著者
杉恵 頼寧 藤原 章正 森山 昌幸 奥村 誠 張 峻屹
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.699-705, 1999-09-20 (Released:2010-06-04)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

本研究は観光地域の道路整備に伴う観光周遊行動の変化について分析するためめ新しい手法を提案する.従来の離散選択モデルを基礎として, 経路選択モデルとスポット群選択モデルからなる階層構造モデルを開発する. 具体的には通常のNested Logitモデルの各段階のIID誤差構造を緩和したNested PCL (Paired Combinatorial Logit) モデルを導出する. 島根県中央地域における経路と訪問スポット群の選択文脈で得たSPデータを用いてNested PCLモデルを推定し, シミュレーション分析を行った結果, 道路整備により観光需要が若干増大することが確かめられた.
著者
周藤 浩司 杉恵 頼寧 藤原 章正
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
no.15, pp.655-662, 1998

フレックスタイム制度の導入に伴う通勤者の交通行動は時間的に変動することが予想され, その過程を明らかにするには交通行動の動学的分析が必要となる. 本研究は通勤者の時間選択行動の変化を時間軸に沿って分析することを目的とする. まず広島市のある企業で実施されたフレックスタイムシステムの導入前後で2時点パネル調査を行い, 会社到着時刻選択行動を2時点で比較した. その結果会社到着時刻の変化は交通所要時間, 交通手段, 配偶者との帰宅時間差が大きく影響を及ぼすことが明らかになった. 次に会社到着時刻の1年間の時系列データを用いて, 制度導入後の交通行動の時間変化を分析した結果. 通勤者は新しく導入されたフレックスタイム制度に対して交通一活動パターンを調整するのに約3ヶ月を要することが示された.
著者
張 峻屹 藤原 章正 桑野 将司 杉恵 頼寧 李 百鎭
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.97-102, 2006-10-25
参考文献数
11
被引用文献数
2

本研究では世帯居住地選択における集団意思決定メカニズムに着目し,軌道系公共交通沿線への居住促進を念頭に,広島市アストラムライン沿線住宅への転居意向をSP調査によって調べてみた.転居意向をより的確に把握するために,インターネット調査を活用し,転居可能性のある被験者を効率的に抽出することに努めた.今回のケーススタディでは集団意思決定と個人意思決定で,40%もの世帯において世帯構成員の選好結果が変化することが分かった.世帯の代表的な構成員を選定し,世帯居住行動を調べる従来の調査・分析方法は間違った結論を導く恐れのあることが明らかとなった.居住地選択行動においても,多項線形効用関数を用いた集団離散選択モデルによる集団意思決定メカニズムを表現することの有効性を統計的に確認することができた.アストラムライン沿線での居住を促進するには,アストラムラインの駅近辺に集合住宅の建設を政策的に押し進めることが効果的であることが分かった.
著者
奥村 誠 杉恵 頼寧 塚井 誠人 小松 登志子 岡村 敏之 藤原 章正
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は,交通工学,衛生工学,水資源工学などの立場からの知見を総合し,中小都市に即した緊急時の給水計画のあり方と,その立案の効率化のためのシステムの開発であり、基本的な分析ツールの開発を行った。第1に代替水源としての可能性の高い地下水利用を念頭におき,地震時の地上・地下構造物の破損により新たな汚染源が発生した場合の飲用可能性を検討するためのシミュレーション方法を開発するとともに,簡便水質測定法の精度の検討を行った。第2に緊急給水作業に対する道路ネットワーク,耐震配水池,井戸水での代替の効果を検討するため,給水車による飲料水の配送計画モデルを作成した。次いで,東広島市西条地区を対象に,収集した各種のデータを地理情報システム上に整理するとともに,それを用いた具体的な検討を進めた。まず,残存井戸における地下水位と流向流速調査に基づいて利用可能水量の検討を行った。つぎに汚染シミュレーションに基づく汚染拡散を踏まえた簡易水質検査井戸の選定方法の検討,人口と井戸の分布を踏まえた緊急給水点配置の計画モデルを加えて,緊急時の簡易水質測定体制,給水点の設置,給水車の配備を事前に立案する手順を整理した。いずれの問題も複雑な計算を内包するものであり,現時点でパソコン上の簡便な検討システムの構築は困難であることがわかった。具体的な知見は以下の通りである。第1に地下水の季節的な量的変動にかかわらず,緊急時に必要な水量はほぼ確保できる。第2に芸予地震時に断水した広島県島嶼部では,日常的に井戸水を用いている世帯を中心にかなりの井戸水が飲用に使われていた。第3に汚染シミュレーションを用いれば,井戸の汚染リスクが計算でき,その影響を最小にするような検査井戸が選定できる。第4に使用可能井戸を踏まえて緊急飲料水の配送を考えれば,一定のコスト削減が可能である。