著者
尾崎 則篤 竹内 真也 福島 武彦 小松 登志子
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.238-249, 2005-11-10 (Released:2011-12-05)
参考文献数
30
被引用文献数
1

大気粉塵中 (小径粉塵; 粒径7.0μm未満, 大径粉塵; 粒径7.0μm以上) および堆積粉塵中の13種類の多環芳香族炭化水素類 (PAHs) の含有量の減少特性を調査した. 方法としては, 大気粉塵および堆積粉塵を郊外地域で捕集, 捕集後にその場に数日おき減少量を測定することによって評価した. 測定は一年間継続的に行い減少速度係数kを求め, 各測定期間における, 全PAHsのkの中央値Kmedを用いて評価した. Kmedは最大で0.3d-1であった. Kmedは全体として小径粉塵の値が大きかった (0.1~0.3d-1). 季節性に関しては小径粉塵は夏に値が大きく冬に小さいという傾向が明確に得られたが, 大径, 堆積は必ずしも明確な傾向は得られなかった. 堆積粉塵に関しては予想に反して冬に値が高い傾向が得られた. PAHs含有量については, 小径粉塵については夏に低く冬に高いという季節性が見られ, 本観測で得られたKmedと強い相関を持った. このことから大気中のPAHsの濃度の季節変動は粉塵付着態PAHsの大気中での減少特性に強く依存していることが示唆された. 本研究の結果により大気中のPAHsの含有量およびそのパターンの変化には, その大気中での減少が強く影響を与えている可能性があることが示された.
著者
奥村 誠 杉恵 頼寧 塚井 誠人 小松 登志子 岡村 敏之 藤原 章正
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は,交通工学,衛生工学,水資源工学などの立場からの知見を総合し,中小都市に即した緊急時の給水計画のあり方と,その立案の効率化のためのシステムの開発であり、基本的な分析ツールの開発を行った。第1に代替水源としての可能性の高い地下水利用を念頭におき,地震時の地上・地下構造物の破損により新たな汚染源が発生した場合の飲用可能性を検討するためのシミュレーション方法を開発するとともに,簡便水質測定法の精度の検討を行った。第2に緊急給水作業に対する道路ネットワーク,耐震配水池,井戸水での代替の効果を検討するため,給水車による飲料水の配送計画モデルを作成した。次いで,東広島市西条地区を対象に,収集した各種のデータを地理情報システム上に整理するとともに,それを用いた具体的な検討を進めた。まず,残存井戸における地下水位と流向流速調査に基づいて利用可能水量の検討を行った。つぎに汚染シミュレーションに基づく汚染拡散を踏まえた簡易水質検査井戸の選定方法の検討,人口と井戸の分布を踏まえた緊急給水点配置の計画モデルを加えて,緊急時の簡易水質測定体制,給水点の設置,給水車の配備を事前に立案する手順を整理した。いずれの問題も複雑な計算を内包するものであり,現時点でパソコン上の簡便な検討システムの構築は困難であることがわかった。具体的な知見は以下の通りである。第1に地下水の季節的な量的変動にかかわらず,緊急時に必要な水量はほぼ確保できる。第2に芸予地震時に断水した広島県島嶼部では,日常的に井戸水を用いている世帯を中心にかなりの井戸水が飲用に使われていた。第3に汚染シミュレーションを用いれば,井戸の汚染リスクが計算でき,その影響を最小にするような検査井戸が選定できる。第4に使用可能井戸を踏まえて緊急飲料水の配送を考えれば,一定のコスト削減が可能である。