析した。その結果、その同質性と特異性が明らかになり、後発性の利益を実現するための条件を解明した。開発プロジェクトの持続可能性の条件について、流域開発事業を事例に、環境費用・環境便益の社会的評価方法と開発プロジェクトの環境配慮の評価システムに着目して分析を加えた。その結果、開発インパクトと流域管理の国際比較に関する体系的なデータベースの構築が不可欠であることが確認された。環境政策の経済的手段について、ドイツ排水課徴金、公害健康被害補償制度賦課金、環境補助金、排出許可証取引制度、デポジット・リファンド制度、ごみ有料化、直接規制を取り上げ、その理論と実際の乖離とその原因について、理論の通説的理解の再検討と実証分析を行うことで検討をすすめた。その結果、これまでの経済理論の想定が非現実的であること、通常のミクロ経済理論が集合的意思決定の要素を十分に考慮できていないために、実際に導入されている経済的手段の合理性を説明できないことを論証した。また、財政学的な検討を加えることで、実際に導入されている経済的手段を費用負担のあり方の一形態として理解できることも明らかにした。