著者
唐沢 力 赤井 一郎 小松 晃雄 飯田 武
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

@試料の準備としてすでにあるGaSe単結晶の他に、気相成長法でBiI_3、PbI_2単結晶の育成を行った。@BiI_3結晶中の積層不整二次元界面に励起される擬二次元励起子(SFE励起子)を、窒素レーザー励起色素レーザーを用いて高密度に生成し、ポンプ・プローブ吸収とポイント励起発光スペクトルに空間分解分光法を適用してその空間的挙動を遷移スペクトルの変化より調べた。解析で得られた広い空間域へ拡がる励起子成分に対し、励起子の二次元流として解析して、この成分がコヒーレントな集団運動を行っていることを見出した。この成分が新しい励起子凝縮相である可能性を議論した。@このSFE励起子系に、モードロックNd:YAGレーザー励起のピコ秒色素レーザーを用いて、空間分解した諸種のピコ秒分光を適用した。ポンプ・プローブ吸収および発光の時間-空間分解スペクトルから、高密度成分がポラリトンの群速度に匹敵する速さで空間を移動していることを見出した。さらに、2光束を空間分離した縮退四光波混合(DFWM)信号の検出を行い、高密度下で空間伝播してきた励起子成分による信号の発生を確認した。これら励起子集団の振る舞いとボーズ凝縮との関連を議論した。@GaSe結晶の励起子遷移域を、ピコ秒色素レーザーで共鳴励起してDFWM信号を検出し、励起子共鳴より低エネルギー側に励起子分子によると思われるスペクトル成分を見出した。また、2光束空間分離励起で、高密度励起子の集団運動によると思われる信号強度の波数ベクトル依存性を見出した。@理論的には、電子正孔分離型の量子井戸中の励起子凝縮相の示す超流動が、電流の形で直接観測できることを示した。また、理想的にコヒーレントな高密度励起子集団のダイナミックスを明らかにするため、非線型Schrodinger方程式を解き、その時間・空間発展を明らかにした。その結果とBiI_3高密度SFE系の時間・空間的挙動を比較し、この励起子系のボーズ凝縮相の可能性について議論した。
著者
小松 晃之 木平 清人 森田 能次
出版者
中央大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

赤血球の代替物となる人工酸素運搬体の実現は次世代医療の最重要課題である。これまで多くの化合物が開発されてきたが、副作用や有効性に問題があり、未だ実用化には至っていない。本研究は、組換えヘモグロビン(rHb)と組換えヒト血清アルブミン(rHSA)からなる新しい人工酸素運搬体「組換え(ヘモグロビン-アルブミン)ナノクラスター」(rHb-rHSA3クラスター)を合成し、その構造と酸素結合能を明らかにすることを目的としている。さらにrHbの部位特異的アミノ酸置換により、適度な酸素親和性を有するクラスターも合成する。ヒト血液に全く依存しない量産可能な赤血球代替物の創製に挑戦する。(1)部位特異的アミノ酸置換による酸素親和性の制御:2019年度に得られた成果をさらに展開し、rHbの Leu-β28、His-β63、Cys-β93、Asn-β102を部位特異的アミノ酸置換により、Tyr、Gln、Ser、Alaに変えたrHb変異体を産生し、それらを用いてrHb(X)-rHSA3クラスター(Xは変異箇所を示す)を合成した。いずれも赤血球の酸素親和性(25Torr)に近い適度な酸素親和性を有する人工酸素運搬体となることがわかった。以上の結果を総合し、rHb-rHSA3クラスターがヒト血液に依存しない究極の赤血球代替物となることを実証した。研究成果は、国内学会での発表、国際学会誌への論文掲載により公開した。また、宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同で行った本成果の一部を紹介する動画が、JAXAのウェブサイトに公開された。