著者
小村 一浩
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.125-131, 2008 (Released:2008-06-30)
参考文献数
37

紫外線は免疫を制御する因子の一つである.紫外線照射により腫瘍免疫が抑制される事,SLEや皮膚筋炎などの自己免疫疾患が増悪する事,ヘルペスウイルスなどによる感染症が増悪する事などがよく知られている.さらに紫外線は,尋常性乾癬や尋常性白斑などの炎症性皮膚疾患の治療にも広く臨床応用されている.紫外線による免疫抑制機序は複雑で,未だ一定の見解を得られていない.リンパ組織を移入する事で,紫外線により生じた抗原特異的な免疫寛容が他のマウスに転嫁できるという所見より,抗原特異的な免疫抑制性の細胞が紫外線により誘導された可能性が考えられてきた.近年,CD4+CD25+T細胞を選択的に移入した系で免疫寛容が転嫁できた事よりCD4+CD25+T細胞が中心的な役割を果たすと考えられるようになってきた.さらに,免疫抑制性の細胞はIL-10を含めた種々のサイトカインなどを介して,細胞接着分子の発現を制御していると考えられる.細胞接着分子が炎症細胞の局所浸潤を精密に制御しているからである.また,SLEや皮膚筋炎患者では,高率に光線過敏を有することや,免疫抑制性細胞の機能異常があることなどから,紫外線による免疫抑制機構が破綻した結果発症する可能性が示唆された.このように,紫外線は腫瘍免疫のみならず,自己免疫疾患の発症/制御に関与すると考えられるため,紫外線免疫学は臨床免疫学の中でも重要な分野の一つであると考えられた.
著者
濱口 儒人 藤本 学 長谷川 稔 小村 一浩 松下 貴史 加治 賢三 植田 郁子 竹原 和彦 佐藤 伸一 桑名 正隆
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.9, pp.1837-1843, 2009-08-20 (Released:2014-11-28)

抗U3RNP抗体は代表的な抗核小体型抗体の1つであり,全身性強皮症に特異的とされる.今回われわれは,金沢大学皮膚科で経験した抗U3 RNP抗体陽性全身性強皮症(systemic sclerosis:SSc)8例(女性6例,男性2例,発症時の平均年齢44歳)における臨床症状,治療,予後について検討した.病型分類ではdiffuse SSc(dSSc)が4例,limited SSc(lSSc)が4例だった.全例でレイノー症状を認め,指尖陥凹性瘢痕,手指の屈曲拘縮,びまん性の色素沈着を伴う例が多く,dSScでみられる皮膚症状を高率に有していた.一方,内臓病変に関しては,1例で強皮症腎を発症したものの,肺線維症や肺高血圧症,心病変など重篤な臓器病変を有する頻度は低かった.6例で皮膚硬化に対し中等量のプレドニゾロンが投与され,皮膚硬化の改善がみられた.観察期間中に死亡した症例はなかった.欧米では,抗U3 RNP抗体陽性SScはdSScの頻度が高く,肺線維症や肺高血圧症,心筋線維化による不整脈や心不全,強皮症腎などの重篤な臓器病変を有することが多いと報告されている.また,その予後は抗トポイソメラーゼI抗体陽性SScと同等で,予後不良例が少なくないことが知られている.したがって,本邦における抗U3 RNP抗体SScは欧米の症例と比較し,皮膚症状は類似しているものの臓器病変は軽症であると考えられた.しかし,抗Jo-1抗体陽性の抗ARS症候群を合併した症例や強皮症腎を生じた症例もあり,抗U3 RNP抗体SScの臨床的特徴についてさらに多数例での検討が必要と考えられた.
著者
佐藤 伸一 小川 文秀 小村 一浩 岩田 洋平
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

傷が治る過程には、様々な因子が関与するが、B細胞と呼ばれる免疫担当細胞が関わっているとは従来考えられていなかった。しかし、今回の研究で、このB細胞に発現する重要な分子であるCD19の発現を欠くマウスでは、傷の治りが悪くなり、逆にCD19を過剰に発現したマウスでは、傷の治りが良くなることから、B細胞が傷の治る過程に重要な役割を担っていることが明らかとなった。